【プレバト!! 俳人列伝】三遊亭円楽名人

【はじめに】
落語家として、そして「笑点」メンバーとして昭和から令和にかけて活躍された【六代目三遊亭円楽】さん(以下、三遊亭円楽)が、2022年9月30日、闘病の末72歳でお亡くなりになりました。

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この記事では、MBS・TBS系列で放送される「プレバト!!」の俳句査定での活動を振り返る「プレバト!! 俳人列伝」として、生前の俳句を振り返っていきたいと思います。

2016年:(吟行SPを除くと)一発で俳句特待生に

「プレバト!!」の俳句査定に特待生制度が始まったのは2015年10月からで、制度開始1年弱は、一発で特待生に昇格することも まま見られました。その最後の例となったのが三遊亭円楽さんでした。

一発特待生を決めたとはいえ、その後の時代に2回で特待生になった方々(村上健志さんや鈴木光さんなど)より優れていたとは言い切れず、制度設計が全く違ったので、当時は『一発で昇格することも珍しくなかった』ぐらいに考えてもらえればと思います。その時に詠んだ句が、

2016/04/14・才能アリ1位72点「み仏の指やわらかく春の風」

(あの熊本地震の1回目の震度7が発生する直前に放送された)2016年4月14日の放送回で、この時に詠んだ句は『春の風』という季語をうまく詠み込み、72点という高得点も納得の出来でした。

実はこれより遥か2年ほど前になりますが、2014年3月20日(俳句企画の黎明期)に、『吟行SP』という企画があり、そこに参戦した円楽さん。企画中最高評価(☆☆☆)となる句『梅ヶ枝に似たる鳥居を腰低く』を披露するなど才能の片鱗をのぞかせていました。

話は2016年に戻しまして、特待生5級から4級に昇格した時の句も少し懐かしい空気を感じさせる句柄でした。当時から芸風は確立されていたとも言えそうです。

特待生5→4級『町会長犬を預かる盆踊り』

『盆踊』という季語と取り合わせる町会長の存在や、犬との距離感が絶妙です。夏井先生もこの句柄を初期から高く評価していて、その個性を生涯貫かれました。

2017年:2級へ昇格、初タイトル戦は7位

俳句タイトル戦が発足した2017年は、(当時としては数少なかった)特待生の先駆者として番組に積極的に出演し、4級から2度の昇格を経て2級にまで昇進します。

そして、初のタイトル戦となった炎帝戦では『夕凪の帆に寝葉巻の老漁師』を披露するも、一発本番だった当時は7位に沈みますが、その句材の着眼点を評価されていました。

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年末に3級から2級への昇格を決めた『塩鮭の喋るが如き売り子かな』も高評価でしたが、個人的に非常に印象に残っているのは、円楽さんならではのポイントの絞り方で作ったこちらの作品です。

特待生4→3級『チーママの裾はしょりたる梅雨の夜』

上五に『チーママ』という人物が登場し、『チーママの裾』と一旦ポイントを絞ります。そこから『端折る(はしょる)』という俗っぽい動詞で繋げて、下五で「梅雨の夜」と落とす。

『はしょ』という部分で句に一気に勢いが付き、『梅雨の』と敢えて限定する事で17音の外のドラマに思いを巡らせる仕掛けも成功していて、この句は間違いなく傑作だという風に感じていました。

2018年:歌丸師匠追悼句 & 『段雷』(月間最優秀句)

この頃、タイトル戦出場のたびに『賄賂』……もとい「お気持ち」を夏井先生にお送りし、円楽さんの「プレバト!!」内でのキャラが確立されますが、後続の若手特待生に真似されたり、周囲から繰り返しイジられる割に本戦で結果が出なかったりと苦しむ時期が続いていました。

第2回俳桜戦(翌年から春光戦に名称変更)では、前年のリベンジを果たすかのごとく特待生ながら、『銭湯で花見の日取り決まりけり』と詠んで4位に健闘します。これは円楽さんの過ごす世界に近い界隈でないとすぐに浮かんで来ない様なシチュエーションで目を見張る部分があったのを覚えています。

