【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「シルクロードステークス」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。
シルクロードステークスは日本中央競馬会が京都競馬場で施行する中央競馬の重賞競走(GIII)である。競走名の「シルクロード」は、ユーラシア大陸を横断する古代の交易路を指す呼称。
シルクロードステークス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
事実上の前身(1989~1995年)オープン特別時代
現在の重賞としての「シルクロードS」は1996年に創設されましたが、1989年から1995年まで、5月の関西で「オープン特別」として開催されていたレースがあるので、それを事実上の前身として紹介します。(↓)
施行日 | 競馬場 | 距離 | 優勝馬 | 性齢 | 優勝騎手 | 管理調教師 |
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1989年5月6日 | 京都 | 1600m | シヨノロマン | 牝4 | 武豊 | 庄野穂積 |
1990年5月5日 | 京都 | 1200m | エーコーシーザー | 牡5 | 武豊 | 安田伊佐夫 |
1991年5月4日 | 京都 | 1200m | メイショウマキーナ | 牡4 | 田島良保 | 高橋直 |
1992年5月9日 | 京都 | 1200m | ユウキトップラン | 牡4 | 武豊 | 佐山優 |
1993年5月8日 | 京都 | 1200m | ユウキトップラン | 牡5 | 河内洋 | 佐山優 |
1994年5月7日 | 阪神 | 1200m | ゴールドマウンテン | 牡5 | 角田晃一 | 佐山優 |
1995年5月6日 | 京都 | 1200m | ゴールドマウンテン | 牡6 | 岸滋彦 | 佐山優 |
初回はマイル戦、そして2年目からは短距離戦として行われていました。初期の4回で武豊騎手が3勝していたり、後半は佐山調教師が4連覇をしていたり、ユウキトップランとゴールドマウンテンが連覇を達成していたりと、得意が顕著に出る舞台だったようです。
ユウキトップランは初勝利時は9馬身差の圧勝であり、ユウキトップランもゴールドマウンテンも連覇を目指した年は60kgを背負っての勝利であり、オープン特別とはいえ見応えのあるレースでした。
4月開催時代(1996~1999年)
1989年からの7回を加えれば第8回に相当する1996年が重賞としての「シルクロードS」の第1回となります。現在の「高松宮記念」が「高松宮杯」という名称で開催されていた頃、それまでの中距離重賞から5月の「短距離G1」に生まれ変わるタイミングでのトライアル昇格でした。
回数 | 施行日 | 競馬場 | 距離 | 優勝馬 | 性齢 | タイム |
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第1回 | 1996年4月28日 | 京都 | 1200m | フラワーパーク | 牝4 | 1:07.6 |
第2回 | 1997年4月20日 | 京都 | 1200m | エイシンバーリン | 牝5 | 1:06.9 |
第3回 | 1998年4月26日 | 京都 | 1200m | シーキングザパール | 牝4 | 1:08.6 |
第4回 | 1999年4月25日 | 京都 | 1200m | マイネルラヴ | 牡4 | 1:08.7 |
初回から3回はスプリント路線の牝馬が勝っていて、エイシンバーリンの勝ちタイム1分6秒9というのは驚異的な日本レコードタイムでした。その翌年もシーキングザパール、そしてマイネルラヴと勝っていて、非常に充実したトライアルレースとしての役目を果たしていました。
2月開催時代(2000~2010年)
その「高松宮記念」が3月末開催となったことを受けて、2000年からは「シルクロードS」が2月上旬の開催となりました。この結果、レース間隔の近い「阪急杯」の方に少しメンバーが流れていくこととなっていきます。
時期変更の初回を勝ったのは【ブロードアピール】です。同馬が不良馬場を駆け抜け、重賞初制覇を飾った舞台でした。ダートに転向する前に、芝の短距離路線に挑み続けていた頃ですね。
