【はじめに】
この記事では、2022年12月9日に発表された「Billboard Japan Hot 100」の年間チャートを私(Rx)なりに振り返っていきたいと思います。
ビルボードジャパンの年間チャートについては、昨年(2021年)も類似記事をnoteに書いたのですが、結局今年も過去に感じてきた『課題』が解消されず(むしろ悪化?)していた様に感じたので、それを解消すべく、私なりのチャートに加工してみたく考えています。
2022年の年間チャートの概要について
昨年に続き、まずは基本部分からおさらいしていきます。(↓)
Billboard Japan Hot 100は、Billboard JAPANによって発表される日本の音楽チャート。
アメリカにおけるヒットチャートの代名詞であるBillboard Hot 100の日本版にあたる。複数の指標データを基に、人気の上位100曲の順位を決定して週単位で発表している。
チャート構成
Billboard Japan Hot 100
楽曲単位でなく、シングル単位の売上ベースでランキングを作成するオリコンランキングとは異なり、社会における楽曲の流行を可視化するため、多様な音楽の視聴スタイルを反映した複合チャートが特徴である。
Billboard JAPANチャートは楽曲の「所有」と「接触」というコンセプトの元で作成されており、「社会への浸透度を計る」ことをチャートの理念として掲げている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チャート自体は2008年に始まり、2016年12月のリニューアルを経て、平成の終わり頃から週間・年間チャートの代表格的な存在として一般層にも注目されるようになりました。
2017年以降の年間1位は以下のとおりでして、まさに時代を代表する楽曲たちが名を連ねています。『恋』や『Lemon』は平成終盤を代表するロングヒット曲でしたし、2020・21年の年間1位はアーティストも含めて、年間1位が見事な箔付けとして機能しました。
△「年またぎ」のヒット曲の比重が高い
ただ、2022年は、これまで以上に『年またぎ』曲が上位に来てしまい、『本当に2022年のヒット曲なのか、2021年以前からのヒット曲が2022年も得点を重ねて上位に来てしまったのか』が分かりづらいチャートとなってしまっています。
俗に、「新語・流行語大賞」は、上半期が不利で、選考間近の事柄が選ばれやすいと言われることがあります。一方、単純な数字の積み重ねでは、フラットな状態で……集計されるのが理想です。しかし、目に見える形でロングヒットが増えてきた令和において、Billboard JAPANのチャート設計において、今年も「△」を付けたいのが「年またぎ」のヒット曲の比重の高さです。
「52週チャートイン」というのは、すなわち昨年からチャートインしている楽曲と同義です。普通は、『2022年』のチャートならば、『2022年発売の曲』が過半を占めるのが一般的でしょう。しかし今や
「52週」得点を計上できる楽曲も増えた結果、前年12月から得点を計上できる楽曲が非常に有利となってしまっているのです。「年またぎ」のヒット曲が、その年に発売された楽曲よりも強くなりかねないのでは? という観点が常に課題として残るのです。
これは、「総合カラオケチャート」ほどでないにしろ、年間チャートのラインナップが『ちょっと前』に感じられてしまうというのは、やはりもったいないと感じるのです。そこで今回も『肌感覚』に更に近づけるべく、以下のとおり3つに分類してチャートを見ていきたいと思います。
2022年の年間チャートを3つに分類
ビルボードチャートは、全米に合わせる形で日米を問わず「前年12月~当年11月」を年度の周期としています。なのでざっくり「2021年12月以降」を2022年度チャートの対象期間内の発表と見做します。
総合 | 発売/発表 | 楽曲名 | 歌手名 |
---|---|---|---|
1位 | 21/12/06 | 残響散歌 | Aimer |
2位 | 21/05/26 | W/X/Y | Tani Yuuki |
3位 | 21/11/04 | ベテルギウス | 優里 |
4位 | 22/04/15 | ミックスナッツ | Official髭男dism |
5位 | 20/10/25 | ドライフラワー | 優里 |
6位 | 21/08/18 | シンデレラボーイ | Saucy Dog |
7位 | 22/06/08 | 新時代 | Ado |
8位 | 21/11/03 | なんでもないよ、 | マカロニえんぴつ |
9位 | 20/08/18 | 水平線 | back number |
10位 | 21/12/10 | 一途 | King Gnu |
上の表をみると、発表・発売年度もバラバラで、2020年に発表された楽曲が2曲(水平線は配信前のYouTube公表時点で分類)、2021年が6曲で、2022年に発表された楽曲は2曲しかありません。
ここに少しの疑問を持つとともに、後世に『2022年のヒット曲』として伝わる時に、誤った伝わり方をしてしまわないかを懸念しているところです。改めてチャートを3つに分けてざっくり見ていきます。
2021年以前の発売で、前からヒットしていた楽曲
まずは、2021年の年間1位に輝いた『ドライフラワー』が、このカテゴライズでも1位となりました。2020年発売の曲が『2022年』の総合5位(Top5)に入っていること自体が注目に値しますよね。
このカテゴリーでの上位には、人気アーティストが固まって名を連ねています。メンバーをみても納得なのですが……逆の言い方をすると、こういった楽曲達が『壁』のように君臨してしまっている結果、本来もっと上位に来てもおかしくない楽曲が不当(?)に下位になっているのではないかと感じる節もあるのです。
