【はじめに】
この記事では、お天気歳時記と題して『空梅雨』について纏めていきます。
ウィキペディアにみる「空梅雨」
梅雨の期間中ほとんど雨が降らない場合がある。このような梅雨のことを空梅雨(からつゆ)という。
空梅雨の場合、夏季に使用する水(特に稲作に必要な農業用水)が確保できなくなり、渇水を引き起こすことが多く、特に青森、岩手、秋田の北東北地方においては空梅雨になる確率がかなり高く、また、秋季〜冬季の降水量が少ない北部九州や瀬戸内地方などでは、空梅雨の後、台風などによるまとまった雨がない場合、渇水が1年以上続くこともある。
梅雨#空梅雨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
そして、これが極端になると、「日照り」や「旱魃」に結びつくことになる可能性も否定できません。
旱魃/干魃(かんばつ)とは、雨が降らないなどの原因である地域に起こる長期間の水不足の状態である。旱は「ひでり」、魃は「ひでりの神」の意味である。
旱魃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
旱魃の影響は様々なところに及びます。もちろん、歴史上にみられるような深刻な被害とまではならないかも知れませんが、以下のようなリスクが高まるということは今一度、抑えておきたいところです。
旱魃の影響
旱魃によってその地域の環境、経済、社会に様々な影響が発生する。一般的には次のような事象が起こる。・自然火災(山火事など)
・農作物・狩猟・果物などの収穫減少
・河川の水量の減少が漁業に悪影響を及ぼすこともある
・害虫問題の増加
・貧困、生活苦による自殺
・避難民、移住者の発生
・社会不安
・戦争
・飢饉(飢餓)
・疫病
・砂漠化これらの問題は、外部資源への依存率の増大や残された水資源の品質(汚染状態)など様々な要因が複雑に絡みあって発生する。その国のインフラの整備状況によって旱魃の影響(とくに飢餓)が甚大になることも、あるいは軽減されることもある。
( 同上 )
俳句歳時記にみる「空梅雨」
なぜこういった定義から入ったかというと、俳句歳時記に収録されている「傍題」に触れたいと思ったからです。例えば、少し前の『角川俳句大歳時記』を見ますと、
- 空梅雨【からつゆ】(仲夏・天文)
- 涸梅雨【かれつゆ】
- 旱梅雨【ひでりづゆ】
- 照り梅雨【てりつゆ】
以上のように、主季語「空梅雨」の他に、「涸れる」であるとか「日照り」などを含んだ梅雨の表現が見られるからです。そして、『ホトトギス俳句季題便覧』から例句を紹介しますと、
- 『空梅雨の夕日真赤に落ちにけり』/小林一行
- 『空梅雨や傘立に傘なかりけり』/山田閏子
こうした句は、渦中にあれば勿論ですが、そうでない時期にあっても『空梅雨』らしさを感じるのではないかと思います。ただ文芸作品としてみる分には良いのですが、実際に『空梅雨』そして『旱梅雨』の中にあってはこんなに優雅に居られないところでしょう。
各地の「6~7月」の月降水量を振り返る
ここからは気象庁「過去の気象データ検索」から、各地の月降水量を振り返っていきたいと思います。
「東京」
昭和以降に、主に6月の雨量が少なかった年を纏めてみました。左から「6・7月の月降水量と月日照時間」を纏めています(単位:mm/時間)。
年 | 6 月 降水量 | 6 月 日照時 | 7 月 降水量 | 7 月 日照時 | 備 考 |
---|---|---|---|---|---|
1933 | 34.1 | 185.6 | 44.2 | 215.1 | 7/25山形で40.8℃ |
1946 | 59.7 | 232.4 | 127.0 | 214.0 | |
1947 | 90.1 | 89.8 | 19.9 | 242.0 | |
1960 | 83.0 | 155.4 | 31.6 | 181.3 | |
1964 | 139.9 | 125.2 | 45.9 | 153.6 | 東京大渇水 |
1979 | 63.0 | 217.9 | 88.5 | 143.1 | |
1990 | 68.0 | 133.4 | 51.0 | 143.8 | |
1996 | 36.0 | 117.8 | 253.5 | 199.6 | |
2007 | 80.0 | 187.2 | 253.0 | 80.6 | |
2022 | 64.0 | 167.6 | |||
平年値 ’91-20 | 167.8 | 124.2 | 154.7 | 151.4 |
一番下の平年値(1991~2020年)に比べて、2022年は6月雨量が半分以下で、日照時間も上回っています。非常に早く、そして短く梅雨が明けたとみられることを示す一つのデータだと思います。
1996・2007年は、7月に入って250mm以上と平年以上の雨量(まとまった雨)を記録しましたが、例えば、それ以前(昭和時代)には6・7月と100mm未満が続いた年もありました。
もちろん、例えば「東京」などの場合、水不足を左右するのは北関東の水源の雨量になる訳ですが、2022年の6月下旬から7月上旬にかけて猛暑日が連続(初の6月の猛暑日+最長タイの連続記録)したことからも分かるとおり、町から水分が奪われていくかのような感覚に陥ります。
季語でもある「空梅雨」には、雨が少なくて水不足の心配をする側面と、真夏の暑さが早くから襲って人々の生活に影響を及ぼすという側面が垣間見えますね。
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