「非常に強い勢力で上陸した台風」などの気象庁の事前の呼びかけを振り返ってみた

【はじめに】
この記事では、ここ数年で「気象庁が事前に備えを呼びかけたような台風」について、その事前の呼びかけについて振り返り、事例によっては改善余地がなかったかが考えていきたいと思います。

2022年の台風14号のように『最悪想定』が避けられた点は良かった一方で、これが常態化してしまうと台風情報の備えの呼びかけが『オオカミ少年化』してしまうリスクもあるため、適切な“不確実性”を反映した情報の伝達・発信となることを願って記事を書いたものです。早速振り返っていきましょう。

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2010年代後半

(2016/10)△ 台風18号【久米島】

平成28年台風第18号(へいせい28ねんたいふうだい18ごう、アジア名:チャバ、フィリピン名: イグメ)は、2016年9月29日に発生した台風。韓国南部を直撃して大きな被害をもたらしたほか、沖縄付近で猛発達して特別警報が発表されるに至った台風である。

台風は発達しながら北西に進み、3日15時には久米島の南で中心気圧915ヘクトパスカルの猛烈な勢力に発達した。18時にはさらに発達して905ヘクトパスカル、最大風速60メートルに達し、「中心気圧910ヘクトパスカル以下または最大風速60メートル以上」という基準を満たしたため、気象庁は19時2分に沖縄本島地方に大雨、暴風、波浪、高潮の特別警報を発表した。

平成28年台風第18号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

中心気圧を基準として初めて発表された「特別警報」でしたが、結果的には僅かに中心が久米島の西側を通過したため、久米島は「最低気圧957hPa・風速39.6m/s」、久米島北原では「風速48.1m/s」と強い勢力ではあったものの『特別警報』級の暴風には至りませんでした。

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気象庁のデータを「ウェザーニュース」のHP経由で見ても、最接近時で中心気圧905hPaだったそうですが、距離が近い割に実測値で950hPa台だったことを思うと、ドボラック法の一種の限界を感じる部分もあるかも知れません。

そして情報の伝え方の難しさとして、暴風、波浪、大雨、高潮特別警報の発表範囲が『沖縄本島地方』という広い範囲だったことも気になりました。コースからみても明らかな様に、対象範囲は実質的には『久米島』にほぼ限定されていたのですが、『沖縄本島地方』といってしまえば、当然「沖縄本島」の全員(100万人以上)が警戒を余儀なくされました。

久米島以外の実測の最大瞬間風速は、渡嘉敷43.7m/s、那覇33.6m/s、粟国33.4m/s、名護28.1m/sなど特別警報級の半分以下であり、沖縄の皆さんにとっては下手をすると『特別警報が出た割にこんなもんか』という印象を与えかねないものでした。今は対象範囲を市区町村クラスまで狭めて発表する様になりましたが、情報の伝え方の難しさを実感した事例でしたね。

(2018/09)○ 台風21号【大阪湾】

平成30年台風第21号(へいせい30ねんたいふうだい21ごう、アジア名:チェービー/Jebi/제비、命名:韓国、意味:つばめ、フィリピン名:メイメイ/Maymay)は、2018年8月28日に発生し、9月4日に日本に上陸した台風。25年ぶりに「非常に強い」勢力で日本に上陸し、近畿地方を中心に甚大な被害を出した。

平成30年台風第21号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

上陸の前日から四国・近畿地方に『非常に強い勢力を保って接近・上陸する見込み』としていて、もし非常に強い勢力で列島に上陸すれば25年ぶりだとして大きく取り上げられました。

実際に、非常に強い勢力で四国地方に上陸し、ほぼ衰えずに大阪湾を襲い近畿地方に再上陸。近畿地方一帯では平成以降最強クラスで、暴風・高潮による被害が大きく出て、タンカーの橋への激突や家屋の屋根の破壊、関空島の浸水などが様々なメディアで繰り返し報じられました。

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台風の動き
高知県の一部を暴風域に巻き込みながら北上し、非常に強い勢力を維持したまま4日12時頃徳島県南部に上陸した。上陸時の中心気圧は950hPa、最大風速は45m/sで、非常に強い勢力のまま上陸するのは1993年の台風13号以来25年ぶりとなる。同日14時頃には兵庫県神戸市付近に再上陸した。事後解析でも非常に強い勢力で日本に上陸したと解析され、「25年ぶり非常に強い勢力での日本列島上陸」は正式記録となった。

