「北海道・三陸沖後発地震注意情報」のポイントについてざっくり学ぶ

【はじめに】
この記事では、2022年12月16日に運用が開始された「北海道・三陸沖後発地震注意情報」について、ポイントをざっくり学んでいきたいと思います。

貴方にはぜひしっかりと学んで頂きたいのですが、もし仮に、実際にこの注意情報が発表されている様な切羽詰まった状況であるならば、次の項目だけでもみて頂いて、冷静に適切な行動を取っていただくことを願っております。早速いきましょう!(↓)

ひとまず大事な情報を内閣府のページから!

もし仮に、実際に大地震が発生してしまって、『北海道・三陸沖後発地震注意情報』が発表されてしまった貴方。そういった方で私の記事にたどり着いた方には、取り急ぎ、内閣府のページとそこで告知されているポスター・チラシのリンクを貼っておきます。大事なことはここからご確認ください。(↓)

(出典)内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  防災情報のページ > 防災対策制度 > 地震・津波対策 > 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策> 北海道・三陸沖後発地震注意情報の解説ページ
あなたは、北海道・三陸沖後発地震注意情報を知っていますか? / 北海道・三陸沖後発地震注意情報が1枚でわかりやすく!

1.日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震とは?

2.北海道・三陸沖後発地震注意情報とは?

3.北海道・三陸沖後発地震注意情報はどのように発信されるの?

4.防災対応は何をすればいいの?

( 同上 )

文字通り、「北海道(千島海溝沿い)・三陸沖(日本海溝沿い)」(で起きた地震の)後発地震に注意することを呼びかける情報です。

厳密ではないですが、例えて言うなら『◯◯注意報』というより『竜巻注意情報』のような感じでしょうか。発生確率は(普段よりかは遥かに高いものの)『◯◯注意報』に比べれば高くなく、必ず発生するとは限らない。しかし一度発生してしまえば被害は甚大で、壊滅的な被害がもたらされる。
竜巻注意情報が発表されて実際に「竜巻」が襲わなかったからといって、その情報に一定の意味があることを理解している方が大半です。

この『北海道・三陸沖後発地震注意情報』もあくまで「注意報」ではなく「注意情報」です。この情報の特性や弱みなどについては、また状況が落ち着いた際に、お調べ頂ければと思いますので、まずは、上のリンクや画像にある注意事項の再確認をお願いしたく思います。

「北海道・三陸沖後発地震注意情報」のポイント

北海道・三陸沖後発地震注意情報は、千島海溝および日本海溝沿いにおいて巨大地震発生の可能性が高まった場合に、日本内閣府および気象庁が発信する情報。2022年12月16日に運用が開始された。

北海道・三陸沖後発地震注意情報(以下、注意情報)は、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の想定震源域三陸日高沖、十勝根室沖の領域)及びその領域に影響を与える外側のエリア(以下、外側エリア)でMw 7.0以上の地震(先発地震)が発生した場合に発信される。

北海道・三陸沖後発地震注意情報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そして、発信時の対応については、以下のとおり纏められていましてポイントが集約されるでしょう。

発信時の対応
注意情報の発信時は、対象地域においては平時からの地震への備えに加え、後発地震が発生した際に迅速に避難を行うための準備が必要とされる。また、個々の状況に応じて自主避難を行う事も想定される。ただし、社会経済活動への影響が大きい事前避難の呼びかけは行わない。

( 同上 )

そして、ウィキペディアにも引用されている政府の資料のうち、我々庶民でも何とか理解できそうなのが、『北海道・三陸沖後発地震注意情報防災対応ガイドライン』の【概要】という資料です。文字数は多いですが、カラフルで画像なども多いので理解できる部分だけでも読んでおくと、理解がかなり深まると思います。お時間・興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。

北海道・三陸沖後発地震注意情報防災対応ガイドライン

そして、該当地域にお住まいならば、恐らく地元の自治体のホームページなどにも情報が掲載されているかと思いますし、この情報が話題になる度に、各メディアが「解説記事」などを出してくるかと思いますので、そこをお読みいただくだけでも多くの疑問は解消されるのではないかと思います(^^

どのぐらいの頻度で発表されそうかというと?

