緊急地震速報(警報)で「震度7程度」などと予測された事例をまとめてみた

【はじめに】
この記事では、緊急地震速報(警報)で「震度7程度」などと予測された過去事例を纏めていきます。2016年の熊本地震や2018年の北海道胆振東部地震のように実際震度7を観測した事例で、しっかりと警報が出されていた一方で、大規模な誤報と呼べる事例も目立つ界隈です。

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ただ、数回の明らかな誤報を除けば、一定程度の地震が起きていて、結果的に「震度7程度」が言い過ぎであったとしても『誤差として許容しなければならない程度』ということもありますので、そこらへんの空気感を皆さんと共有していければと思います。

平成時代(後半)

△11/04/12 M8.0(→ M6.4)千葉県東方沖

東日本大震災の翌月、朝ドラ放送中に起きた地震では、福島県浜通りで起きた地震の震源位置で大地震が発生し、震度6~7クラスの揺れになるという速報となった事例がありました。

地震波
検知時刻
08時08分21.8秒検知
から
北緯東経深さ最大震度
108時08分25.5秒3.735.6141.410km6.75弱
208時08分27.1秒5.337.0140.610km7.56弱~7
308時08分27.6秒5.837.0140.610km8.06強~7
408時08分33.2秒11.437.0140.610km7.26弱~6強
508時08分34.8秒13.037.0140.610km7.36弱~7
608時08分44.2秒22.435.5140.820km6.25弱以上

この前日に「福島県浜通り」を震源とするM7.0(震度6弱)の地震があり、余震活動も活発だった中で、それを上回る大地震。福島県浜通り・中通りや茨城県北部で最大震度7程度が想定されましたが、実際には2つの地震の混同によるものでした。

50分19秒あたりから

×13/08/08 M7.8(→ M2.3)誤報

(出典)ホーム >  各種データ・資料 >  緊急地震速報(警報)発表状況 >  緊急地震速報の内容

2013年8月8日の事例は、「緊急地震速報(警報)」の誤発表の代表例として知られています。奈良県でM7.8(最大震度7程度)と出たものの、実際には和歌山県北部のM2.3の地震だったというもの。
「夏の甲子園」が開催中ながら現地が揺れていない中で、南海トラフ巨大地震のような震度分布をNHKが伝え、ネットでも大きな話題を呼びましたが、これは完全な過大発表となってしまいました。

◎16/04/16 M7.1(→M7.3)熊本地震 01:25

初めて「的中」したと言える事例が、2016年4月16日の「熊本地震」のいわゆる本震です。第8報の21.8秒後から「M7.1・最大震度7程度」という発表に移り、実際に「M7.3・震度7」でした。

地震波
検知時刻
01時25分10.1秒検知
から
北緯東経深さ最大
震度
101時25分14.0秒3.932.7130.810km5.95強程度
201時25分14.8秒4.732.7130.710km6.35強~6強
301時25分18.1秒8.032.8130.810km6.45強~6弱
401時25分18.7秒8.632.8130.810km6.96弱~6強
501時25分19.8秒9.732.8130.810km6.86弱~6強
601時25分20.2秒10.132.8130.810km6.86弱~6強
701時25分21.6秒11.532.8130.810km6.96弱~6強
801時25分31.9秒21.832.8130.810km7.16弱~7
(出典)気象庁 ホーム > 各種データ・資料 > 緊急地震速報(警報)発表状況 > 緊急地震速報の内容

その第8報での震度予測というのが下のとおりであり、熊本・阿蘇付近では的中していましたが、大分県などでは大きく実測値を下回る結果となった点も触れておきます。

震度6弱
から7程度
熊本県熊本
震度6弱
から6強程度
熊本県阿蘇
震度5強
から6弱程度
福岡県筑後、熊本県天草・芦北
震度5強程度長崎県島原半島、宮崎県北部山沿い
震度5弱
から5強程度
大分県西部、熊本県球磨
長崎県南西部、佐賀県南部
震度5弱程度宮崎県北部平野部、福岡県筑豊、鹿児島県薩摩
福岡県福岡、佐賀県北部、大分県南部
震度4
から5弱程度
大分県北部、大分県中部、宮崎県南部山沿い
長崎県北部、福岡県北九州、宮崎県南部平野部

×16/04/16 M6.9(→M3.2)大分県中部 11:29

その半日後に起きた地震では反対に、(極)小規模の地震ながらM6.9・最大震度7程度という速報値が出てしまったこともありました。これは大分県から宮崎県にかけての、いわゆる「日向灘地震」や「南海トラフ巨大地震」を想起させてしまうような過大予測となりました。

警報発表から8秒ほどは「※1:震度6弱から7程度 大分県南部、震度5強から6弱程度 宮崎県北部平野部」という速報値でしたが、検知から18秒ほどでワンランク予測が落ち、実際には震度3程度という結果になっています。


※55分48秒頃~ デビュー直後の「高山奈々」キャスターが決死のアナウンス

◎18/09/06 M5.8(→ M6.7)胆振地方中東部

「熊本地震」に続いて実際に震度7を観測した「北海道胆振東部地震」でも、緊急地震速報は非常に早い段階で「震度7程度」という情報を提供していました。

下に示した図のうち、検知から11.4秒後の「※10」:つまりM5.8という中規模地震での予測の段階で「震度7程度:胆振地方中東部」と格上げされ、最終報までそこは変わりませんでした。実測値による値なのかも知れませんが、第18報にはM7.0という大地震相当だと最大限の警戒を呼びかけています。

