競馬歳時記【7月3週】「函館2歳S」

【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「函館2歳S」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。

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函館2歳ステークス(はこだてにさいステークス)は、日本中央競馬会(JRA)が函館競馬場で施行する中央競馬重賞競走GIII)である。

函館2歳ステークス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

昭和時代:GIIIに格付け、9月開催が定着

「函館2歳S」が創設されたのは1969年(昭和44年)のことです。当時の年齢表記に基づけば「3歳」となりますが、現2歳戦の重賞が整備され始めたのは昭和40年代になってのことです。具体的には、

開催日重賞名施行条件初回
69/08/17函館3歳ST1200m1969年
69/09/21北海道3歳SD1200m1966年
69/10/05デイリー杯3歳ST1400m1966年
69/11/02京成杯3歳ST1200m1965年
69/12/14朝日杯3歳ST1600m1949年
69/12/14阪神3歳ST1600m1949年

1969年時点で現2歳重賞は6つほどありましたが、1940年代に創設された2つの現GIに次いで各地に創設されていった現2歳重賞で、いわゆる夏競馬では初の芝重賞創設でもありました。

開催時期は1969・71年が8月、1972・78年が7月となったりしましたが、基本的には9月開催で、今の「札幌2歳S(当時は北海道3歳S)」と立ち位置が逆でした。当時はまだ札幌競馬場がダートコース専用で、芝重賞を開催できなかったことも影響していました。

昭和時代の主な「函館3歳S」
  • 1969年
    第1回
    タニノソブリン

    初回は牝馬が優勝。この功績から「啓衆社賞最優秀3歳牝馬」に選出。2着に入ったのが後の2冠馬【タニノムーティエ】。谷水オーナーのワンツーでした。

  • 1973年
    第5回
    サクライワイ

    不良馬場を快速牝馬【サクライワイ】が3馬身差の圧勝。芝・ダートを問わず、後に1200m戦でのレコードを3度樹立。

  • 1975年
    第7回
    イナリニウドー

    4着に敗れたクライムカイザーは翌年「日本ダービー馬」に。

  • 1977年
    第9回
    バンブトンコート

    北海道3歳Sは3着も6馬身差の圧勝で重賞初制覇。7戦6勝で日本ダービーに出走し1番人気の4着。なお1番人気は後の皐月賞馬【ファンタスト】。しかし、スタート直後に落馬して競走中止。

  • 1987年
    第19回
    ディクターランド

    デビュー戦1.5秒差の圧勝から、本レースでは出遅れて4着の【サッカーボーイ】は、もみじ賞も1.6秒差の圧勝を決めて「阪神3歳S」をレコード勝ち。

実は、後の牡馬クラシックホースなども敗れているのが、この「函館3歳S」です。一方で、牝馬には、クラシックホースを含めた活躍馬が多く名を連ねていて、

  • 1982年:シャダイソフィア(新馬戦10馬身差 → 桜花賞馬)
  • 1984年:エルプス(重賞は出走機会4連勝で桜花賞制覇)
  • 1985年:ダイナアクトレス(牡馬混合重賞を5勝)
  • 1986年:マックスビューティ4着(年明け8連勝で2冠達成)

こういった馬たちは、桜花賞をはじめマイル以下での活躍をみせました。距離適性という観点からも、2000m以上が主戦場の牡馬クラシック路線で活躍する馬は、2歳時でも1200mを戦うのは楽ではないということの裏返しかも知れません。

平成・令和時代:札幌と時期交代、世代最初の重賞に

1997年に函館競馬場と札幌競馬場の開催順が入れ替わったことにより、中央競馬では最初に行われる2歳馬の重賞となった。

( 同上 )

平成に入って札幌競馬場に芝コースが創設されると、世代最初の中央重賞に期待の大きな牝馬を中心に出走することが増えます。9月開催時代の活躍馬をみると、

  • 1990年:2着・リンドシェーバー(生涯連対率100%、朝日杯)
  • 1991年:2着・サンエイサンキュー(阪神3歳牝馬S・オークス2着)
  • 1992年:5着・スエヒロジョウオー(阪神3歳牝馬S)
  • 1993年:6着・ナリタブライアン(朝日杯3歳S → 3冠馬)
  • 1996年:1着・マイネルマックス(4連勝で朝日杯)

敗れた馬から3冠馬が生まれていたりして、マイル以上で活躍する馬が1200mで力を発揮した馬に惜敗してきたことが分かります。

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1997年には札幌競馬と函館競馬の開催順が逆になり、「函館2歳S」が世代最初の中央重賞となりました。開催時期は当初7月最終週 → 8月前半 → 7月下旬 と遷移しています。

その初回(1997年:第29回)を制したのは【アグネスワールド】。勝ちタイム1分9秒8でのレコード勝ちで、後に「全日本3歳優駿」と「アベイ・ド・ロンシャン賞」と「ジュライC」を制しています。

平成の後半にかけてもトレンドは変わらず、後のGI馬が惜敗しています。有名どころを纏めると、

  • 2006年:2着・ローレルゲレイロ(5歳時にGI2勝)
  • 2011年:2着・アイムユアーズ(牝馬重賞を4勝)
  • 2012年:4着・ロゴタイプ(4連勝で朝日杯と皐月賞を制覇)

こういった馬が10年ほど前までは掲示板に名を連ねる年もありました。一方で、1985年からの30年間(1985~2014年)で1番人気は僅か3勝(勝率10%)となっていました。

そして見逃せないのが勝ち馬のその後の不振です。平成21年以降、「函館2歳S」以降重賞を勝てない馬が大半となってしまい、勝てても重賞を勝った馬は片手で数える程度となってしまいました。令和に入ってからは【ビアンフェ】が重賞2勝しましたが、むしろ例外といった部類です。

レースR勝ち馬
2016104.00レヴァンテライオン
2017102.50カシアス
2018104.25アスターペガサス
2019105.50ビアンフェ
2020106.00リンゴアメ
2021102.50ナムラリコリス
2022

開催時期を考えれば善戦していると言えるのかも知れませんが、それでも「102.50ポンド」の年が2度あるなど、2歳戦の中でもレーティングの平均値は低いと言わざるを得ません。

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しかし見方を変えれば、この舞台(7月中旬の函館1200m)にピークというか全力を傾けられる充実度(早熟、成熟度)を見せられる馬が、後の重賞馬を退けることができる場面設定なのかも知れません。そういった目線で今年のレースを予想してみるのも悪くないかも知れません。

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