【はじめに】
この記事では、「雪虫」と呼ばれることもある「綿虫」について纏めていきます。
雪虫(ゆきむし)とは、アブラムシ(カメムシ目ヨコバイ亜目アブラムシ上科)のうち、白腺物質を分泌する腺が存在するものの通称。体長5mm前後の全身が、綿で包まれたようになる。
雪虫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキペディアにみる「雪虫」について
この虫の呼び名としては、他に綿虫(わたむし)、雪蛍、東京地域のオオワタやシーラッコ、シロコババ、京都地域のゆきんこ、おこまさん、伊勢地域のオナツコジョロ、水戸地域のオユキコジョロがある他、しろばんばといった俗称もある。小説『しろばんば』のタイトルは、この虫に由来する。
( 同上 )
具体的な種としては、トドノネオオワタムシ、ヒイラギハマキワタムシなどが代表的な存在である。
アブラムシは普通、羽のない姿で単為生殖によって多数が集まったコロニーを作る。しかし、秋になって越冬する前などに、羽を持つ成虫が生まれ、交尾して越冬のために産卵する。この時の羽を持つ成虫が、蝋物質を身にまとって飛ぶ姿が、雪を思わせる。アブラムシの飛ぶ力は弱く、風になびいて流れるので、なおさらに雪を思わせる。
北海道や東北地方では、初雪の降る少し前に出現すると感じられることが多いため、冬の訪れを告げる風物詩ともなっている。雄には口が無く、寿命は1週間ほど。雌も卵を産むと死んでしまう。熱に弱く、人間の体温でも弱る。
( 同上 )
『雪』を連想させるため『雪虫』というネーミングが人口に膾炙しています。実際、人肌に触れると…という部分を見れば尚のこと、『雪虫』らしさに溢れている印象ですよね。
※ちなみに個人的には、実物とは違うファンタジーなものですが、アニメ『ARIA The ANIMATION』などに登場した“可愛らしい生き物”を想像していました。
ただ、そんな『雪虫』として知られるこの昆虫は、俳句歳時記では冬の季語として収録……されていると思ったのですが、実はややこしい所が一点あります。
( 同上 )
ウィキペディアでは『同じ「雪虫」と呼ばれるセッケイカワゲラ』という黒い昆虫も、季語(しかも季節が違う春の季語)となっているというのです。早速、手元の俳句歳時記を引いてみました。
俳句歳時記にみる2つの「雪虫」
手元の電子辞書にある「角川俳句大歳時記」から、『雪虫』と検索してヒットする2つの季節の季語をピックアップしておきましょう。
- 冬 綿虫【わたむし】[動物]
傍題:大綿、雪蛍、雪婆(ゆきばんば)、白粉婆(しろこばば)、雪虫 - 春 雪虫【ゆきむし】[動物]
傍題:(なし) ※ウィキペディアでいう「セッケイカワゲラ」
主たる季語としては、春の方の「雪虫」が掲載されていました。寧ろこちらの方を連想する人が、ひょっとすると全国にはいらっしゃるのかも知れません。
ウィキペディアにある「雪虫」は、歳時記の季語としては『綿虫』の傍題という位置づけになっていました。そして、綿虫の傍題にある幾つかの別名についても、ウィキペディアに書かれていましたね。
俳句歳時記などにみる「雪虫」の例句
では最後に、雪虫の例句をご紹介していきます。まずは、冬の季語の方の『綿虫』と傍題からです。
- 『綿虫や夕べのごとき昼の空』/阿部みどり女
- 『綿虫に瞳を細めつつ海の青さ』/橋本多佳子
- 『綿虫や海道一重山幾重』/百合山羽公
- 『澄みとほる天に大綿うまれをり』/加藤楸邨
- 『大綿やだんだんこはい子守唄』/飯島晴子
- 『休みなく舞ふ一生や綿虫は』/倉橋羊村
- 『窓開けて白き神々雪蛍』/伊藤白雲
- 『綿虫の風の行方を追ふ速さ』/岡安仁義
- 『この指にとまれ夕日も綿虫も』/大石悦子
- 『綿虫の無音と無音ぶつかりぬ』/矢口晃
- ( 後日 )
そして、最後に、春の季語の方の『雪虫』の例句から2作品をご紹介して最後です。
- 『言霊や たんと雪虫生まれたる』/松澤雅世
- 『雪虫の飛んでいのちを使ふかな』/江澤艶子
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