【はじめに】
「NHKのど自慢」を見ていると、出場者に『枠』とでも言うようなパターン化された方々が時折見受けられます。例えば、「アニソン」枠であるとか、「学生」枠であるとか、「定番曲」枠であるとか。
もちろん、NHKが公式に命名したものではなく、視聴者がネット上で自然発生的に名付けただけなのですが、案外「この枠は合格しづらい」といった長年の経験則はあっても数値化したものを見たことがなかったので、ここ数年、私が毎週見てきた中で分類したものに沿って集計してみました。毎週日曜日のお昼に「NHKのど自慢」を見る際に参照いただけると嬉しいです。
ちなみに、番組全体の集計に関しては下の記事などをご覧ください。(↓) サムネイルの画像にも書きましたが、ざっくり令和の時代の「合格率は3割」です。この指標を覚えておくと、見えてくるものが違ってくるかも知れませんよ? 早速いきましょう。
(23年度合格率:約4割)「アニソン(アニメソング)」枠
手始めに、番組を詳しくない方でもイメージのしやすそうな「枠」から見ていきます。私が毎週更新をしている記事(↓)でもお馴染みの「アニソン(アニメソング)」枠です。
<凡例に代えて表の見方の説明>
・表の見方は縦に「年度(4~3月)」を取り、2017年度に全体で880組が出場。
・そのうち「アニソン」を歌ったのが手元集計で「65組(65÷880≒7.4%)」。
・そして、その65組のうち、チャンピオンが5組、チャンピオン以外の合格が10組、
・不合格鐘2つが49組、鐘1つが1組という内訳になっていることを示しています。
年度 | 全 体 | 分 母 | ◎優勝 | ○合格 | ●2つ | ▲1つ |
---|---|---|---|---|---|---|
2017 | 880組 | 65組 7.4% | 5組 7.7% | 10組 15.4% | 49組 75.4% | 1組 1.5% |
2018 | 905組 | 86組 9.5% | 7組 8.1% | 21組 24.4% | 48組 55.8% | 0組 0.0% |
2019 | 800組 | 69組 8.6% | 7組 10.1% | 25組 36.2% | 37組 53.6% | 0組 0.0% |
2020 | 198組 | 24組 12.1% | 1組 4.2% | 10組 41.7% | 13組 54.2% | 0組 0.0% |
2021 | 396組 | 38組 9.6% | 4組 10.5% | 9組 23.7% | 24組 63.2% | 1組 2.6% |
2022 | 831組 | 102組 12.3% | 8組 7.8% | 34組 33.3% | 60組 58.8% | 0組 0.0% |
2023 | 907組 | 107組 11.8% | 4組 3.7% | 44組 41.1% | 59組 55.1% | 0組 0.0% |
こうしてみると、2023年度は過去最高ペースとも言える勢いで「アニソン」が歌われ、3桁近くに達していたことが分かります。平均して2組程度以上はアニソンが登場しているという計算です。
そして、令和に入ってから「アニソン」の合格率は、2021年を除き4割超となっています。これは、全体の合格率:約3割と比較してもかなり高いことが分かります。
※ただ、出場を目指す方に対して勘違いしていただきたくないのは、「アニソンが合格しやすい」とは限らない点です。
「本選に出場&合格できるぐらいの人がアニソンを選んでいる」だけかも知れませんし、ひょっとしたら「仮にアニソンを歌っていなければ合格していた」人すらいるかも知れません。それに出場者はJ-POPだと思っていたら実はアニソンだったなんてパターンも相当数含まれていそうに思います。
あくまでも、過去の実績を集計したものの計算結果にすぎず、ここにお示ししていく値を過度に信奉してしまうと、思わぬ結果となる可能性もある点には予めご注意ください。
(23年度合格率:2割弱)「ゲスト」枠
かつての「各ゲスト2組」から「各ゲスト1組」に減ってはしまったものの、今でも毎週設けられているのが「ゲスト」枠です。もう少し厳密に定義すれば、「その週にゲスト出演するアーティストの楽曲(カバーや関連するものを広義に含む)」を本人の前で歌唱する出場者のことです。
年度 | 全 体 | 分 母 | ◎優勝 | ○合格 | ●2つ | ▲1つ |
---|---|---|---|---|---|---|
2017 | 880組 | 91組 10.3% | 2組 2.2% | 11組 12.1% | 78組 85.7% | 0組 0.0% |
2018 | 905組 | 115組 12.7% | 2組 1.7% | 17組 14.8% | 93組 80.9% | 3組 2.6% |
2019 | 800組 | 89組 11.1% | 2組 2.2% | 15組 16.9% | 71組 79.8% | 1組 1.1% |
2020 | 198組 | 21組 10.6% | 0組 0.0% | 6組 28.6% | 15組 71.4% | 0組 0.0% |
