全国の気象官署で「猛暑日」を記録したことのない地点をまとめてみた【あるのか!?】

【はじめに】
この記事では、全国の気象官署(旧・測候所など)のうち、「猛暑日」を記録したことのない地点についてまとめていきます。「猛暑日」といえば最高気温35℃以上の日を指しますが、もはや当たり前のように毎年記録される数値という印象の方が強いと思います。

ひと夏どころか数十年または百年以上の観測歴がある気象官署の中で、「猛暑日」を記録したことのない地点なんて存在するのでしょうか? ……実は、結構あるんです。今回はそんなお話しです。

北海道地方:浦河・31.2℃ほか

まずは、本丸「北海道」を巡っていきます。近年は初夏から真夏の暑さを迎えることも珍しくなくなった北海道。令和元年5月には、5月として全国で最も高い気温(39.5℃)を記録するなど、やはり猛暑は避けられない状況となってきています。

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しかし、盆地や都市部などと異なり、地点によってはまだ「猛暑日」を経験したことのない地点があるため、見つかる限りで列挙してみました。下の表のとおりです。

地点名標 高日付
稚内2.8m32.72021/07/29
羽幌7.9m34.42021/08/01
根室25.2m34.02019/05/26
釧路4.5m33.52022/07/31
浦河36.7m31.21989/08/06
室蘭39.9m32.81929/08/08
倶知安176.1m34.42021/08/06
寿都33.4m34.01904/08/20
江差3.7m34.41999/08/04

北海道の中でも、端に近いエリア(例えば道北の稚内・羽幌や、道東の根室・釧路、日本海側の寿都・江差など)は、海抜が高くない観測点でも猛暑日を経験していません。

ちなみにデータを細かく見ると、浦河が平成元年、室蘭が昭和4年、寿都に至っては明治37年といった具合に、時代を超えて最高気温の記録が打ち立てられている地点も見受けられます。北海道の観測の歴史の長さを感じると共に、極値というのはこういうところに面白さがありますね。

一方、観測歴では全国トップを誇る「函館」の観測点に関しては、つい先日、ビッグ(?)ニュースがありました。「函館」の1872年の観測開始以来初めて「猛暑日」を記録したのです。

  • 1876/07/29:33.6℃
  • 1999/08/04:33.6℃
  • 2021/08/07:33.9℃
  • 2023/08/10:35.4℃

明治41年に33.6℃を観測して以来、基本的に33℃台までしか観測されてこなかった「函館」で、34℃台も飛び越えていきなり猛暑日を観測したのが2023年8月10日のことでした。数値だけを見ると、涼しく感じてしまいますが、本州におけるいきなり40℃ぐらいのインパクトのある数字かと思います。

上の表が更新されてしまわないように願うばかりですが、やはりこの猛暑の傾向というのは基本的に不可逆なもので、北海道でも猛暑日未経験の地点が今後も減っていくものと予見されます。

北海道以外の観測点:特徴はざっくり2つ!

北海道以外に「猛暑日」を観測したことのない地点なんてあるのか? 実はそれなりにあるんですよ。北海道の観測点をみるだけでも、「猛暑日」を観測したことのない地点の特徴が窺えます。ずばり、

  • 標高の高い山地などでの観測
  • 浜風が強い海沿いなどでの観測

この2点に集約できそうなのです。具体的に見ていきましょう。

(1)標高の高い山地など

これは少しズルに思われちゃうかも知れませんが、標高がそれなりに高ければ、当然「猛暑日」を観測するはずはありません。極端な例をあげてしまえば「富士山」山頂となるわけですが、そこまででなくても、以下のように結構あります。

県名地点標 高 日付備考
静岡県富士山3775.1℃17.8℃1942/08/13
徳島県剣山1994.8m26.6℃1951/07/27※2001/03まで
滋賀県伊吹山1375.8m29.2℃1994/08/08※2001/03まで
栃木県奥日光1291.9m30.8℃2018/08/05
熊本県阿蘇山1142.3m29.8℃2016/08/11※2017/12まで
長野県軽井沢999.1m34.2℃1946/07/16
長崎県雲仙岳677.5m33.2℃2017/08/02

1000m以上の地点ともなれば真夏日すらない地点があるようです(表では21世紀まで観測されていた旧測候所などを加えています)。

なお、「100mで0.6℃」という一般則を上の表に当てはめますと、富士山:40.4℃、軽井沢:40.2℃など炎暑に至るケースも出てきます。避暑地のイメージが強い軽井沢は1000mに近い標高を持つ観測点ですが、そこで34℃というのは(終戦翌年、)相当な暑さだったことが窺えます。

(2)浜風が強い海沿いなど

そして、標高が比較的低いところでの事例は全て「浜風が強そうな海沿い」という共通項があります。

県名地点名標 高日付備考
千葉県勝浦11.9m34.9℃1924/08/23
東京都三宅島38.2m32.8℃2020/08/15
八丈島151.2m34.8℃1942/08/02
父島2.7m34.1℃2006/07/30
静岡県石廊崎52.2m33.9℃2004/07/20
鹿児島県沖永良部26.8m34.9℃1980/07/31

上に示したのが現在も観測している気象官署での一覧です。離島が4地点、本州での観測点でも何とか2地点認められました。沖永良部島で実は猛暑日を観測したことがないのは意外でしたが、伊豆・小笠原諸島に関しても寧ろ伊豆大島のように本州に近い地点よりそこから離れた方が夏の観測史上最高気温が下がるというのは改めて数値として見ると面白い発見でした。

本州に関しては、関東平野一帯が猛暑の紫色レーダーに「勝浦」だけが真夏日にもなっていないといった具合に遥かに低い温度になっている日が何度かあり、SNS上でも話題になっていました。確かにデータを見てみると、1924年(大正年間)を最高として昭和以降も一度も猛暑日を記録していません。海のレジャーのイメージも強い房総半島南東「勝浦」の涼しさは今回のデータからも明らかとなりました。

そして、本州全体に目を広げると、その「勝浦」よりも最高気温が低いのが、静岡県の「石廊崎(いろうざき)」という地点です。県民以外には馴染みが薄いかも知れませんが、伊豆半島の南端・南伊豆町にあって、駿河湾の東端ともいえる位置です。

伊豆半島の地形の関係もあって標高が52mありますが、それでも33.9℃というのは全国的にみても平地では非常に低い気温帯だと感じます。勝浦のような海のレジャーに適しているかはさておき、こういった地点があることは興味深いですね。

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