梅沢富美男(おっちゃん)の俳句と夏井先生の添削にみる切れ字「かな」(プレバト!! 俳句)

【はじめに】
おっちゃん(梅沢富美男 特別永世名人)が詠んだ「プレバト!!」俳句と夏井先生の添削例から「かな」という切れ字について学んでいきます。

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おっちゃんが高評価を得た「かな」俳句

おっちゃんにとって鬼門であることは後述しますが、調べてみると何句か「かな」で終わっていて夏井先生から高評価を得た作品があったので、それを先に見ておくことにしましょう。

(16/10/13)2→3段『ライン引き残してつるべ落としかな

初挑戦は名人2段だった時に披露した「つるべ落とし」の句。五七五の定型を少し崩した句またがりで、かつ「かな」という切れ字を使った点も評価されて3段に昇格されました。

次の成功事例は、一気に永世名人にまで飛び、時代も令和、2020年代に飛びます。ハイレベルで4位でも添削がなかった「炎帝戦」で披露した作品でした。

(20/08/06)炎帝戦4位『行合の空の御朱印めぐりかな

季節を跨ぎ、あるいは七夕の頃と縁のある「行合の空」を前半に置き、後半にかけてゆったりと『御朱印めぐり』と名詞の中で展開させて詠嘆の「かな」で落とす。こちらも非常に静かでオシャレな作品だったように思います。

上の句は惜しくも句集には載りませんでしたが、句集『一人十色』へ「掲載決定」の評価を得たのが、2021年の「蜩(ひぐらし)」の句でした。

(21/08/19)掲載決定『蜩の声かけ流す湯殿かな

気づけば、高評価を得た作品はいずれも「秋」を感じさせるような作品であり、いずれも非常に穏やかな内容という共通点があることに改めて気付かされました。思えば、タイトル戦を優勝したのも、夏から秋に固まっているのがおっちゃんの特徴かも知れません。

この回で、夏井先生は「かな」について、こんな感じの解説をしていました。すなわち、『かな』には「私はこう感じるが、(読者の)あなたはどうですか?」といった投げかけの意味 が含まれているといった解釈です。

  • 『雪とけて村いっぱいの子どもかな』/小林一茶
  • 春や昔十五万石の城下哉』/正岡子規
  • 『流れ行く大根の葉の早さかな』/高浜虚子

上に示した近世~近代の俳人の句や、おっちゃんの高評価句と直接リンクするかは各自の判断に任せたいとは思いますが、一つ切れ字を選ぶ際のヒント、考える際のコツの一つにはなるかなと感じました。

蜩の句から3回連続で高評価を得られなかった「かな」俳句でしたが、約2年ぶりに高評価を得たのがこちらでした(↓)

(23/11/09)お見事『鼈甲べっこうのフレームにある小春かな

「かな」俳句も「眼鏡」題材も比較的苦戦していた印象のあるおっちゃんにとっては大きな「お見事」評価であり、『かな』のコツを掴んだかな……と(一瞬でも)思わせる出来となりました。

「かな」で終わる俳句に添削された例でみる俳句の定式

となれば、夏井先生が添削で「かな」を使った事例をみれば、“正解”……とは俳句では言えませんが、夏井先生の考える「かな」の有効な場面を間接的に知ることが出来そうです。振り返ってみました。

おっちゃんと「かな」との出会いは、2015年12月、特待生4級だった頃に遡ります。

車窓にはじょんがらのごと雪しまく』
        ↓
『じょんがらのごと雪しまく車窓かな

単なる呟きや日記ならば添削前でも良いのでしょうが、他者に見せる観点からすると「読者への投げかけ」を『かな』によってもたらすのは重要な視点だと感じました。

この雪しまく車窓を私は『じょんがら』のごとく(ようだと)感じましたが、貴方はどうですか?」などと投げかけられたら、実体験がない人はその五能線のお座敷列車に乗ってみたくなりそうです。

原句でも名人6段へ昇格となった2017年6月の作品は、月間MVHに選出。しかしこの句も全く同じような構図での添削がなされていました。

紫陽花の泡立つ車窓午後の雨』
↓
『紫陽花の泡立つ雨の車窓かな

「午後」という2音を削って「かな」という切れ字を入れる損得勘定が非常に見事だというふうに感じます。「雨」で終わると情景描写に終わりますが、「かな」で終わると人間で着地します。そこの差は大きいように感じました。

