【はじめに】
この記事では、気象官署「浦河(浦河町潮見:浦河特別地域気象観測所)」で観測された過去の強烈な揺れをまとめていきます。
気象官署「浦河」について
浦河町内の震度観測点については、気象庁のホームページによると、
日高地方東部 | 浦河町潮見(旧) | 浦河郡浦河町潮見町42 (浦河測候所) | 42 | 9.7 | 142 | 46.6 | 1927 |
日高地方東部 | 浦河町潮見 | 浦河郡浦河町潮見町42-6 (浦河特別地域気象観測所) | 42 | 9.7 | 142 | 46.6 | 200910011300 |
浦河測候所(1927~2009) → 浦河特別地域気象観測所(2009)という変遷を辿る「浦河町潮見」が100年近い歴史を持つ震度観測点となります。これをこの記事では、気象官署「浦河」として説明していきます。
「浦河」は「えりも町(襟裳岬)」の北西の海岸沿いにあり、千島海溝・日本海溝沿い地震の前線観測点として100年近い歴史があります。早速みていきましょう。
10年で400~500回の有感地震
再び気象庁の「震度データベース」で、10年ごとの震度の分布をみていくことにしましょう。
期間 | 震度1 | 震度2 | 震度3 | 震度4 | 5弱 | 5強 | 6弱 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1920年代 | 57 | 12 | 2 | 71 | ||||
1930年代 | 342 | 76 | 15 | 3 | 1 | 437 | ||
1940年代 | 179 | 80 | 37 | 4 | 300 | |||
1950年代 | 242 | 121 | 33 | 4 | 1 | 401 | ||
1960年代 | 296 | 129 | 51 | 6 | 3 | 485 | ||
1970年代 | 259 | 121 | 49 | 9 | 3 | 441 | ||
1980年代 | 299 | 129 | 59 | 10 | 1 | 1 | 499 | |
1990年代 | 270 | 134 | 40 | 6 | 3 | 453 | ||
2000年代 | 319 | 130 | 55 | 10 | 2 | 516 | ||
2010年代 | 343 | 96 | 33 | 15 | 3 | 490 | ||
合計 | 2,606 | 1,028 | 374 | 67 | 15 | 0 | 3 | 4,093 |
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 2019/12/31 23:59
・観測された震度 : 浦河町潮見(旧) もしくは 浦河町潮見 で 震度1以上 を観測
・地震回数の集計 : 年代別回数
これを見ると、1930年代以降は、10年代ごとに「300~500回台」の地震が観測され続けていることが分かります。これは全国的にみても非常に多くハイアベレージで、単純に割れば、週に1回は有感地震が起きている計算になりますかね。
しかも、2022年3月時点で、震度3以上が380回以上、震度4以上が80回以上と、こちらも頻度は相当高いと思います。では、そのうちの具体例を見ていきましょう。
「浦河」での烈震(震度6クラス)は過去3回
気象官署での最大震度は「震度6(烈震)」です。以下に表形式で貼らせていただきました。
地震の発生日時 | 震央地名 | 深さ | M | 最大震度 | 「浦河」 |
---|---|---|---|---|---|
1982/03/21 11:32:05.7 | 浦河沖 | 40 km | 7.1 | 震度6 | 震度6 |
2003/09/26 04:50:07.4 | 十勝沖 | 45 km | 8.0 | 震度6弱 | 震度6弱 |
2003/09/26 06:08:01.8 | 十勝沖 | 21 km | 7.1 | 震度6弱 | 震度6弱 |
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 2019/12/31 23:59
・観測された震度 : 浦河町潮見(旧) もしくは 浦河町潮見 で 震度6弱以上 を観測
1回目:1982年「浦河沖地震」
公式記録の1例目は、1982年3月21日に起きた「浦河沖地震」です。深さ40km、Mj7.1という大地震で、80cmの津波も観測されています。
M7クラスとはいえ海域で起きた地震ということもあり、被害自体は浦河町付近の局所的なものだったと言います。故に「浦河沖地震」というネーミングだったのかも知れません。
今から40年前の地震ということで顧みられることは少ないですが、当時の被害状況をみるとかなり激烈なものだったと感じます。頻繁に地震を感じている気象官署「浦河」でも、これは流石に最高震度の「烈震(震度6)」と認めざるを得なかったことが想像できます。
