【はじめに】
2022年4月19日 午前8時16分頃、福島県中通りを震源とする最大震度5弱の地震がありました。この地震は、M5.4・深さ:93kmと推定されており、現行震度で震度5弱を観測した地震としては、かなり小さめでありながら強い揺れが観測された事例となります。
深さが約100kmという深めのところで強い揺れが観測される事例は頻繁にはないため、今回は、深さに着目をして強烈な揺れを伴った地震を振り返っていきたいと思います。
深さ50km以深が震源で「震度6」以上を観測:7例
以下、気象庁の「震度データベース検索」を利用していきます。まずは、最大震度6クラスの揺れを伴った地震のうち、震源の深さが50kmより深かったものをリストアップしましょう。
旧震度階級で「震度6(烈震)」となったのが2例、今の震度階級で「震度6強/弱」をあわせて5例ありました。この半世紀で7例ということになります。震度6以上の地震のうち、全体の約1割です。
記憶に新しいところだと、2021・2022年と2年連続で「福島県沖」を震源とし、最大震度6強を観測した地震は、ともに深さ50km台かつマグニチュード7クラスという規模の大きなものでした。
一般に、「深さが深くなれば、浅い時に比べて揺れは小さくなる」などと言われますが、上記例のように「深くても烈しい揺れに襲われる」こともあるし、却って「烈しい揺れの範囲が広がる恐れもある」ことを記憶しておきましょう。(確かに、直下型とは違いますが、分布には異なる恐怖があります。)
また、気象庁の「震度データベース検索」には当てはまらないものの、特筆すべきな例は以下の通り。
深さ75km以深が震源で「震度5」以上を観測:二十数例
続いて、「震度5(強震)」以上に拡大すると二十数例(震度6と重複あり)が認められます。まずは平成8年に気象庁震度階級が見直されるまでの約75年間を見ていきましょう。
1922年の「浦賀水道地震」に始まり、北海道・関東地方を中心に、プレート境界の沈み込んだ先で地震が発生している傾向が顕著に見られます。かつての震度観測網で「震度5(強震)」を観測する事例といえば、今以上に珍しく、(もちろん、1947年から27年間該当のなかったケースもありますけど、)数年に1回ペースという感じでしょうか。
地震の発生場所は似通っていますが、震度観測網の充実により2021年度までの四半世紀で12回も観測されるようになりました。基本的にはそこまで珍しい事例ではなくなっていることが分かります。(こちらも、2015~2021年に約6年間、該当事例なし なこともありますが、)
流石に「震度6弱」に達することは、約100km以深では珍しく、深さ200kmより深くて震度6弱以上を観測した事例は2015年の「小笠原諸島西方沖地震」の1回のみと検索データ上はなっています。
一方、2022年4月19日に起きた地震では、茨城県城里町で最大震度5弱を観測し大きくメディアでも取り上げられました。しかし、私の指標「旧震度」では、少し印象が変わります。こちらです。
旧震度 | 気象官署 |
---|---|
震度3(弱震) | 福島、白河、小名浜 水戸、柿岡、宇都宮 |
震度2(軽震) | 会津若松、熊谷、東京 |
震度1(微震) | 大船渡、仙台、石巻、山形 前橋、日光、秩父、千葉 銚子、横浜、甲府、河口湖 網代、飯田、諏訪、軽井沢 |
例えば、宇都宮市内ですとか、白河市内などで「震度4」を観測した地点はあったのですが、気象官署では震度4を観測した地点はなく、昔の観測網でしたら「震度3」として扱われていたかと思います。
参考までに平成初頭の地震の震度分布図を転載します。こちらは、2022年の事例の1つ前に「福島県中通り」を震源とするM5クラスの地震です。
1993年当時の震度観測網・震度階級では「最大震度2」でしたが、今回の震度分布を見る限り、震度4程度の揺れが観測されていてもおかしくなかったかと思います。
【まとめ】
今回(2022/4/19)のように、浅いところでは良く地震が起きる地域でも、深さが変わると実は珍しいということは良くあります。一方で、深さが深いからといって揺れが軽視できるとも限りません。深さが100km近くても震度6クラスの揺れになったことはありますし、もっと小さければ更に頻度は大きくなります。
震央から遠ければ、場合によっては、震源が浅い場合よりも揺れが大きくなったり遠くまで伝わったりするケースもあることを今一度自覚して、日々の備えにお役立ていただけたら幸いです。
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