気象状況
台風の接近に伴い、近畿・東海・北陸・北海道を中心に記録的な暴風となった。また大阪湾紀伊水道の沿岸では記録的な高潮となり、6地点でそれまでの観測史上最高潮位を超え、このうち大阪と神戸では第2室戸台風時の記録を超えた。

被害
・死者14人
※死者はいずれも、強風による転落・転倒や、飛来物に当たったことが原因とみられる。

高潮による被害
関西国際空港では、高潮による滑走路の浸水やターミナルビルの浸水、停電などで閉鎖、さらに関西国際空港連絡橋にタンカーが衝突し連絡橋が中破、一時孤立した。

( 同上 )

当時はまだ前例が少なかったため、近畿地方の方々に危険性を伝えるのが難しかったかと思いますが、何とかその怖さが伝わり、気象庁の事前の会見がよく成功した部類かと感じました。

(2019/09)○ 台風15号【房総半島】

令和元年房総半島台風(れいわがんねんぼうそうはんとうたいふう、令和元年台風第15号、アジア名:ファクサイ/Faxai、命名:ラオス、意味:女性の名前)は、2019年令和元年)9月5日に発生した台風関東地方に上陸したものとしては観測史上最強クラスの勢力で9月9日に上陸し、千葉県を中心に甚大な被害を出した。この台風により、首都圏やその周辺などの台風災害に対する脆弱性が改めて浮き彫りとなった。

市原ゴルフガーデン鉄柱倒壊事故
・千葉県内で送電塔2本と電柱84本が倒壊

令和元年房総半島台風
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

近畿地方を襲った台風21号の翌年、関東地方に2つの命名台風が直撃をします。その1つ目が「台風15号」こと『令和元年房総半島台風』です。その名のとおり、房総半島での物的・停電被害が大規模・長時間に及び、風台風の怖さを久々に思い起こさせる結果となりました。

  • 神津島:最大風速43.4m/s・瞬間58.1m/s(2003年以降で歴代1位)
  • 千葉:965.1hPa(2位)、最大風速35.9m/s・瞬間57.5m/s(1位)
  • 勝浦:最大風速29.5m/s(1906年以降で歴代9位)

気象庁は前日に報道資料・記者会見で首都圏に注意喚起を行いましたが、風台風の被害をイメージしづらかった関東地方の住民に具体的にイメージさせることの難しさを痛感する結果となりました。

また前日の段階では「東京都中部」を通って北東方向に進む予報だったものの、実際には予想進路より東側に傾き、東京湾を通って房総半島を直撃した(その微妙な)誤差が被害に多少影響したかも知れません。接近してきても、予報には誤差があるため油断大敵ということをこの台風からも学べます。

(2019/10)△ 台風19号【東日本】

令和元年東日本台風(れいわがんねんひがしにほんたいふう、令和元年台風第19号、アジア名:ハギビス/Hagibis、命名:フィリピン、意味:すばやい)は、2019年令和元年)10月6日3時にマリアナ諸島の東海上で発生し、12日日本に上陸した台風である。静岡県関東地方甲信越地方東北地方などで記録的な大雨となり、甚大な被害をもたらした。またこの台風は、昭和54年台風第20号以来、40年ぶりに死者100人を越えた台風となった。

令和元年東日本台風
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

房総半島台風の被害の印象も強かった2019年の翌10月、スケールで上回る台風19号が東日本を襲い、翌年に『東日本台風』と命名される大雨災害に苛まれました。

気象庁は、上陸の3日前から報道発表資料を連日更新し、『(前年の台風21号と同様)非常に強い勢力で上陸する恐れ』であるとか、『台風15号よりも広範囲に被害が出る恐れ』などと最大級の警戒を訴え続けました。

確度が高まった11日の記者会見では『状況によっては、大雨特別警報を発表する可能性があります。』と明記した上で、『伊豆に加えて関東地方でも土砂災害が多発し、河川の氾濫が相次いだ、昭和33年の狩野川(かのがわ)台風に匹敵する記録的な大雨となるおそれもあります。』と過去の具体的な台風名を使って最大級の警戒を呼びかけました。

狩野川台風との類似性
この台風が日本に接近しつつあった10月11日、気象庁は記者会見を開き、「台風19号は非常に強い勢力を保ったまま、12日に東海地方または関東地方に上陸する見込みで、静岡県伊豆地方を中心に甚大な被害をもたらし1,200人以上の死者・行方不明者を出した、1958年狩野川台風に匹敵する記録的な大雨となる恐れもある。」と発表し、警戒を呼びかけた。

