【はじめに】
この記事では、毎年2月22日が「猫の日」であり、『猫』を含んだ季語が春に多いことなどから、「プレバト!!」の俳句査定で披露された俳句の中から『猫』を詠んだ俳句を振り返っていきます。
「猫」を含んだ季語を詠んだ俳句
まず「猫」を含んだ俳句のうち、「『猫』を含んだ季語」で詠んだ作品を先に纏めてご紹介します。
なお「プレバト!!」には登場していない季語も多くあります。手元の歳時記から簡単に列挙しますと、
などが目につきました。身近な動物である「猫」を何らかの由来で冠した季語は結構あるようです。
もちろん、実際の動物の「猫」に由来する季語も幾つかありますので、「プレバト!!」の発表例から、探っていくことといたしましょう。
まずは「こたつ猫」です。俳句歳時記を引くと暖房器具の種類によって「竈猫」や「灰猫」などの種類もあります。この句の「こたつ猫」は現代の暖房事情ともマッチして、情景が浮かびやすく感じます。
そして、冬をこえて春を迎えると「猫」に関する季語で有名なものが登場してきます。まず『猫の恋』です。
俳句歳時記を引くと、語順を逆にした『恋猫』であったり、『猫さかる』、『浮かれ猫』などといった多くの傍題が出てきます。いわゆる発情期を迎えた猫たちの『鳴き声』に初春を感じるといった具合。
松岡さんの句はストレートに嬌声と表現している一方で、キスマイ宮田さんは『聴覚』の情報を敢えて抑えることで季語を際立たせる一枚上の技に挑戦しています。
そして、約2ヶ月の在胎期間を経た晩春の季語として、『猫の子』があり、そこに至る過程で『孕猫』というものも季語となっています。
中八を解消する添削はありましたが、季語『孕猫』を使った情景は問題なく才能アリ査定となっていました。
そして、季語として認識していない方も多いので、ぜひご存知でなかった方は今回この記事で覚えていただきたいのですが、『子猫』や『仔猫』といったものも春の季語となっています。
上の句は夏井先生が深く詠んで『才能アリ』と評価しましたが、選句に時間を掛けてもらえない時だと『扇風機(夏)』と『仔猫(春)』という異なる季節の季語が混在していると見做されても文句は言えません。しょこたんのネコ愛で才能アリを獲得しましたが、くれぐれもご注意を。(特に愛猫家の貴方)
「猫」を別の季語と取り合わせた俳句
「猫」で才能アリ3度の【中川翔子(しょこたん)】
以上のように幾つか季語としての「猫」もありますが、やはり『猫』という存在を、別の季語と取り合わあせて作る作品の方が遥かに多いです。上で句を紹介した【中川翔子(しょこたん)】さんは、大の愛猫家であり、夏井先生からは『猫の句を書かせたら、うまい』と評価されています。
2021年現在、中川さんが才能アリを獲得した3回は全て「猫」が含まれた俳句です。
1句目は比喩として登場しているので「猫」の句というより『すすき』が主題ですが、『飼い猫の背中のような』という直喩で17音のうち12音使っている点も非常に大胆です。
そして2句目は72点と、この回で特待生昇格を決めた【パックン】を上回る高得点で1位になった作品です。『梅雨の音/猫が眺める洗濯機』と、こちらも大胆かつ常人には描けない叙述です。単純でない非常に複雑な取り合わせが見事でした(3句目は上で軽く触れたとおりです)。
ただその一方で、愛猫家の方の傾向として、『猫』に力を注ぎすぎて17音の全てを『猫』への描写に捧げてしまった結果、『有季定型俳句』なのに「季語が弱い」という損な構図になることも珍しくありませんので、十分に注意する必要があると思います。
ちなみに、猫の俳句を極めたいという方は、複数回の実績があるコンクール『猫俳句大賞』を巡ってみると宜しいかと思います。過去の受賞作などを通じて、どのように『猫』と『季語』の両方を立たせるのか勉強なさってみてください。
リンク : https://nekohaiku.com/
『手袋を外し』て猫を詠んだ北山さん(特待生昇格の句)
Kis-My-Ft2の北山さんは、才能アリ・凡人・才能ナシをほぼ均等に重ね、18回目の挑戦で悲願の特待生昇格を果たしました。初挑戦から約4年となる2018年11月に詠んだのが、こちらの作品でした。
主役とするはずの冬の季語「手袋」をいきなり『外して』と展開する意外性から始まり、下五で「猫の喉」とポイントを絞って着地する。『ねこ好き』のあるあるを見事に描写したと夏井先生も語っていましたが、千賀さんが初優勝した時の句と同様、一語ごとに大胆に展開するのが魅力的な作品でした。2020年に発表された「歴代俳句ベスト50」にランクインされるのも理解できますね。
ちなみに、ジャニーズ所属で最初期の才能アリだったのが、Sexy Zoneの【中島健人】さんでした。
添削は助詞の1字であり、高レベルな内容での才能アリだったと思います。難しい言葉は一つも使われていないのに、着眼点も良く奥行きがあり、助詞の添削の効果も実感できて素晴らしく思います。
永世名人たちのかつての「猫」俳句
そして、現在は「永世名人」となっているプレバト!! 俳人も、過去に「猫」俳句を披露しています。
最初に、東国原英夫さんが特待生4級から3級に昇格した時の作品をご紹介します。こちらでした。
中七を聴覚/視覚的にメリハリを付ける添削がなされましたが、『蜥蜴』という夏の季語と『老いた猫』という2種類の動物を両立させたこの句は、とても特待生4級とは思えないようなクオリティですね。
そして、初挑戦から約半年というタイミングで、特待生1級への昇格を決めた【村上健志】さんの作品も、まさに“スーパールーキー”時代の実直な作品として印象的です。
村上さんが初期に得意としていた“あるある”系の俳句です。「うららか」は春の漠然とした時候の季語であり、それに「からっぽ」という文字通り空虚な単語を続けることは17音という俳句の器においては結構な挑戦だと思うのですが、
5・5・7の破調のリズムに「校庭の猫」と焦点をグーッと絞るような形は、こちらも特待生とは思えないフレームワークの作品といえるでしょう。
そして、中川翔子さんなどと並び、多くの「猫」俳句を詠んでいるのが、実は千原ジュニア名人です。
3句とも季節も違うのですが、特に高評価だったのは2020年の炎帝戦の予選を1位通過した『夏見舞』の句でしょう。どこか「夏見舞」というと人間に来るものだと錯覚してしまいますが、飼っていた猫の名前があると、切なくてどこか懐かしくもあるような複雑な感情を抱くのは想像に難くありません。
愛猫家の方は特にそうですが、ついつい『飼い猫が可愛い』俳句を作りがちになろうかとは思います。これは、『孫』俳句などと言われるものと似て、作りやすい反面、高評価を得る独自性を確保するのが難しい点で実は難易度が高いテーマだということを最後に押さえておきましょう。
仮に有季定型俳句であるならば、「猫」と同等かそれ以上に「季語」を立たせなければ、『ペット自慢のブログ記事』で構わないことになってしまいます。「季語」に「猫」を投影させることによって両者の相乗効果が引き立つことを目指す道にこそ、道は開けるのだと信じています。
俳句にするかはさておき、貴方の「猫」自慢であったり、「猫」を飼っていない方も上の記事の中でどの句が好きだったかぜひコメント欄にお寄せ下さい。最後までお読み頂きありがとうございました! ではまたっ!
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