2021 | 396組 | 46組 11.6% | 0組 0.0% | 6組 13.0% | 40組 87.0% | 0組 0.0% |
2022 | 831組 | 99組 11.9% | 2組 2.0% | 25組 25.3% | 71組 71.7% | 1組 1.0% |
2023 | 907組 | 97組 10.7% | 2組 2.1% | 14組 14.4% | 81組 83.5% | 0組 0.0% |
過去のデータからして、2020・2022年度はむしろゲストに優しい部類で、その前後を見ると、ゲストの曲を歌ってチャンピオンになるのは「半年に1組」程度。合格率も平均を大きく下回り、2割に届かない年もあります。
裏を返せば、『本選に出場』するということを目的とし、『御本人に会える』という夢を叶えるという一点において、この『ゲスト枠』に果敢挑戦するのは戦略としてアリっちゃアリです。
もちろん、人気歌手の方がゲストに出場することの多い「NHKのど自慢」ですから競争相手が多いことは事実なのでしょうが、それでも『思い出づくり』という動機のウェイトが大きい方はチャレンジする価値のある枠だと思います。
(22年度合格率:約4割)「学生」枠
実数はもう少し多い(私の集計漏れや紹介されていないだけで実は学生というパターンもありうる)かも知れませんが、綺麗に出場者全体の「21%」前後で推移しているのが「学生」枠です。
今や『素朴な田舎っぽさの残る若人が、制服を着て一生懸命歌う』といったステレオタイプな「学生」枠ではなく、(カラオケやSNSなどに慣れた世代が増えてきたのはいつ頃からかは分かりませんが、)まるでプロであるかのような立ち振舞で圧巻のパフォーマンスを見せることも珍しくありません。
年度 | 全 体 | 分 母 | ◎優勝 | ○合格 | ●2つ | ▲1つ |
---|---|---|---|---|---|---|
2017 | 880組 | 186組 21.1% | 10組 5.4% | 38組 20.4% | 135組 72.6% | 3組 1.6% |
2018 | 905組 | 198組 21.9% | 21組 10.6% | 48組 24.2% | 128組 64.6% | 1組 0.5% |
2019 | 800組 | 160組 20.0% | 12組 7.5% | 51組 31.9% | 97組 60.6% | 0組 0.0% |
2020 | 198組 | 40組 20.2% | 5組 12.5% | 13組 32.5% | 22組 55.0% | 0組 0.0% |
2021 | 396組 | 83組 21.0% | 5組 6.0% | 24組 28.9% | 54組 65.1% | 0組 0.0% |
2022 | 831組 | 176組 21.2% | 17組 9.7% | 50組 28.4% | 109組 61.9% | 0組 0.0% |
2023 | 907組 | 178組 19.6% | 19組 10.7% | 46組 25.8% | 112組 62.9% | 1組 0.6% |
合格率は3~4割台で推移していて、平均合格率を常に上回っているような印象です。中学生に出場枠が(再)拡大したことが直接影響しているかまではデータを取っていませんが、やはり「将来有望な若人」を推すことのメリットが大きい……というか、推さない理由が無いというのも正直な所でしょう。
そんな「学生」枠も更に幾つかのパターンに分析できそうだったので、そちらについては下の記事も、ぜひご覧いただければと思います。
(23年度合格率:約1割)「冥土」枠
それとは反対に、「冥土」枠とSNSでは古くから呼ばれていた「お元気な高齢者の皆さん」もしっかりと枠として定着しています。
私としては「後期高齢者」に分類されるような方々をボーダーとしつつ、『番号・曲名をはっきりと言えるか』や『歌のテンポや歌詞、声量』、『受け答えがしっかりできるか』などの基準を総合的に判断しています。下手すると79歳でも若々しくて(とても笑点風に言う『お迎えが……』という感じでなければ、)私の集計では「冥土」枠に含まないことすらあります。
年度 | 全 体 | 分 母 | ◎優勝 | ○合格 | ●2つ | ▲1つ |
---|---|---|---|---|---|---|
2017 | 880組 | 109組 12.3% | 0組 0.0% | 7組 6.4% | 100組 91.7% | 2組 1.0% |
2018 | 905組 | 96組 10.6% | 0組 0.0% | 3組 3.1% | 90組 93.8% | 3組 3.1% |
2019 | 800組 | 82組 10.3% | 0組 0.0% | 9組 10.9% | 72組 87.8% | 1組 1.2% |
2020 | 198組 | 18組 9.1% | 1組 5.6% | 4組 22.2% | 13組 72.2% | 0組 0.0% |