(出典)気象庁ホーム >  各種データ・資料 >  緊急地震速報(警報)発表状況 >  緊急地震速報の内容

震源位置も、震度も寧ろ先取りするかのように早く的確に報じていた印象のあるこの緊急地震速報は、札幌などの大都市に対しても、北東北など遠地に関しても有益だったと思え、震度7の地震の警報の中でも屈指の適報だったと捉えています。

令和時代

△22/01/22 M7.5(→ M6.6)日向灘

令和初の例となったのが2022年1月に起きた「日向灘」の地震。第1報でM7.2(6弱:大分県南部)として始まり、一旦中規模に落ちた後、第6報(M7.5)の0.4秒だけ、「震度6弱から7程度:大分県南部」と上振れしました。

ウェザーニュースLiVEとしても、目を凝らさなければ気づかないほど一瞬でしたが、「震度7」という表示が出された事例となりました。実際の計測は震度5強でしたが、この程度の誤差は許容しなければならない面はあろうかと思います。

○23/05/05 M7.0(→ M6.5)石川県能登地方

2023年のゴールデンウィーク真っ只中に起きた「珠洲市」の地震は、2020年の年末から続く一連の群発地震の中でも最大の規模(Mj6.5)となり、最大震度6強を観測しました。

第7報で警報が発出された段階で、M7.0・6強以上という値から始まり、第10報から基本的に「最大6~7程度:石川県能登地方」という情報は変わらずに推移しました。

地震波
検知時刻
14時42分6.9秒検知
から
北緯東経深さ最大震度
114時42分10.0秒3.137.4137.410km1.0予測震度なし
214時42分11.0秒4.137.4137.410km1.0予測震度なし
314時42分11.0秒4.137.5137.310km5.7予測震度なし
414時42分11.9秒5.037.5137.310km5.7予測震度なし
514時42分12.0秒5.137.5137.310km6.3予測震度なし
614時42分13.1秒6.237.5137.210km6.9予測震度なし
714時42分14.2秒7.337.4137.210km7.06強以上
814時42分16.6秒9.737.5137.310km6.96強以上
914時42分17.0秒10.137.5137.310km6.96強以上
1014時42分17.4秒10.537.6137.310km7.06弱~7
1114時42分19.6秒12.737.6137.320km7.06弱~6強
1214時42分20.9秒14.037.6137.310km7.06弱~7
1314時42分22.4秒15.537.6137.310km6.86弱~6強
1414時42分24.4秒17.537.6137.310km6.96弱~7
1514時42分24.6秒17.737.5137.310km6.96強~7
1614時42分26.2秒19.337.5137.310km7.06強~7
1714時42分26.5秒19.637.5137.310km6.96強~7
2014時42分50.5秒43.637.5137.310km6.96強~7
2214時43分13.0秒66.137.5137.310km6.86強~7
(出典)気象庁ホーム > 各種データ・資料 > 緊急地震速報(予報)発表状況 > 緊急地震速報(予報)の内容

結果論としては、日本海沿岸のみが該当地域であり、長野県や岐阜県、群馬県は過大な発表となったのかも知れませんが、こちらも誤差という観点でいえば、許容しなければならない範疇なのかなと思いました。

○24/01/01 M7.4(→ M7.6)石川県能登地方

前年に起きた群発地震よりも更に大きな予報であり、実際にそのとおりとなったのが「令和6年能登半島地震」です。震度7を観測する地震の4分前にも震度5強の地震があった中での警報発表でしたが、「最大震度7・M7.4」という予測値はほぼ適報であり、3度目の警報は広範囲に警戒を訴えるに十分な内容だったと言えるでしょう。

地震波
検知時刻
16時10分10.0秒検知
から
北緯東経深さM最大震度
116時10分16.0秒6.037.5137.210km5.55弱~5強
2016時10分43.1秒33.137.5137.210km6.66弱~7
3016時11分07.1秒57.137.6137.210km7.46強~7

(出典)気象庁 ホーム > 各種データ・資料 > 緊急地震速報(警報)発表状況
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△24/08/08 M7.2(→ M7.1)日向灘

同年夏に起きた日向灘地震では、大地震が懸念されてきた日向灘で21世紀初の大地震となり、最大震度6弱を日南市で観測しました。速報段階では、規模はほぼ適報で、震度に関しても大きく外れてはいませんでしたが、0.8秒間だけ「震度6強~7」となる瞬間がありました。

地震波
検知時刻
16時43分3.7秒検知
から
北緯東経深さM最大震度
116時43分06.8秒3.131.9131.410km1.03程度以上
416時43分09.4秒5.731.8131.720km7.26弱~6強
1516時43分17.0秒13.331.8131.620km7.26強~
1616時43分17.8秒14.131.8131.630km7.26弱~6強

(出典)気象庁 ホーム > 各種データ・資料 > 緊急地震速報(警報)発表状況

第4報で警報が出され、その後も情報が更新されていきましたが、第15報の0.8秒間、震源位置の推定が少し陸に近づいたこともあり、M7.2・最大震度6強~7という想定に上振れしました。

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