競馬歳時記【10月2週】「サウジアラビアロイヤルC」

【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「サウジアラビアロイヤルカップ」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。

サウジアラビアロイヤルカップは、日本中央競馬会(JRA)が東京競馬場で施行する中央競馬重賞競走GIII)である。

前身となる「いちょうステークス」は1984年より東京競馬場の芝1600mで3歳(現2歳)オープンの特別競走として行われ、2012年と2013年は距離を1800mに延長。2014年から距離を再び1600mに戻したうえで、重賞に格上げされた。

2歳マイル路線のさらなる充実、およびローテーションを整備する観点から2014年に「いちょうステークス」の名称で新設された重賞競走。初年度は国際グレード制に基づく格付けが行われず、格付表記は「新設重賞」とされた。
2015年に日本とサウジアラビア王国の外交関係樹立60周年を記念して「サウジアラビアロイヤルカップ」に改称され、格付表記も「重賞」とされた。なお、開催回次はいちょうステークスから引き継がれず、2015年は改めて「第1回」とされた。2016年よりGIIIに新規格付される。

サウジアラビアロイヤルカップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ここから、「サウジアラビアロイヤルカップ」の前身と見做せる競走から歴史を振り返っていきます。

前身①:サウジアラビアロイヤルCを冠したレースたち

そもそも「サウジアラビアロイヤルC」という名称は、1999年には重賞競走の副題のような形で番組表に登場していました。特定のレースに紐づいていた訳ではなく、様々なオープンクラスのレースに付与されるものだった時代が四半世紀近くあったのです。

( 同上 )

1999年に創設された「東京ハイジャンプ(障害重賞)」を皮切りに、2003年からの4年間はダートの古馬オープン戦として開催されていましたし、それ以降は「富士S」に冠されていた記憶があります。

今でこそ「サウジC」などで世界に注目される競馬成熟国ですが、厳格なイスラム教国であったこともあったサウジアラビアが一介の「パート3国」だった時代から開催歴がありました。

前身②:オープン特別「いちょうS」

重賞格付けのために抜擢されたもう一つの前身競走というのが、オープン特別として既に長い歴史のあった「いちょうS(旧・いちょう特別)」でした。

  • 1968年 – 3歳馬限定の条件特別戦「いちょう特別」として創設。
  • 1984年 – 3歳馬によるオープン特別「いちょう特別」として開催。
  • 1988年 – 「いちょうステークス」と改称。
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条件戦時代の最後(1983年)に優勝したのが、のちの三冠馬【シンボリルドルフ】です。当時は東京のマイル戦でしたが、それ以前は開催場も開催距離もバラバラでした。

1983年7月23日新潟競馬新馬戦でデビューし、優勝した。このときのレースぶりについて岡部は「1000メートルで1600メートルの競馬を覚えさせた」と述べた。

新馬戦のあとシンボリ牧場で調整されたシンボリルドルフは10月上旬に美浦トレーニングセンターへ戻り、10月29日いちょう特別(現・サウジアラビアロイヤルカップ)を優勝した。野平はこのときの岡部の騎乗を見て「1600メートルのレースで2400メートルの競馬をした」と語っている。

3走目には朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)ではなく11月27日の一般オープン競走が選択され、優勝した。

シンボリルドルフ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

1984年にオープン特別に昇格すると、1986年には日本ダービー馬の【メリーナイス】を輩出。次走の「朝日杯3歳S」へ連勝を果たしています。1988年に「いちょう特別」から「いちょうS」に改名すると、1990年代には現3歳以降にも活躍する(特に牝馬が)複数誕生しています。

1991年10月27日サンエイサンキュー牝21:38.7
1992年11月1日ライブハウス牝21:34.9
1993年10月31日トラストカンカン牡21:35.4
1994年10月30日ヤマニンパラダイス牝21:34.7
1995年10月29日エアグルーヴ牝21:35.8
1996年10月27日メジロドーベル牝21:35.0

そして、2012年に1800mへと距離延長され、2013年には久々のクラシックホースである【イスラボニータ】を輩出して、その翌年に重賞昇格。2014年にはマイルに戻されて【クラリティスカイ】が優勝。翌年のNHKマイルCで「クロフネ」との父子制覇を達成するという実績をいきなり叩き出します。

2015年~:重賞昇格

  • 2014年 – 重賞(新設重賞)に格上げ。
  • 2015年
    • 名称を「サウジアラビアロイヤルカップ」に変更。
    • 格付表記を「重賞」に変更。
  • 2016年 – GIIIに新規格付。
  • 2020年 – 正賞がリヤド馬事クラブ賞からサウジアラビアジョッキークラブ賞に変更となる。
回数施行日優勝馬性齢タイム
第1回2015年10月10日ブレイブスマッシュ牡21:34.2
第2回2016年10月8日ブレスジャーニー牡21:34.5
第3回2017年10月7日ダノンプレミアム牡21:33.0
第4回2018年10月6日グランアレグリア牝21:34.0
第5回2019年10月5日サリオス牡21:32.7
第6回2020年10月10日ステラヴェローチェ牡21:39.6
第7回2021年10月9日コマンドライン牡21:36.4

格付け上は「GIII」ながら、歴代勝ち馬を見ると、マイルから中距離での活躍が期待される馬が名を連ねており、東京マイルということで2010年代の新設重賞としては屈指の実績を残しています。

2018年のフルゲートを除き、平均出走頭数が1桁となる中で、これだけの馬が人気に応えて優勝しているという時点で、コース設定含め将来性が期待されるレースといえるでしょう。

レースR勝ち馬
2016103.00ブレスジャーニー
2017108.75ダノンプレミアム
2018104.50グランアレグリア
2019105.50サリオス
2020104.50ステラヴェローチェ
2021108.75コマンドライン
2022

2017年は2着にステルヴィオ、2021年は2着にステルナティーナが入った年ですが、レースレーティングが108.75となっています。これは「2歳GIIの目安:105ポンド」を優に上回り、もはや「2歳GIの目安:110ポンド」にすら迫る値です。

2020年はステラヴェローチェが勝ったものの、105ポンドには達さず、GII昇格とはなっていませんが、2020年代の段階でGII昇格も可能性として十分にあると思います。

何よりも勝ち馬の名前を見れば、シンボリルドルフまで遡るまでもなく、G1馬が何頭もいるのですし、東京マイルを2歳秋の段階で戦えるメリットは大きいと思います。このレースが出世レースとなって、新たなG1馬の重賞初制覇の場となることを期待したい楽しみな競走といえるでしょう。

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