局所的に強い揺れ(周辺より2階級以上)を観測した地震をまとめてみた

【はじめに】
この記事では、局地的に強い揺れを観測した地点があり、その周辺では震度が2階級小さいといった『局地的に強い揺れ』を観測した事例を震度別に纏めていきます。

小難しく書いてしまいましたが、例えば「最大震度6弱」なのに「(1個下の)震度5強」がなくて、いきなり「震度5弱」とか「震度4」になってしまっているケースのことです。こういったパターンが実際にはどれぐらい観測されているのか、興味のある方はぜひ最後までお読み頂ければ幸いです。

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震度7 (震度6強なし):1例

これまでに発生した「震度7」の地震の中で、周辺に震度6強を伴わなかった地震は1例のみです。それが2016年4月14日に起きた「熊本地震(の1回目)」いわゆる前震とされたMj6.5の地震です。

7益城町宮園
6弱玉名市天水町西原村小森・嘉島町上島・宇城市松橋町・宇城市不知火町・宇城市小川町・宇城市豊野町熊本東区佐土原・熊本西区春日・熊本南区城南町・熊本南区富合町

震度5弱以上を観測したのは宮崎県の1地点を除いて全て熊本県内でした。2回目のいわゆる本震とされる地震はMj7.3の大地震でしたが、1回目はMj6.5と一回り小さく、断層の破壊面も小さかったことから、いわゆる『内陸直下型』と言われる揺れ方となりました。

震度7を観測した「益城町宮園」の地点は、2回とも震度7を観測したことになりますが、同じ益城町の中でもエリアによって建物への被害の度合いが異なるなど、地点によるブレもあるため、震度観測網に左右される面があることも抑えておきましょう。

震度6強(震度6弱なし):2例

そして、1996年に制定された「震度6強」を観測した地震の中で、「震度6弱」がなかった事例は2回のみ。1例目はこちらも「熊本地震」、2例目は「能登群発地震」に関連するものです。

地震の発生日時震央地名深さMj6強次震度
16/04/16 03:55:53.0熊本県阿蘇地方11 km5.8産山村山鹿*5強
23/05/05 14:42:04.1能登半島沖12 km6.5珠洲市正院町*5強

1例目:熊本地震(余震)

Mj6未満の地震で初めて「震度6強」を観測した地震でもあった2016年4月16日の午前3時55分頃の地震は、阿蘇地方を震源にM5.8・深さ11kmで、「産山村山鹿*」で6強、隣接する阿蘇市や南阿蘇村で震度5強を観測した地点がありました。

表現をオブラートに包まず言えば、「熊本地震の本震」の後の最大余震であり、なおかつ震源が「阿蘇地方」と定められた中では最大の地震という言い方もできました。(どちらも震度の基準として)

この様に、内陸直下型・断層型の地震では、局所的に揺れが強くなることもありますが、そもそも発生する頻度が少ないため事例としては多くありません。ただ古くからこうした事象は起きていたのでしょうし、今後も震度観測網の分布によっては珍しくないのかも知れません。

2例目:能登群発地震(本震)

2023年5月5日(ゴールデンウィーク期間中)、2020年の年末から続いていた「能登群発地震」の中でも最大規模(M6クラス)となる地震が発生し、「珠洲市正院町*」で震度6強を観測しました。

その周囲の3地点では震度5強(珠洲市三崎町 珠洲市大谷町* 能登町松波*)、気象官署「輪島」などで震度5弱を観測していましたが、去年までの地震と同じ傾向として、正院町の震度が大きくなったことが見られました。