( 同上 )

狩野川台風では、伊豆半島に被害が集中し静岡県内だけで1,000名を超える犠牲者が出ましたが、この台風を契機に作られた狩野川放水路」によって『令和元年東日本台風』では被害を出すような氾濫は起こりませんでした。

一方で、『狩野川』という静岡県のローカルな地名が独り歩きしてしまった結果かも知れませんが、『狩野川台風』の時もあった様に東京都・神奈川県内でも被害が出ましたし、台風の直撃は免れたはずの東北地方【福島県(死者36名)、宮城県(死者20名)】で河川の氾濫や土砂災害による犠牲者が多く出た点においては、情報の伝え方になお課題と改善の余地があることを突きつけられました。

2020年代前半

(2020/09)△ 台風10号【鹿児島・長崎】

令和2年台風第10号(れいわ2ねんたいふうだい10ごう、アジア名:ハイシェン / Haishen)は、2020年9月に発生し、日本に接近後に朝鮮半島に上陸した台風である。
一時は「大型で非常に強い」台風となったことから過去最強クラスと言われ、特別警報の発表も予想されたが、実際に日本に接近した際には予想よりも勢力が落ちたものの、非常に強い勢力として接近した。また、特別警報の発表も結局は見送られた。

令和2年台風第10号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

更にその翌年『特別警報級』と恐れられたのが台風10号です。9月2日の段階で前年の『東日本台風』と同様、『!(ビックリマーク)』を付けて早めの備えを注意喚起し、9月5日には『台風要因の特別警報発表の見通し』と題した資料を公表していました。

この台風は、進路にあたる地域での事前に海面水温が記録的に高い上、上空の風などの発達の条件が揃っているため、接近時の勢力は過去最強クラスで最大瞬間風速80m/sの猛烈な勢力に発達し台風の進路に近い島々では過去にないような荒天のおそれがあると予想され、警戒されたが、気象庁は9月6日、鹿児島県に発表する見通しだった特別警報を中心気圧が発表基準に達する見込みではなくなったため見送った。

9月5日の時点で、920hPaの気圧を保ったまま九州に接近していたが、6日午前に奄美諸島接近した時点で945hPaまで急速に減退。直近に同じコースを辿った台風9号の影響で海水温が下がり、動力源となる水蒸気を取り込めなくなったことや上空の気流が要因とみられる。

( 同上 )

結果的に、特別警報は出されませんでしたが、猛烈なしけや山間部での大雨、そして九州広域での停電といった被害が確認されました。そして、暴風に関しては長崎半島の南西端にあたる「野母崎」で最大瞬間風速59.4m/sを観測。

一方、台風の中心が通った福江(五島列島)では949.9hPa(歴代1位)、厳原(対馬)では953.7hPa(歴代2位)を観測し、厳原は最大風速で歴代1位を塗り替える暴風が吹きました。

このように、大々的に報じられたような「九州南部」での勢力は当初予報ほどではなかったものの、実際の記録をみると、長崎県内に限っては観測史上に残るような勢力で襲っていましたから、評価するにも『地域差』が大きいことは無視できないでしょう。

(2022/09)× 台風14号【鹿児島・宮崎】

令和4年台風第14号(れいわ4ねんたいふうだい14ごう)は、2022年9月14日日本の南の海上(小笠原近海)で発生し、9月18日に非常に強い勢力で鹿児島県上陸した台風である。

令和4年台風第14号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

2022年の台風14号では、実際に沖縄県以外に初めて「台風(中心気圧)に起因する特別警報」が発表されました。途中経過を一旦忘れれば、『特別警報級の勢力で九州に上陸』した台風であり、その一点においては、決して非難されるべき内容ではなかったという風に思います。

事実、上の表に纏めましたとおり、種子島・屋久島では観測史上の最低気圧の記録を更新しましたし、鹿児島県内では『枕崎台風』の後では最低の気圧を更新しました。また、上陸地点となった鹿児島市や危険半円の雨雲が掛かり続けた九州東部の山間部(特に宮崎県内)は大雨特別警報が発表されるほどの記録的大雨となりました。