2021 | 396組 | 39組 9.8% | 0組 0.0% | 4組 10.3% | 35組 89.7% | 0組 0.0% |
2022 | 831組 | 74組 8.9% | 0組 0.0% | 10組 13.5% | 61組 82.4% | 3組 4.1% |
2023 | 907組 | 65組 7.2% | 1組 1.5% | 7組 10.8% | 57組 87.7% | 0組 0.0% |
上に書いたような事情もあるので高齢者が冷遇されている! という訳ではないと思うのですが、数字の上ではやはり高齢者の合格率は非常に厳しいものがあります。ざっくり「平均の半分」程度であるほか、高齢者の合格自体が季節に数える程度、チャンピオンに至っては数年にわたって誕生しないことが普通といった有様です。
2023年度は、久々のチャンピオンが誕生し、年度末のチャンピオン大会にも出場。『長崎の鐘』を朗々と歌い上げたお祖父様の姿が強く印象に残っています。
個人的には、「高齢者だから優遇」とまでは行かないまでも「高齢者も若者と対等」に合格して欲しいと思っているのですが、むしろ楽曲の表面的な難しさなどから「若者の方が優遇」されている節まであるのではないかと思っている次第です。
(23年度合格率:5割弱)「禁止曲」枠
では真打ち登場……ではないですが、私の記事でも特に読まれている「禁止」枠について見ていきましょう。紆余曲折あって今の集計範囲に落ち着いている関係もあるので、適宜補っていこうと思いますがひとまず、これまでと同じ形で表をご覧ください。
年度 | 全 体 | 分 母 | ◎優勝 | ○合格 | ●2つ | ▲1つ |
---|---|---|---|---|---|---|
2017 | 880組 | 324組 36.8% | 9組 2.8% | 65組 20.1% | 243組 75.0% | 7組 2.2% |
2018 | 905組 | 281組 31.0% | 15組 5.3% | 67組 23.8% | 197組 70.1% | 2組 0.7% |
2019 | 800組 | 273組 34.1% | 21組 7.7% | 85組 31.1% | 166組 60.8% | 1組 0.4% |
2020 | 198組 | 62組 31.3% | 8組 12.9% | 25組 40.3% | 29組 46.8% | 0組 0.0% |
2021 | 396組 | 130組 32.8% | 11組 8.5% | 49組 37.7% | 70組 53.8% | 0組 0.0% |
2022 | 831組 | 272組 32.7% | 27組 9.9% | 106組 39.0% | 139組 51.1% | 0組 0.0% |
2023 | 907組 | 299組 33.0% | 25組 8.4% | 122組 40.8% | 152組 50.8% | 0組 0.0% |
2021年度の途中で思い立って集計範囲を変更してしまったので、表を何となく分けています。まずは2020年度まで。この時は元々の「禁止曲」の概念に近く、『よく歌われて聞き飽きた』タイプの楽曲を主な対象にしていました。そのため、平成時代までは特に目立って高い値を示していませんでした。
しかし令和に入って、特に2021年度以降は上の記事にも書いた「禁止曲」(合格しやすい楽曲)のみを対象とし、『よく歌われて聞き飽きた』タイプの楽曲は下の「定番曲」として独立させたこともあってか、合格率は約5割にまで上昇しています。
他の曲だと3~4組に1組しか合格しないのに、これらを歌うと2回に1回は合格できると期待される楽曲があれば、それは明らかに偏って見えるため、「禁止曲」と言われても致し方ないのではないかと思っているのです。
(参考)「定番曲」枠
最後に上でも触れた「定番曲」枠としての集計を始めた2021年11月以降を掲載しておきます。
年度 | 全 体 | 分 母 | ◎優勝 | ○合格 | ●2つ | ▲1つ |
---|---|---|---|---|---|---|
2021 | 144組 | 46組 11.6% | 2組 4.3% | 7組 15.2% | 37組 80.4% | 0組 0.0% |
2022 | 831組 | 239組 28.8% | 5組 2.1% | 53組 22.2% | 178組 74.5% | 3組 1.3% |
2023 | 907組 | 297組 32.7% | 8組 2.7% | 67組 22.6% | 217組 73.1% | 2組 0.7% |
こちらは4~5回に1回程度しか合格できません。『よく歌われて聞き飽きた』曲を全て「禁止曲」と仰っている方からすると、この差異を捉えることが出来ていないのではないかと思います。この記事を最後まで読んでくださった方なら、きっと「禁止曲」と「定番曲」を区別して番組を視聴することが、ワンランク上の番組の楽しみ方に繋がるのではないかと期待しています。
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