改めて上記2作の添削後の形を並べてみると、

  • じょんがらのごと雪しまく車窓かな
     ( 比喩 )+( 実景 )+かな
  • 紫陽花の泡立つ雨の車窓かな
      (比喩)+(実景)+かな

このように構図は一緒でした。「実景」にかなをつけることで、「私は『前半の(比喩)』のように感じましたが、貴方は(実景)についてどう感じましたか?」といった投げかけの公式(俳句の型)になるのだと思うのです。

「かな」で終わる俳句は、おっちゃんにとって鬼門

ではここから、「プレバト!!」で時々やるおっちゃんを特集する特番回でないですけれど、おっちゃんの「かな」で終わった句が添削された例を見ていくこととしましょう。全てを載せることは致しませんが、幾つか紹介していきます。

万緑を穿つ朱なる列車かな』
↓
『万緑を穿つや赤き列車

「万緑」、「穿(うが)つ」、「朱なる」と気取った言葉を3連発で使って、読者によっては障るように感じてしまう原句。「かな」は『しんみりとした詠嘆』だったり『味わい深い感動』を下五でどっしりと表すニュアンスの強い切れ字だと捉えると、夏井先生が『全然わかってない!』と毒舌気味に言うのも分からなくもない感じがします。

春の日は練り羊羹の甘さかな』
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『春の日は甘し練り羊羹の艶

この時は構図というよりも、原句の「映像の弱さ」が減点対象となりました。「甘さ」という味覚に頼る難しい句ではなく、「羊羹の艶」という視覚的に分かりやすい添削となり、鮮やかさが保証されました。ただこれは上に見てきた例を見る限り、かなり惜しかったのではないかと思います。

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永世名人となった直後、『道中を終えて眼鏡の禿かむろかな』という句を永世名人として初披露しましたが、こちらはボツ!となり、あの『シュレッダー』が初登場した回でもありました。

結局、永世名人になった後も、過去に添削された事例を十分に踏まえない形での披露が多かったようにも思えます。おっちゃんは「なっちゃんは『かな』が嫌い!」などと吠えていましたが、寧ろ初期は、おっちゃんに「かな」を使った明解な添削を示してすらいるのです。ボツになった例をみると、

  • 留守の間をルンバ操る仔猫かな
  • 縦横に斜めに子らの昼寝かな
  • お歯黒のかすかにのぞくひいなかな
  • 夕の膳二つ「ん」のつく冬至かな

これらは2021年度からの約1年間に披露された句ですが、いずれもボツとなり「かな」に赤ペンが入っています。ただ、これまで記事をお読み頂いた方ならおわかりのとおり、「投げかけ」の意味をもたせる夏井先生の添削からすると、上の3句は重要な点が欠けているように思えます。

すなわち、前半が「描写」だけなので、読者に投げかけられても「考える余地がない」という点です。先程の定式に敢えて当てはめてみても、1句目は少し違った理由での添削だった訳ですが、

「子らの昼寝が縦・横そして斜めになっています。貴方はどう感じますか?」と仮に投げかけられても読者が意見を挟む余地が少ないように感じますし、「雛」の句に関しても、結構情景描写のウェイトが強いために読者が投げかけられても答える余白が少ないように思えます。根本的に「投げかけ」るには余白の少ない“描写”句でおっちゃんが「かな」を多用しているものの、そもそも相性が悪い面は否めないように思えます。

特別永世名人となった「おっちゃん」が、『かな』を使った名句を披露してくれるのかに期待しつつ、今回の記事の締めとしたく思います。最後に一つ注意点を挙げるとすれば、上の例はあくまで夏井先生が番組内で話した内容に沿ったものです。近世・近代の名俳人の作品はもちろんのこと、他の場において「かな」の用法が今回触れてきたようなものばかりではないことは重ねてお伝えしておきます。普通に詠嘆として使って成功した例もありましょうから、皆さんなりに分析してみてくださいね。

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