急速に勢力を強め、17日午後1時には925hpaとなり、最大瞬間風速70m/sとなった。そして、同日午前3時中心気圧910hpa、最大風速55m/sと猛烈な強さとなり、大東島地方へ接近した。大東島地方では、午後1時に一部が暴風域に入り、屋根が飛ぶなどの被害が起きた。

9月17日 午前11時 気象庁は緊急記者会見を開き、「経験したことのないような暴風、高波、高潮、記録的な大雨のおそれ」があるとして、暴風波浪高潮大雨特別警報を九州北部と九州南部に発表する可能性について解説した。大型で猛烈な台風であったため、報道では「過去最強クラスの勢力」「危険台風」などという表現も用いられた。

9月17日 気象庁が鹿児島全域で2013年の運用開始以来3度めとなる、台風を要因とする特別警報(暴風・波浪・高潮)を発表した。沖縄以外で発表されるのは初めてのことである。 当初はその後、熊本県・長崎県・佐賀県・福岡県などでも発表する可能性があるとした。

9月18日 午後3時10分 宮崎県で猛烈な雨が降り続き大雨特別警報を発表した。午後7時 台風は鹿児島市付近に上陸した。上陸時の中心気圧は935hPaで、日本に上陸した台風の中では過去4番目に低い(2000年以降では最も低い気圧)。

( 同上 )

しかし個人的には今回の情報発信は、過去の事例に比べてあまりにも課題点が多かった様に思います。ある種で課題の多い前例を作ってしまったと言える事態ではないかと感じます。

(1)記者会見を受けて解説するべきだったと思う注意点

特に、台風上陸の1日半前(2022/09/17 午前)の記者会見での情報が、やや大袈裟(実態以上に誤解を招いた恐れの意)に伝わった節があった印象でした。具体的に気になった点を列挙しますと、(↓)

  • 気象庁のいう『経験したことのないような』や『過去に例がない』と表現には、厳密には『1945年の枕崎台風』が含まれていない点が全く伝わっていない点

    なお、気象庁が枕崎台風を直接的に触れなかった理由は恐らく以下のとおり。
    • 台風の観測が正式に始まったのが1951年(昭和26年)以降であるため
    • よって台風の上陸時の気圧の公式記録も1951年のみがオフィシャルであり、1945年枕崎台風の916.1hPa(や1934年の室戸台風の911.6hPa)が参考値の扱いになっているため
  • 気象庁の定義(沖縄などの離島への接近は「上陸」とは言わない事や「大雨特別警報と台風の中心気圧による特別警報の扱い」の違い)の正確性を期するあまり、世間の印象と認識の差が生じた可能性がある点
  • 「予報には不確実性」があることは承知しているが、『出されている値にどの程度の不確実性があるのか』について言及が不足していた点
  • 『伊勢湾台風(かそれ以上)』という表現には、中心気圧・勢力といった観点が中心で、必ずしも被害と直結する訳ではない点
  • 『伊勢湾台風』の特筆すべき点として『中日本に南日本を襲う様な勢力で直撃した』という事実が挙げられるが、そのことが殆ど触れられていなかった点

こういった情報の前提が十分に共有・吟味されることのないまま、『特別警報級』や『史上最強クラス』、『伊勢湾台風級(かそれ以上)』といった見出しが乱立する結果となりました。

(2)平均値を大幅に上回る「予想の誤差(九州北部で40hPa)」

この台風の「予測」はやや過剰となった側面があり、正確性を欠いた期間がやや長かった点で課題が残ったように思います。敢えて、当時の気象庁・報道発表資料の1ページをそのまま引用しましょう。

(出典)気象庁 ホーム > 各種申請・ご案内 > 報道発表資料 > 令和4年報道発表資料
 > 台風第14号の今後の見通しについて  ~台風要因の特別警報発表の見通し~

台風第14号の今後の見通しについて  ~台風要因の特別警報発表の見通し~ [PDF形式:4.8MB](6頁)
 https://www.jma.go.jp/jma/press/2209/17a/20220917T2214.html

画像内の表の値で比較した時に実測値との誤差が大きかった点も注目されました。2地点挙げますと、

地点9/17 AM9
予想値(表内)
実測値
種子島
屋久島
地 方
910hPa屋久島
932.3hPa
(誤差22hPa)
九 州
北 部
930hPa福岡
969.0hPa

(誤差39hPa)

特に誤差が大きかったのは、九州中部から中国地方あたりでの予測との差で、24時間前でも実に40hPa近くの誤差が出ていました

これについて、気象庁も予報が難しい現象について (台風による暴風と大雨、高潮)のページなどでも纏めている通り『予想の難しさや不確実性』に触れていない訳ではありません。しかし、

で示されている『24時間予報の年平均誤差』は11hPa台で令和は推移していました。こうしてみると台風14号における誤差が平均から大きくブレていたことは事実で、『予報には不確実性がある』という言葉で許される限度を超えていると感じた方も多かったのも理解できます。

(3)「ほぼ衰えず九州北部・中国地方に再上陸」の現実性は?