2回目:2003年「十勝沖地震(本震)」
公式の2・3例目は2003年の「十勝沖地震」です。本震はMj8.0(Mw8.3)という巨大地震でした。
午前4時50分という明け方に起きた地震は、気象庁の観測で「震度6弱」が最高だったとはいえ、その観測した市町村は震源域に沿った広範囲に跨りました。
3回目:2003年「十勝沖地震(余震)」
その本震の約1時間後の午前6時8分には、最大余震(M7.1)が発生。この地震は、震央が本震震源域よりも西側に位置していたと見られ、北海道で唯一「浦河」のみが「震度6弱」に達しました。
これ実は、気象庁の「強震観測データ」を引用しますと、意外な事実が分かります。
各要素 | 04:50 Mj8.0 | 06:08 Mj7.1 |
---|---|---|
計測震度 | 5.6 | 5.8 |
3成分合成 | 368.0gal | 507.7gal |
(南北) | 247.7gal | 235.1gal |
(東西) | 348.9gal | 493.1gal |
(上下) | 98.0gal | 76.7gal |
マグニチュードは約1違いますが、南北・上下方向の最大加速度に極端な差はなく、さらに「東西」と「3成分合成」は、本震を上回る値を観測しているのです。細かい部分を無視した乱暴な言い方になるかも知れませんが、浦河の方は「余震の方が強く揺れた」と感じたかも知れません。
気象庁が近年、大地震の後の記者会見で毎回似た文言で注意喚起をしますが、こういった事例がある事を知っておくだけでも、災害への備えの理解が深まると思います。
「浦河」での強震(震度5クラス)は15回
続いて、「強震(震度5弱以上)」についてもリストアップしましょう。震度6弱以上を除くと、全部で15回となります。一覧がこちらの画像です。
地震の発生日時 | 震央地名 | 深さ | M | 最大震度 | 検索対象最大震度 |
---|---|---|---|---|---|
1932/11/26 13:23:59.7 | 日高地方中部 | 66 km | 6.9 | 震度5 | 震度5 |
1952/03/04 10:22:43.5 | 十勝沖 | 54 km | 8.2 | 震度5 | 震度5 |
1968/05/16 09:48:54.5 | 青森県東方沖 | 0 km | 7.9 | 震度5 | 震度5 |
1968/05/16 19:39:01.9 | 青森県東方沖 | 8 km | 7.5 | 震度5 | 震度5 |
1968/09/21 22:06:01.7 | 浦河沖 | 54 km | 6.8 | 震度5 | 震度5 |
1970/01/21 02:33:04.3 | 十勝地方南部 | 55 km | 6.7 | 震度5 | 震度5 |
1971/08/02 16:24:56.8 | 十勝沖 | 54 km | 7.0 | 震度5 | 震度5 |
1974/11/09 06:23:21.9 | 苫小牧沖 | 136 km | 6.3 | 震度5 | 震度5 |
1981/01/23 13:58:30.7 | 浦河沖 | 130 km | 6.9 | 震度5 | 震度5 |
1993/01/15 20:06:07.2 | 釧路沖 | 101 km | 7.5 | 震度6 | 震度5 |
1994/10/04 22:22:56.9 | 北海道東方沖 | 28 km | 8.2 | 震度6 | 震度5 |
1997/02/20 16:55:00.3 | 浦河沖 | 49 km | 5.9 | 震度5弱 | 震度5弱 |
2011/11/24 19:25:33.7 | 浦河沖 | 43 km | 6.2 | 震度5弱 | 震度5弱 |
2012/08/25 23:16:17.4 | 十勝地方南部 | 49 km | 6.1 | 震度5弱 | 震度5弱 |
2016/01/14 12:25:33.3 | 浦河沖 | 52 km | 6.7 | 震度5弱 | 震度5弱 |
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 2019/12/31 23:59
・観測された震度 : 浦河町潮見(旧) もしくは 浦河町潮見 で 震度5弱以上 を観測
1952年や1968年のいわゆる「十勝沖地震」や、1993年の釧路沖地震、1994年の北海道東方沖地震などでも観測された震度は「5(強震)」でした。しかし、こうしてみると、千島海溝から日本海溝へと湾曲している辺りで大地震が頻発しており、その度に強い揺れに襲われてきたことが再確認できます。
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