震度6弱(震度5強なし):10例

そして「震度6弱」を観測した事例で「震度5強」が観測されなかった事例は、ここ最近増えてきて、数年に1回のペースで見られるようになりました。

発生日時震源深 さMj6弱次震度
98/09/03 16:58:17岩手県内陸北部8km6.2雫石町長山
00/07/15 10:30:32新島・神津島近海10km6.3新島村本村*5弱
00/07/30 21:25:46三宅島近海17km6.5三宅村阿古25弱
00/08/18 12:49:12新島・神津島近海7km5.1新島村式根島
11/03/12 04:31:55長野県北部1km5.9栄村北信*5弱
11/03/12 05:42:19長野県北部4km5.3栄村北信*
16/04/16 09:48:32熊本県熊本地方16km5.4菊池市旭志*5弱
16/06/16 14:21:28内浦湾11km5.3函館市川汲町*5弱
19/01/03 18:10:27熊本県熊本地方10km5.1和水町江田*5弱
22/06/19 15:08:07石川県能登地方13km5.4珠洲市正院町*5弱
(出所)気象庁 震度データベース検索

ここ約半世紀で(私の見つけた限りでは)10例程度となりました。直近では、2022年6月19日に石川県能登地方で起きた一連の地震活動で生じています。基本的傾向として、マグニチュード5クラス前半の中規模な内陸地震で、深さが浅く、自治体などが設置した観測点で起きやすい様に思えますね。

なお、現行の10段階では「6弱」と「5強」が隣接していますが、昔の階級でいえば「6」と「4」が一つ飛ばしの事例となります。それで行くと、1998・2000・2011年の3例が10段階になってからは該当する様で、更にレアな事象となっていきます。

(参考)旧震度6【烈震】(震度5【強震】なし):6例

今と観測網が違うため参考としますが、「旧・震度6【烈震】」を観測した幾つかの事例で、震度5【強震】を観測していないというケースもあります。例えば、

発生日時震源深 さMj烈震中震
1925/05/23 11:09兵庫県北部0km6.8豊岡9地点
1935/07/11 17:24静岡県中部10km6.4静岡6地点
1941/07/15 23:45長野県北部5km6.1長野2地点
1948/06/28 16:13福井県嶺北0km7.1福井14地点
1972/12/04 19:16八丈島東方沖54km7.2八丈島9地点
1982/03/21 11:32浦河沖40km7.1浦河8地点
(出所)気象庁 震度データベース検索

このように10年に1回前後のペースで起きていました。戦後直後までは内陸で起きた直下型地震で目立ちましたが、昭和の後半となると海域で起きた地震にも該当例が出てきています。このうち、1941年の「長野地震」では、長野市で局所的に烈しい揺れとなった一方、軽井沢(旧)と上田通報所で震度4を観測した以外は震度3以下(現行と連続性のある気象官署は全て)でした。

そして、甚大な被害を福井県にもたらした「福井地震」も、当時の気象官署では最大震度6を観測した以外は震度5を正式な記録として伝えていません。 東京大学地震研究所のアンケート調査結果が近年発表されています。

震度5強(震度5弱なし):令和だけで複数例

更に一つ下げて、「震度5強」と「4」では、令和に入ってだけでも複数例あります。例えば、

発生日時震源深 さMj5強次震度
21/12/09 11:05:08トカラ列島近海14km6.1十島村悪石島*
22/01/04 06:08:51父島近海77km6.1小笠原村母島
22/06/20 10:31:34石川県能登地方14km5.0珠洲市正院町*
22/08/11 00:53:00上川地方北部5km5.4中川町中川*
22/11/09 17:40:12茨城県南部51km4.9城里町小勝*
(出所)気象庁 震度データベース検索

2021年12月の悪石島での5強からの1年で5例ほどが確認されています。むしろ最近では2階級ぐらい上回って1地点が抜けて観測されるケースがありふれたものとなってきています。

旧震度階級であれば、周囲で有感とならず、離島だけ「震度5」ということも事例があったのですが、今は流石に「震度5強」の隣が「震度3以下」という例は少ないと思います。ただ、観測点によっては今後そういった事例が起きうるということをアタマの片隅に置いておいて頂ければと思います。

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