競馬歳時記【9月2週】「京成杯オータムH」

【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「京成杯オータムハンデ」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。

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京成杯オータムハンデキャップ(けいせいはいオータムハンデキャップ)は、日本中央競馬会 (JRA) が中山競馬場で施行する中央競馬重賞競走GIII)である。

競走名の「京成」は、寄贈賞の提供を受けている京成電鉄に由来している。

京成杯オータムハンデキャップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

昭和年間:(京王杯)オータムH 徐々に条件が定着へ

「京成杯オータムH」の第1回が行われたのは1956年。9月9日の開催で、当時は秋の関東重賞の一発目というタイミングでした。古牡馬が出走できる唯一の2000m未満の重賞ということで、歴史は非常に古いものです。第3回までは「○○杯」という部分のない単なる「オータムハンデキャップ」でした。

主な「オータムハンデキャップ」
  • 1956年
    第1回
    ヒガシテラオー

    オークス7着、七夕賞を制したヒガシテラオーが初代優勝馬に。七夕賞でも2着だったブレツシングは3着。

  • 1957年
    第2回
    タメトモ

    4頭立て、7馬身差の圧勝。アラブの怪物【セイユウ】が、七夕賞 → 福島記念を制して59kgと3歳馬とは思えぬ酷量をサラブレッド相手に背負い大差負け。

  • 1958年
    第3回
    トパーズ

    1.36.4のレコード勝ち。年明けサラブレッド相手に3着以下が続いていた【セイユウ】は53kgまでハンデを落としていたものの、2着と大健闘。

外国産馬やアラブ馬も出走可能で、しかもマイルのハンデ戦ということで秋競馬の初期に楽しみなレースとして発足。さらに1959年になると京王電鉄からの寄贈賞となり冠レースの「京杯オータムH」となります。ちなみに今の「京杯」とは異なるので要注意です。

例えば、アラブの「読売カップ」が春と秋で開催されていたように、この「京王杯」も、「京王杯スプリングH」と対になるものとして「京王杯オータムH」が開催されていた訳ですね。

1959年当時の主な冠レース

  • 1月:日本経済新春杯
  • 6月:日本短波賞4歳S
  • 7・12月:読売カップ
  • 9月:京王杯オータムH
  • 12月:朝日杯3歳S、朝日杯チャレンジC

その1959年は、61kgという古馬クリペロを現3歳馬で50kgだった【ハククラマ】が4馬身差の圧勝。これを秋緒戦として11月には「菊花賞」を制しています。

1960年代に入ると、ダート開催となった1961年を制した【スターロツチ】や1964年に2着だった【ヤマトキヨウダイ】、1967年に3着だった【カブトシロー】など、マイル戦でありながら有馬記念ホースが秋緒戦として出走しているなど、今とはかなり印象の違ったレースとなっています。1963年に距離が1800mに延長されたこともあり、どちらかというマイルより中長距離路線への意識が(僅か200mとはいえ)強まったのかなとも感じる改革でした。

昭和中盤は中山・東京競馬場で開催場が年によって違ったのですが、1980年代になると開催条件が固定化されていきます。1980年に9月開催が「中山競馬場」に固定化されたことで中山開催で定着。そして1984年にグレード制が導入されGIIIに格付けされると、距離が1600mに戻されました。

  • 1980・81年:サクラシンゲキ
    スターロツチの“ひ孫”が、同レース史上初の連覇。
  • 1987年:ダイナアクトレス
    オークス3着馬が、函館3歳S以来2年ぶりの優勝。1分32秒2でのレコード勝ち。
  • 1988年:ホクトヘリオス
    新潟代替開催。京成杯3歳S以来こちらも2年ぶりの優勝。

平成・令和時代:京成杯となり、徐々にマイル特化

平成最初(1989年)に優勝した【マティリアル】は、伝説のレースとなった「スプリングS」以来実に2年半ぶりの優勝を果たすも、レース直後に故障を発生し4日後に死亡してしまいます。1990年代に入ると、現4歳時に【サクラチトセオー】が58kgを背負って1分32秒1というレコードタイムで勝ち切り、翌年には天皇賞(秋)を制しています。

そして、1998年には『京成杯3歳S(当時)』と実質的に交換をする形で寄贈賞を贈る会社が変わり、レース名が従来の「京王杯オータムH」から「京成杯オータムH」となります。これによって、「京王杯スプリングC」と寄贈会社が異なることとなりました。これは昭和中盤以来の変革だったことが今回この記事を書いていてはじめて気付かされましたね。

21世紀に入ると、マイラーたちが連覇を達成するケースが目立ちます。具体的に言うと、

  • 2002・03年:ブレイクタイム
    安田記念を含めオープンクラスで2着5回だった同馬が初重賞制覇を果たしたのが2002年の京成杯AH。翌年は58kgを背負って史上2頭目の連覇達成。
  • 2004・05年:マイネルモルゲン
    ダービー卿チャレンジトロフィーに次ぐ重賞制覇、そして連覇達成。2002年から連覇を達成する馬が続けて出現
  • 2019・20年:トロワゼトワル
    ロードカナロアの初年度産駒。3勝クラスを勝って52kgで重賞初挑戦し、勝ちタイムが何と1分30秒3の大レコード(レースレコードは1秒以上更新)。牝馬による連覇は初のこと。

このようにマイル戦で強さを発揮する馬たちがメンバーの大半を占め、その中で連覇を果たすようになっていきます。

周囲を見渡せば、「スプリンターズS」が中山最終週の開催となり、その前哨戦「セントウルS」が同じ週に開催されることとなりましたし、2012年からは『サマーマイルシリーズ』の最終戦にも指定されています。「マイルCS」には少し間があることから、いわゆる短距離も走れるマイラーは、セントウルSからスプリンターズSに向かうのが主流となりました。

一方、一線級のマイラーは、トライアルに使うとしても富士Sとなることが増え、そこからマイルCSや香港マイルに向かいます。『京成杯オータムH』は、秋競馬の開幕週の名物重賞である一方で、秋競馬での飛躍を違うには夏の負担が大きい点が些か気になりますね。

レースR勝ち馬斤量
2016110.13ロードクエスト55kg
2017109.00グランシルク56kg
2018111.75ミッキーグローリー55kg
2019105.25トロワゼトワル52kg
2020110.00トロワゼトワル55kg
2021110.00カテドラル56kg
2022

2016年以降のレースレーティングをみると、今は地方で活躍するロードクエストが3歳時に優勝していて、その頃から2019年を除いて基本的には「110ポンド」前後のハイアベレージを記録しています。

他の距離の重賞と比べると値自体は高いのですが、GIIに昇格した「富士S」が平均で112~113ポンドなことを考えると、やはりGIIには一歩届かない水準という体感もあながち間違いではないでしょうか。

ネーミングに「オータム」とある通り、『白露』の頃、秋の訪れを日の短さや朝晩の冷え込みで感じて秋競馬の訪れを感じられるレースです。昭和の頃から秋競馬の開幕を遂げてきたこのレースとともに、サマーマイルシリーズの最終戦と秋競馬の入り口の交差点、気持ち新たに清々しく挑みましょう。

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