第5回 | 2000年2月6日 | ブロードアピール | 牝6 |
第6回 | 2001年2月4日 | トロットスター | 牡5 |
第7回 | 2002年2月3日 | ゲイリーフラッシュ | 牡9 |
第8回 | 2003年2月9日 | テイエムサンデー | 牡7 |
第9回 | 2004年2月8日 | キーンランドスワン | 牡6 |
第10回 | 2005年2月6日 | プレシャスカフェ | 牡5 |
第11回 | 2006年2月5日 | タマモホットプレイ | 牡5 |
第12回 | 2007年2月4日 | エムオーウイナー | 牡6 |
第13回 | 2008年2月10日 | ファイングレイン | 牡5 |
第14回 | 2009年2月8日 | アーバンストリート | 牡5 |
第15回 | 2010年2月7日 | アルティマトゥーレ | 牝6 |
時期が2月開催となると、明け4歳馬の勝利は全くなくなり、ハンデの面で勝負になりそうな古馬が勝ち馬に並んできます。その最たる例が2002年の【ゲイリーフラッシュ】です。9歳の同馬が単勝万馬券一歩手前の97.5倍(14番人気)で勝ったのは、平成10年代の中盤までの特徴が如実に出ていました。
2004年に【キーンランドスワン】、2005年に【プレシャスカフェ】が1番人気で2連勝をすると、徐々に人気サイドの勝ち馬が目立つようになります。
1~2月の開催(2011年~)
更に2011年には1月第5週にあたる開催となります。しかし、これが結果的には『阪急杯』の前に一叩きしたい馬とレース間隔を2ヶ月と開けてG1に挑もうとする馬たちの交差点となり、メンバーが年によっては改善する結果に繋がっていったのです。
第16回 | 2011年1月29日 | ジョーカプチーノ | 牡5 |
第17回 | 2012年1月28日 | ロードカナロア | 牡4 |
第18回 | 2013年1月27日 | ドリームバレンチノ | 牡6 |
第19回 | 2014年2月2日 | ストレイトガール | 牝5 |
第20回 | 2015年2月1日 | アンバルブライベン | 牝6 |
2009年のNHKマイルCを勝った【ジョーカプチーノ】がダービー最下位の後1年半の休養を経て復活し、年末のラピスラズリSから連勝しています。
そして、2012年には【ロードカナロア】が5連勝でこのレースを制し、13年ぶりに明け4歳馬の優勝馬が誕生します。この後の高松宮記念で唯一の3着と敗れていますが、後に世界王者となっています。
2014年の【ストレイトガール】も、この翌年からG1を続けて勝つようになるなど、手頃なタイミングで開催される短距離重賞として注目される存在となっていきました。
第21回 | 2016年1月31日 | 京都 | 105.25 | ダンスディレクター | 牡6 |
第22回 | 2017年1月29日 | 京都 | 111.25 | ダンスディレクター | 牡7 |
第23回 | 2018年1月28日 | 京都 | 108.25 | ファインニードル | 牡5 |
第24回 | 2019年1月27日 | 京都 | 108.25 | ダノンスマッシュ | 牡4 |
第25回 | 2020年2月2日 | 京都 | 110.75 | アウィルアウェイ | 牝4 |
第26回 | 2021年1月31日 | 中京 | 110.50 | シヴァージ | 牡6 |
第27回 | 2022年1月30日 | 中京 | 109.25 | メイケイエール | 牝4 |
重賞に上がってからは【ダンスディレクター】が初の連覇を達成し、令和に入ってからだと2022年の【メイケイエール】がチューリップ賞以来となる重賞4勝目をあげています。
レースレーティングをみると、G3の基準とされる105ポンドと、G2の基準とされる110ポンドの付近を行ったり来たりしてて、G2には届かない年も多いものの、G3としての役割をしっかりと果たしている印象です。
サウジやドバイといった中東での国際招待競走へ日本馬が大挙するようになった昨今、創設当初よりも日本競馬からみた海外への「シルクロード」が重要になってきていることを思ったとき、直接このレースが中東に繋がる訳ではないですが、異国の地に思いを馳せるような素敵なネーミングのレースに大きな期待を抱いていきたいと思います。
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