【はじめに】
この記事では、「プレバト!!」の俳句査定で『A.B.C-Z』唯一の特待生として活躍している【河合郁人】さんの俳句を振り返っていきます。
一般参加者時代
2015年:初挑戦で才能アリ『景色』を何と3回も
アルバム『A.B.Sea Market』やCDシングル『Moonlight walker』がリリースされた2015年年末、河合さんが「プレバト!!」の俳句査定に初挑戦します。
この時に披露した句は、有季定型俳句の初心者は避けるべきとされる『三段切れ』気味でありながら、夏井先生から高評価を得て、いきなり才能アリ1位(70点)を獲得します。その句がこちら(↓)
1位70点『冬景色湯けむり景色母景色』
『景色』という単語が五七五のそれぞれの切れ目に配置されていて、定型俳句のセオリーからすると、『切れ』でプツプツと切れてしまうため避けるべきとされる『三段切れ』に該当します。もちろん型に厳しい企画や先生だとこれだけで「×」にされていたかも知れません。
しかし、読んでみるとそのリズムの良さや次々と立ち上がる情景に『魅力』がありますので、夏井先生はそこを高く評価してくれたのだと思います。ベタな題材を重ねた作品であるだけに、定型崩しの様な強烈な個性を持たせなければ成立しえなかった……のかもですね。
2016年:連続才能アリから、花言葉で才能ナシに
2016年5月(俳句の上では『初夏』にあたる)の約半年ぶりの放送で、河合さんは2度目の才能アリを獲得します。その句というのがこちらでした(↓)
1位70点『水しぶき伸ばす手に夏感じる子』
この句も第一感として「中七下五のリズム」が素晴らしいなと思いました。思わず音読したくなってしまうのは『俳句』という文芸においては魅力でしかありませんよね!
夏井先生は、『水しぶきへ』と上五を字余りにしても関係性を明確にした方が良いと1文字添削しましたが、ほぼ傷なしで2回連続才能アリ。これで、キスマイ・横尾さんに次ぐジャニーズ特待生の期待も掛かったものでした。
しかし、3度目では『コスモス畑』という兼題に対して、コスモスの花言葉だという「純粋」を上五に置いて『季語の代わりにする』という暴挙(ww)に出て、才能ナシ20点に撃沈。(花言葉が季語に)なるわけないだろ! と一蹴されてしまい、2017年は2回とも凡人査定に終わり、一旦は完全に特待生昇格は白紙となってしまいます。
ちなみに2017年の節分シーズンに詠まれた句で、夏井先生が番組内で(恐らく)初めて『黙(もだ)』を使った添削を披露しています。
2018年:1年半ぶりの才能アリは『福島』の句
浜ちゃんにはゴーストライター疑惑を持たれましたが、久々(1年半ぶり)の才能アリは2位ながら非常に素直で良い句で、おじいちゃんの実家の思い出と呼応した『福島』という地名がいきた句です。
2位70点『福島の軒の氷柱に透ける空』
『軒』と限定せず、『福島の空よ』ぐらいに前半を軽くした方が後半の季語や空が活きるという高度な添削を受けていましたが、河合さんが才能アリの時に受ける添削は非常にハイレベルです。それだけ、夏井先生も心の中でというか「特待生」候補だという認識をもっていたのだと思います。
しかし、続く回は60点3位での凡人査定、そして、初秋の回では「秋日和」という昼を思わせる季語を上五に置いておきながら「夜」を描いてしまったため再び20点5位に沈んでしまいます。
2019年:3度目の正直、2連続73点で特待生へ
しかし、2019年の平成から令和にかけて、非常にハイレベルな句を3作連続で叩き出し、これまで2連続までに止まっていたのを完全払拭。しかもそのうち2回が「73点」の高得点という事で、初挑戦から3年半ほどで念願の『特待生昇格』となりました。
3句とも素晴らしいのですが、いずれも基本の型に忠実で、しかも季語をしっかりと信じて『取り合わせ』るという勉強の跡がはっきりと窺えたことも、夏井先生の高評価に繋がったものと思われます。
特待生時代
2020年:『補助輪』の句で4級へ昇格
2019年8月に現状維持の査定を受け、約1年後の2020年7月、初の「特待生昇格」を果たしました。
5→4級:『補助輪を外し三周麦茶の香』
季語「麦茶(麦湯)」の香りが下五に据えられることで香ってきます。そして「麦茶が香る」だけならばどんな展開でも考えられる訳ですが、上五に『補助輪』と出てきて、中七にかけて『補助輪を外し』と展開させたのが一つの技術。そして、『補助輪を外し三周』とすることで、その子の喜びようが手に取る様に分かります。
2021年:1ランク降格 → 1ランク昇格
4級昇格後、それまで出場機会のなかったタイトル戦に積極的に参戦するようになりますが、2020年は惨敗続きで、本戦出場を果たせませんでした。そして久々に通常回に出場した河合さんですが……
4→5級『制服のキスの余韻や揚花火』
という句に、夏井先生は講評を始める前段階から『食傷』気味な表情。たしかに言われてみれば季語の「揚花火」よりも『制服のキスの余韻』があまりにも強すぎて、季語としてのバランスを若干逸してしまっていますし、加えてご指摘のとおり『世の男子高校生はみんなそう!』と言われてしまえば身も蓋もないほどのベタ(類想)度合いには、普段以上に降格が出やすくハイレベルな「一斉査定SP」では、力負けといった感じで、再び危険水域の「特待生5級」に逆戻りしてしまいました。
1度の現状維持で特待生の地位を保つと、その次の回では1年3ヶ月ぶりの再昇格で「4級」に復帰を果たします。その時の句がこちらでした(↓)
5→4級『デビュー曲一位行きつけの新蕎麦』
句を詠んだだけで職業というかどういった境遇の方なのかが一発で分かります。そして、最後の季語が「新蕎麦」というちょっと特別感のあるものだったことで、攻めていながら非常に手堅さもある素晴らしい作品に仕上がっていました。これはもう見た瞬間に、『これなら特待生維持できそう』と安堵するほどのレベル感だったと思います。
再出世を果たした河合さん。まだムラは激しいものの、好調時が重なれば本当に「タイトル戦」でも好成績を期待できますし、その爆発力で出演回数が増えれば名人昇格も見えてくると思います。次の出演を心待ちにしたいと思います。皆さんはどの句が印象に残っていますか? 宜しければぜひコメント欄へ。
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