さて、実際に大地震が「巨大地震」の前兆であったケースというのは、過去の統計からみても割合としては非常に少ないと言わざるを得ません。しかし実際に起きてしまえば、2011年のような壊滅的な被害をもたらすことを思えば、『テールリスク』も決して無視できないかと思います。

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この「注意情報」は、下の図12の範囲内で特定のマグニチュード以上の地震が起きた場合に発表されるものだそうで、その場その場で考えるのではなく「パターン化」されているものだそうです。

(出典)北海道・三陸沖後発地震注意情報 防災対応ガイドライン|内閣府(防災担当) P30・図12 より

そして、細かいデータは入手できなかったのですが、政府の公式な資料により、過去実績に基づけば、「情報の発信頻度は2.3年に1回」となるようです。

北海道・三陸沖後発地震注意情報防災対応ガイドライン【概要】 > 第3章 北海道・三陸沖後発地震注意情報の発信

もちろん、2.3年に1回程度「注意情報」が発表されるからといって、それが何十年というスパンで『素振り』となることは導入の段階から想定されている織り込み済みのものです。起きるかどうかを特定できるほどの根拠をまだ我々は持ち合わせていないのだから、不必要に慌てることも、「オオカミ少年」だと軽視することも適当でなく、適切な範囲内で備えることが正解なのかなと感じます。


ただ、数字で丸められてもピンと来ない部分もあろうかと思うので、ここからは、厳密な研究ではなくSNSなどで話題になりそうなレベルに広げて、私なりにざっくりとした予測を立てて置こうかと思います。上述の政府のデータが“正解”であることを踏まえた上で、実際には世間でどれぐらいの頻度で話題にのぼりそうか。2つのマグニチュードの指標・機関から、本家より想定域を【敢えて】拡大した形でみていきたいと思います。

(参考1)震度データベースにみる「大地震」(Mj7.0以上)

まずは、気象庁の「震度データベース」で、気象庁マグニチュード(Mj)7.0以上の「大地震」を対象として調べていきたいと思います。

日本国内で震度1以上を観測したM7.0以上の地震(1919年以降、深さ・震源を問わず)は「200回」程度ですが、上の図のイメージに近いような領域に絞ってみました。繰り返しになりますが、厳密には『北海道・三陸沖後発地震注意情報』の発生基準とは異なりますので、ざっくりとしたイメージとして捉えて下さい。過去のデータに基づくイメージ程度の感じです。

気象庁 > 震度データベース検索
・地震の発生日時 : 1919/01/01 00:00 ~ 2022/03/31 23:59
・地震の規模 : M 7.0 以上、M 9.9 以下
・震央地名 : 北海道東方沖 もしくは 根室半島南東沖 もしくは 釧路沖 もしくは 十勝沖 もしくは 浦河沖 もしくは 択捉島南東沖 もしくは 青森県東方沖 もしくは 岩手県沖 もしくは 宮城県沖 もしくは 三陸沖 もしくは 福島県沖
・検索結果地震数 : 64 地震 (「地震の発生日時の古い順」で検索)

上だけだと頻度が分かりづらいので、10年代ごとに発生回数を表にしてみました。 言ってしまえば、毎年のように(控えめに言っても数年に1回)は『後発地震注意情報』が出される様なイメージです。

期間5弱5強6弱6強合計
1920年代123
1930年代112610
1940年代2114
1950年代22
1960年代538
1970年代1247
1980年代213
1990年代11136
2000年代111148
2010年代441110
2020年代123
合計1451922183164
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 2022/03/31 23:59
・地震の規模 : M 7.0 以上、M 9.9 以下
・震央地名 : 北海道東方沖 もしくは 根室半島南東沖 もしくは 釧路沖 もしくは 十勝沖 もしくは 浦河沖 もしくは 択捉島南東沖 もしくは 青森県東方沖 もしくは 岩手県沖 もしくは 宮城県沖 もしくは 三陸沖 もしくは 福島県沖
・地震回数の集計 : 年代別回数

具体的に、2001年から2022年までの直近20例(確かに1年に1回程度)を表にしています。黄色のがいわゆる『余震』と呼ばれるもので、赤色は『後発地震注意情報』の的中例とも言うべき事象です。

地震の発生日時震央地名深さ最大震度
2003/05/26 18:24:33.4宮城県沖72 km7.1震度6弱
2003/09/26 04:50:07.4十勝沖45 km8.0震度6弱
2003/09/26 06:08:01.8十勝沖21 km7.1震度6弱
2004/11/29 03:32:14.5釧路沖48 km7.1震度5強
2005/08/16 11:46:25.7宮城県沖42 km7.2震度6弱
2005/11/15 06:38:51.3三陸沖45 km7.2震度3
2008/09/11 09:20:51.3十勝沖31 km7.1震度5弱
2011/03/09 11:45:12.9三陸沖8 km7.3震度5弱
2011/03/11 14:46:18.1三陸沖24 km9.0震度7
2011/03/11 15:08:53.4岩手県沖32 km7.4震度5弱
2011/03/11 15:25:44.3三陸沖11 km7.5震度4
2011/04/07 23:32:43.4宮城県沖66 km7.2震度6強
2011/07/10 09:57:07.3三陸沖34 km7.3震度4
2012/12/07 17:18:30.8三陸沖49 km7.3震度5弱
2013/10/26 02:10:18.3福島県沖56 km7.1震度4
2014/07/12 04:22:00.4福島県沖33 km7.0震度4
2016/11/22 05:59:46.8福島県沖25 km7.4震度5弱
2020/02/13 19:33:45.1択捉島南東沖155 km7.2震度4
2021/02/13 23:07:50.5福島県沖55 km7.3震度6強
2022/03/16 23:36:32.6福島県沖57 km7.4震度6強