2021年以前の発売で、今年本格的にヒットした楽曲
昔なら有線放送やラジオから偶然の出会いで知ったところから口コミでヒットしていましたが、今も『TikTok』などのSNS発で、前年以前のリリース曲が年を経て本格的ヒットに入ることがあります。
2021年12月以前の発売で、2021年12月以降(できれば2022年中)に大ヒットした曲をピックアップしてみました。(↓)
上半期は全体の2位だった『ベテルギウス』を上回ったのは、2022年に入ってからのチャートで捉えた『W/X/Y』。Tani Yuukiさんは優里さんよりも更に4つ下(1998年生)ということで、新時代のアーティストが総合2位(非アニメソングでは全体の1位)という結果となりました。
総合8位の『なんでもないよ、』や18位の『CITRUS』は、昨年の「日本レコード大賞」までは十分に年間チャート上位を狙える知名度ではありませんでしたが、あの2021年12月30日をキッカケに一転。2022年にかけてロングヒットとなりました。マカえんは、2年連続同じ曲でレコ大の舞台に立つことが決まっています。
そしてSaucy Dog、Vaundy、TWICEといった紅白出場アーティストが、こうしてみるとTop10圏内に入ってくるのです。話題性をしっかりと区別して表示すれば、こうしたヒットチャートはより確度を増してみることができるでしょう。
2021年12月以降発売で、今年まさにヒットした楽曲
見出しのタイトルは正確にしました。「2021年12月以降に発売で、今年まさにヒットした楽曲」として、ここからがまさに私が思う『2022年発売のヒット曲』のランキングです。
年間1位は『紅蓮華』、『炎』などからバトンを繋いだ『Aimer(エメ)』さんの『残響散歌』です。そして気づけばTop10の過半数、そして上位は『アニメソング』が独占しています。
アーティスト別にみると、ウタことAdoさん、ヒゲダン、King Gnuが2曲ずつこのTop10に名を連ねています。こういったラインナップの中に、『BE:FIRST』がランクインするのも興味深いですし、これらアーティストが全て紅白出場を決めているという点も注目に値するでしょう。
(更に欲張った改善案)対象期間で割ってみると……?
しかしです。まだまだ見方を変えていく必要があるように思います。3つ目のチャートでみても、52週ランクインした『残響散歌』がチャートの構成的にどう考えても有利なのです。言い方を変えれば上位の大半が52週ぐらいランクインしている中で、(ちゃんと)2022年の春以降に発売された楽曲は集計の期間が短く不利となるがために不当に(?)下位となっているのです。
順位 | 発表日 | 期間 | 楽曲名 | 歌手名 |
---|---|---|---|---|
1位 | 21/12/06 | 12ヶ月 | 残響散歌 | Aimer |
4位 | 22/04/15 | 7ヶ月半 | ミックスナッツ | Official髭男dism |
7位 | 22/06/08 | 6ヶ月 | 新時代 | Ado |
11位 | 22/04/28 | 7ヶ月 | Habit | SEKAI NO OWARI |
27位 | 22/10/12 | 3ヶ月 | Subtitle | Official髭男dism |
30位 | 22/10/12 | 3ヶ月 | KICK BACK | 米津玄師 |
上に示したのは、真の年間1位候補ともいうべき楽曲たちです。この集計方法が正しいかはわかりませんが、対象期間が半分近く或いは4分の1なのに、年間Top30入りしているというのは大ヒットの証以外にほかならないのに、この年間チャートの記事では殆ど取り上げられません。
2022年春は『ミックスナッツ』と『Habit』が、夏から秋にかけては『ウタ/Ado』が現実のチャートをも席巻。そして秋クールに入るとアニメ『チェンソーマン』の『KICK BACK』とドラマ『silent』の『Subtitle』が熾烈な上位争いを展開したのです。
1979年……12月27日 – 「年間ベストテン」では、通常のベストテンではベスト3に入らなかった渥美二郎と小林幸子がロングヒットにより年間ベスト3に入り、両者がスタジオで歌唱。渥美は通常のベストテンでは3週のランクイン、すべて10位であったが、8か月間ベスト30に入り、年間の高得点に繋がったことを久米が解説。
ザ・ベストテン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
往年の『ザ・ベストテン』の年間チャートに見られた『ロングヒット曲優勢』が、歪んだ形で復活してしまったのではないかと思っているのです。『ザ・ベストテン』時と異なり、今は『今年ヒットした』感が弱く、『去年からヒットしている周回遅れ』感がどうしても出てしまう点が勿体ないのです。
【まとめ】Rxの選ぶ年間チャート上位10選
個人的には、上の7曲こそ『2022年の真の年間Top10入り』相当の楽曲ではないか?と考えるのです。以下、順不同としますが、主観でTop10を選ぶとこんな感じになります。(↓)
混戦、接戦であった様に思うのですが、ここで本家のように総合5位に『ドライフラワー』が入ってくると年間チャートの読み方に『工夫』や『技術』が必要になってしまうのです。そこが極めて惜しい!
ぜひ来年度以降に、この点がある程度『考慮』したチャートになることを期待しています。きっと巷のチャート分析家の方とは違った着眼点(?)で、もう少しマクロな視点で記事を書かせて貰いました。皆さんの2022年の年間ヒットチャートの見立てをコメント欄に教えてください。今年も残り僅か、頑張っていきましょう!
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