しかし、タイトル戦4位とはまた違った形で、円楽さんの作品が評価され、印象深いエピソードが番組内で誕生することとなります。

2018年金秋戦予選7位
『老いてなほ色変えぬ松芸の道』
↓
『色変えぬ松高座に遺す扇子かぜ一本』

「色変えぬ松」が秋の季語です。他の色づく植物と対比して色を変えない松の青々さを示し、そこから意味が派生して上級者向けのフレーズです。

この句は、『笑点』でもお馴染みの桂歌丸師匠の追悼句(百箇日)として披露しましたが、夏井先生の添削句を見た後は『これね、私の辞世の句にしよう。』とキャラでおどけておられましたが、まさか、この添削が示された(2018/9/27)僅か4年後に現実のこととなってしまうとは。当時まだまだ先だと思っておりました。

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その翌月(2018/10)に披露されたこちらの句で、「月間最優秀句(MVH)」を受賞しています。階級としては特待生だったことを思うと、実に高評価だったことが窺えます。

特待生2→1級『段雷に靴紐きつく秋の朝』

夏井先生も調べるまで知らなかったという上五の『段雷』という言葉。『昼花火』の事を指すそうで、いわゆる『運動会』の朝などに鳴る花火のことだそうです。私はこの句でこの『段雷』という語彙を意識するようになり、秋の運動会シーズンなどに耳にした時『段雷』だと認識できるようになりました。これが俳句などの文学に触れる楽しみの一つでもありますよね。

通販サイトなどで調べると『◯段雷』などの形でヒットするのも面白い。円楽さんも知らなかった様で作句の際に調べて詠み込んだとのこと。俳句を作ることによる学習効果も侮れませんよね~

2018~20年:肺がん、脳腫瘍からの復帰、最高の決勝3位

2018年9月28日、自身の所属する事務所の公式ホームページを通じて初期の肺がんであることを公表。翌月の5日に手術を行い、12日に復帰した。

2019年……7月18日、検査で脳腫瘍が見つかり、19日、検査と治療のため3週間ほど入院することを発表した。8月11日、病院からの一時外出という形で国立演芸場・8月中席に出演、トリを務め、高座復帰を果たす。19日に退院。

2020年11月に開催された新型コロナウイルス感染症流行下におけるがん検診の重要性を訴えるセミナーで、2019年に肺がんが再発していたがごく初期のため薬を変えて検査数値が良くなったこと、過去に初期の大腸がんも患っていたこと、現在も毎月がん検診を受けていることなどを報道陣に明らかにした。

三遊亭圓楽 (6代目)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウィキペディアから引用しただけで、これだけの病に見舞われた円楽さん。2016・18年は5回出演していたものの、2019年は2回のみに激減。タイトル戦のみの出演となり、6・7位と結果が出ません。しかし、2020年の炎帝戦では、これまでの苦戦が全て報われるような大活躍を遂げます。

  • 予選1位『氷壁崩落白玉を掘り出す』
           ↓
  • 決勝3位『サングラス外して探すカードかな』

予選Dブロックでは因縁の相手【立川志らく】さんの『八月十五日アイス溶け続け』を退け、予選1位通過を決め、久々の決勝進出。そして決勝戦では、これまでの4位を上回る自身最高位の「決勝3位」に入りました。

句の形は予選と決勝で全く変えてきており、その引き出しの多さが窺い知れる内容でした。ひょっとすると、予選で下した立川志らくさんに決勝で敗れた(2位)ことが内心悔しかったかも知れませんが、堂々の3位でシードという結果にはご満悦の様子・表情でした。