ではこういった事例を過去の「震度データベース」からざっくり探ってみましょう。こんな所です。↓

1938/11/05 17:43:18.4福島県沖43 km7.5震度5
1938/11/05 19:50:14.9福島県沖30 km7.3震度5
1938/11/06 17:53:51.9福島県沖10 km7.4震度5
1968/05/16 09:48:54.5青森県東方沖7.9震度5
1968/05/16 19:39:01.9青森県東方沖8 km7.5震度5
1973/06/17 12:55:02.0根室半島南東沖44 km7.4震度5
1973/06/24 11:43:23.5根室半島南東沖52 km7.1震度5
1994/10/04 22:22:56.9北海道東方沖28 km8.2震度6
1994/10/09 16:55:39.0北海道東方沖7.3震度4
2003/09/26 04:50:07.4十勝沖45 km8.0震度6弱
2003/09/26 06:08:01.8十勝沖21 km7.1震度6弱
2011/03/09 11:45:12.9三陸沖8 km7.3震度5弱
2011/03/11 14:46:18.1三陸沖24 km9.0震度7
2011/03/11 15:08:53.4岩手県沖32 km7.4震度5弱
2011/03/11 15:25:44.3三陸沖11 km7.5震度4

顕著な事例は、気象庁マグニチュードにすると「東日本大震災」とその2日前の「三陸沖地震」だけですが、M7以上の余震(や群発地震)が起きた事例は数年から数十年のスパンかの様に見えます。

(参考2)アメリカ地質調査所(USGS)にみる「大地震」(Mw7.0以上)

もうひとつのマグニチュードの指標を例にとってみましょう。アメリカ地質調査所(USGS)による「大地震」(モーメントマグニチュード基準)です。英語のサイトで適当に正方形を作って、その中で該当する事例をピックアップしてみました。

基本的には上の事例と重複する部分が多いのですが、日本海溝・千島海溝沿いの後発地震への注意を促す情報発信に関する検討会』の報告書(R4/11/18)でも取り上げられている事例である、1963年の「択捉島南東沖」の地震についても列挙しておきます。

1938-11-05 17:43:24Mw7.835.0km福島県沖
1938-11-05 19:50:18Mw7.735.0km
1938-11-06 17:53:55Mw7.730.0km
1938-11-07 06:38:47Mw7.625.0km
1938-11-14 07:31:31Mw7.135.0km
1963-10-12 20:27:00Mw7.037.5km択捉島南東沖
1963-10-13 14:17:59Mw8.535.0km
1963-10-20 09:53:12Mw7.828.2km
2011-03-09 11:45:20Mw7.332.0km三陸沖
2011-03-11 14:46:24Mw9.129.0km
2011-03-11 15:25:50Mw7.718.6km茨城県沖

【おさらい】を兼ねたまとめ

以上をまとめると、1963年や2011年に事例があるものの、全体で「1年から数年に1度」発表される注意情報において、『的中』とみなせるのは数十年に1度程度である点は、重ねて認識する必要があろうかと思います。

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その一方で、実際に起きてしまえば甚大な被害が想定される巨大地震ですから備えを行うことの必要性がより深刻なものとなります。2011年3月9日に戻ることは叶いませんが、そういった考え方に近いのが今回設けられた『北海道・三陸沖後発地震注意情報』なのだと思うのです。

それに、最初の地震を上回る規模ではないものの、マグニチュード7以上の大地震であったり、強烈な揺れをもたらす地震であったり、目立った津波をもたらす地震が起きる頻度はそれなりにあります。想定された地震でなくても、ひょっとしたら二次災害を防ぐことにも繋がるかも知れないと思えば、適切に運用・行動されることが叶えば有意義な情報となるはずです。

2022年12月16日の導入時の各種報道では『空振り』ではなく、『素振り』と捉えることが推奨……というか幅広く報じられ、受け入れられていた様に感じました。確かに“言い得て妙”です。ぜひ、実例に基づく『避難訓練』をも兼ねた実践的な備えを皆さんにお願いしたく思います。どうぞお気をつけて。

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