上の図をみた時に、台風報道をご覧になる方で疑問符を抱いたのが、九州南部を直撃した後の勢力予想ではないでしょうか。土・日時点の予報をざっくりと纏めてしまえば、

  • 屋久島~九州南部(上陸時):910hPa
  • 九州中部~北部(再上陸時):930hPa
  • 山口・山陰地方(再上陸時):945hPa

などといった数字が並んでおり、仮にこれが現実のものとなれば確かに「観測史上最低」を軒並み更新するスーパー台風となっていたことでしょう。

結果的には「九州の西部を勢力を弱めないまま北上して列島を横断する」という予想は外れ、鹿児島県の鹿児島湾を通って鹿児島市付近に935hPa程度で上陸した後は、鹿児島~熊本県内で勢力を弱め、九州北部に再上陸する頃には上述のとおり960hPaより弱まっていました。予想が良い方に外れて良かったチャンチャンで果たして本当に良いのでしょうか(←もちろん悪くハズレるよりはマシですが)

海水温が平常より高く台風が衰えないというのが勢力を維持する要因の一つではあったと思いますし、きっと複雑な計算・シミュレーションの結果だとは思うのですが、過去の歴史において例が前例がない(←気象庁も認めるところ)様な事象が、どの程度の確率で起こりうるのかという情報は必要ではないかと思うのです。事実、海外の予測モデルと比較しても気象庁は最悪級の予測を提示していました。海外のモデルが当たるとも限りませんが、上に示した気象庁の予想がどの程度“リアル”なのかは決して軽視できない情報です。

持論として、予報精度を上げる努力だけでなく、情報を適切・適度に伝えることの精度の向上に向けた努力が今度更に重要になってくるのではないかと感じました。東日本大震災時の津波情報がそうだったように、その情報の伝え方ひとつで却って「情報の伝え方の巧拙が枷になりうる」ことには注意が必要でしょう。

今後に向けての提案【気圧予想を「○~○hPa」に】など

以上の現象から、今後に向けての私(Rx)なりに考えた提案をしていきたいと思います。皆さんも情報に接する際に、この観点を持ち合わせて頂けると幸いです。

  • 台風の「進路予想図」の『中心気圧・最大風速・最大瞬間風速』について、
    現行:表示される数字は1つのみ
     ↓
    提案:(不確実性があるというなら)予測値の上限と下限を示す
    • (具体例)910hPa → 910~945hPa
  • 数字が一つしか示せないにしても、示されている値が『最悪想定』なのか『平均値での想定』なのかを報道発表資料や会見などで補足して欲しい
    • 仮に「中心気圧910hPa」と示された時に、最悪想定なのか平均の想定なのかで備えも変わってくるし、935hPaなどとズレた時に『最悪想定じゃなくて良かった』なのか『平均を遥かに下回った』なのか受け止め方が変わってくるため

例えば、台風と同様「不確実性」がある『大雨の雨量予測』については、『24時間で300ミリから400ミリ』などのように振れ幅を持たせて発表しています。むしろ、不確実性を認めているならば、積極的にその振れ幅を示すことが必要かと思います。

もう一つ、ここ最近、被害の恐れの大きな台風の「予想進路図」では、『最悪想定』に近い値が採用されることが多い印象です。ちょうど今回の台風14号での値がそんな感じですよね。本当に九州北部に930hPaで【どのぐらいの確率(リアル度)で】上陸する予想なのか。そこを記者会見などでも積極的が難しくてもその観点を発信して欲しいと感じました。

以上の2点によって、却って安心情報になるという反対意見もあろうかと思いますが、『適切な情報発信』という観点からして今の予想進路図は不十分と感じました。(この記事が気象庁に伝わるとは思っていませんがww)今回の事例を踏まえて、来年の台風シーズンから速やかに対応して頂いても国民に損はないレベルの提案ではないかと思いますので、ぜひ今後の改善の一案としてご検討頂きたいです。

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