2021年:1級から32ヶ月で悲願の名人昇格

2021年春光戦の予選では、世代の近い【梅沢富美男】名人も興奮の秀句『山里や三橋美智也の春の歌』を披露しグループ2位となりますが、固有名詞(人名)に頼り過ぎという評価から惜しくも決勝進出とはならず。ただ、添削ナシでしたし、予選枠から漏れてしまったのは個人的には非常に残念でした。

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特待生制度初期に昇格を果たし、2018年10月には特待生1級(名人候補)にまで出世しますが、あと1つ(1級→初段)が遠くなってしまいます。一時期結果が出なかったこともありますし、前述した様に大病によって出演頻度が減り、タイトル戦への参戦が中心となったため『通常査定』へのチャレンジの機会自体が減ってしまっていたのです。

そんな中で、魂を振り絞って迎えた2年半ぶりの通常査定。2021年6月10日放送回で、悲願の連鎖が訪れます。特待生によるワンランク上の査定の前に「平場の参加者5名」による俳句のランキング発表があり、そこで弟子である【伊集院光(三遊亭楽大)】さんが初挑戦で才能アリ1位を獲ったのです。

才能アリ1位70点『濡れ鼠せめてどこぞの喜雨であれ/伊集院光

この句について、梅沢名人は『言葉の使い方が実にうまい』と褒め、夏井先生からも『読んだ時、非常に作者の心根が優しい方だと思った。気取らず正直に書いてる』とその精神面を褒められていました。

半分照れ隠しなのか、ここでもおどけて見せた三遊亭円楽師匠でしたが、嬉しい思いもあったのだろうと推察します。そして何より、伊集院光さんが師匠からのプレッシャーを感じつつも才能アリ1位となり、お褒めの言葉を繰り返し投げかけていたことを恐縮しきりだった姿が印象的でした。

その後に登場する師匠が恥ずかしい句は見せられないと披露したのが下の句。『1ランク昇格』の評価を聞いて、膝を扇子で叩いて喜んでおられました。

特待生1級→名人初段『夕立や尻っぱしょりを犬が追う』

チーママの句の時に見せた躍動感と同じ形で中七に勢いを付ける技巧的な部分と、江戸の落語の中の人物が『夕立』という季語に復活したかのような一種の時代錯誤感のある世界観に引き込まれました。

2021年6月13日、有楽町よみうりホールにおいて、弟子の伊集院光と二人会を開催(昼夜2公演)。2020年5月に伊集院のラジオ番組にゲスト出演した際に圓楽が開催を持ちかけたことがきっかけとなった。
伊集院としては30年ぶりの高座復帰となり、また昼公演では実子の一太郎が6年ぶりに高座に立ち、夜公演では伊集院がかつて名乗っていた高座名を引き継いだ三遊亭楽大が出演した。

三遊亭圓楽 (6代目)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

しかし、病の進行については、2021年の下半期、番組への出演が叶った時期に披露された以下の句からもその凄まじさが感じ取れます。いずれも日付は放送日基準となりますが、

  • 2021/07/22『白シャツを干すハンガーの骨も痩せ』
  • 2021/09/09『病院の脂の抜けた蒸し秋刀魚』

と、もはや正岡子規の句柄に近いような病床ですらも句材とする強い俳句への執念が感じられる結果となっていまして結果的に生前最後に披露されたのが『病院の脂の抜けた蒸し秋刀魚』という句でした。

2022年:テレビへの復帰意欲を滲ませた直後の訃報

2022年8月に高座に復帰したことが大きく報道されましたが、その前後に『笑点』や『プレバト!!』でも番組復帰への意欲を滲ませていることを語るシーンが放送され、ファンも復帰への期待を寄せていた直後(翌月9月30日)に訃報が届いたのです。むしろ前月に高座復帰などで姿を映像で拝見していただけに、大変ショッキングであり、繰り返しの大病を報道を通じて知っていたとは言え、ある種『突然』かのように感じる節もあったように思えてしまいました。

Rxのnoteより追悼記事リンク
《 円楽忌9句 》
2022年9月第5週のRxの振り返り

To Be Continued…

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