【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「毎日杯」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。
毎日杯(まいにちはい)は、日本中央競馬会(JRA)が阪神競馬場で施行する中央競馬の重賞競走(GIII)である。
寄贈賞を提供する毎日新聞社は、東京・名古屋・大阪・北九州に本社を置く新聞社。
毎日杯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
昭和時代:
1954~1970年:6月頃(日本ダービー後)の開催
「毎日杯」は創設から十数年間、今とは異なり初夏に開催されていました。具体的には、第2回が5月で、第3回が7月開催でしたが、それ以外は1970年まで6月開催であり、おおよそ「日本ダービー」後の関西の最終盤の現3歳重賞という位置づけでした。
特に1950年代には、関東で行われるクラシック路線(特に2冠目)で期待された結果を挙げられず、地元・関西に戻ってきた馬が出走するも、別定戦(初回はハンデ戦)ということで斤量が重たくなって、人気ほど走れないといった展開が続いていました。
対して、当時はクラシック競走に出走することが出来なかった外国産馬が勝った事例もあり、第2回の【ヤサカ】は、ニュージーランド産馬(いわゆる「豪サラ」の部類)で、誕生時期からして半年ほどの不利がある状態でありながら重賞勝利を収めています。
1960年代に入ると、牝馬・パスポートや、オンワードセカンド → アポオンワードの兄弟制覇、サトヒカル、ダテホーライなど重賞級の馬が勝つことも増えますし、年によっては関東の開催日程が大きく遅れたことで、実質的に「日本ダービー」の前哨戦的になる年もありました。
ただ、開催時期が6月後半ともなれば、梅雨入りをしていてもおかしくなく、1970年までの開催のうち「良馬場」で開催できたのは半数程度だったと聞きます。
1971~86年:3月上旬に移行
1971年に3月中旬、1972年に4月上旬と開催時期が皐月賞の前となり、1973年から1986年までは「3月上旬」の開催で定着します。開催地区からの数少ない重賞(G3)での前哨戦です。
第18回 | 1971年3月14日 | 1900m | ニホンピロムーテー | 1:57.8 |
第20回 | 1973年3月4日 | 2000m | ホウシュウエイト | 2:04.4 |
第24回 | 1977年3月6日 | 2000m | ハードバージ | 2:04.1 |
第26回 | 1979年3月4日 | 2000m | ハシハーミット | 2:02.3 |
第29回 | 1982年3月7日 | 2000m | エリモローラ | 2:02.8 |
第33回 | 1986年3月2日 | 2000m | フレッシュボイス | 2:02.9 |
上は、勝ち馬がウィキペディアで立項されている年に絞った表です。移設した初年度の1971年こそ菊花賞馬のニホンピロムーテーを輩出し、1973年にはホウシュウエイトが関西からハイセイコー・タケホープ世代を盛り上げましたが、なかなかこのレースを勝ってクラシックホース(特に春)を制する馬というのは誕生しませんでした。
1987年~:3月最終週の今の位置に
それが現在の3月最終週開催となったのは1987年のこと。かつての「東上最終便」の傾向が強まったのは特にこの昭和60年代以降かと思います。
そして、結果的に昭和最後の「毎日杯」となる1988年を制したのがいわずと知れた【オグリキャップ】でした。57kgを背負って2着とクビ差でしたが、ペガサスSに続く中央重賞2連勝、地方から通算10連勝として迎えた「毎日杯」をもって、その実力は本物であると注目されていきました。
(参考)1988年 毎日杯(GⅢ) | オグリキャップ | JRA公式
平成・令和時代:
1987~2006年:2000m時代
平成に入ってからもヒシマサルやタイキフォーチュンなど海外勢を含め、真の実力馬となることを期待される馬が勝ってきた「毎日杯」。平成10年代に入ると、今でもファンの多い馬が勝っています。
第46回 | 1999年3月28日 | テイエムオペラオー | 2:04.1 |
第47回 | 2000年3月25日 | シルヴァコクピット | 2:03.6 |
第48回 | 2001年3月24日 | クロフネ | 1:58.6 |
第49回 | 2002年3月23日 | チアズシュタルク | 2:02.2 |
第50回 | 2003年3月29日 | タカラシャーディー | 1:59.9 |
第51回 | 2004年3月27日 | キングカメハメハ | 2:01.2 |
第52回 | 2005年3月26日 | ローゼンクロイツ | 2:02.2 |
第53回 | 2006年3月25日 | アドマイヤメイン | 2:00.5 |
テイエムオペラオーは3連勝で重賞初制覇とし、その勢いで皐月賞を制しました。1999年のことです。
そして、2001年のクロフネは「NHKマイルC」を制して日本ダービーに挑み、秋にはダートでその強さを発揮しています。この馬にとっても重賞初制覇が「毎日杯」だったことは注目に値します。(「ラジオたんぱ杯3歳Sは、アグネスタキオンらに敗れて3着でしたよね)
2004年の【キングカメハメハ】も初の重賞制覇を決めた舞台であると共に「NHKマイルC」を経由して変則2冠を達成していました。
2007年~:1800mに短縮され現在の形に
2007年に1800mに短縮されると、「皐月賞」だけでなく「NHKマイルC」の両睨みできる距離設定となり、むしろ関東のG2に遠征するよりも地元で調整する栗東の陣営の安心感も増えてきた印象です。
短縮直後のG1馬をみても、いずれも東京での春のG1を制しており、しかもディープスカイとキズナは2400mの日本ダービーを制しています。距離を短縮したから中長距離との関連性が落ちるということもなく、しっかりとそのクオリティを維持しています。
ではここから、2017年以降のレースレーティングを併記した表をみていきましょう。
第64回 | 2017年3月25日 | 114.00 | アルアイン | 1:46.5 |
第65回 | 2018年3月24日 | 112.25 | ブラストワンピース | 1:46.5 |
第66回 | 2019年3月23日 | 110.00 | ランスオブプラーナ | 1:47.2 |
第67回 | 2020年3月28日 | 107.50 | サトノインプレッサ | 1:47.9 |
第68回 | 2021年3月27日 | 113.25 | シャフリヤール | 1:43.9 |
第69回 | 2022年3月26日 | 109.00 | ピースオブエイト | 1:47.5 |
第70回 | 2023年3月25日 | シーズンリッチ | 1:46.6 |
レーティングが「G2の平均値」に遜色ない値を取った年として、2017・2018・2021年とG1馬が勝った年が目立ちますが、これらを見てしまうと「G2のオフィシャルなトライアル」組を打ち負かすような存在として「毎日杯」の注目度は平成から令和にかけて高い状態を維持していることが窺えます。
優先出走権を付与しづらい関係もあって、レーティングの基準を単純に満たしても「G2格上げ」が本格化してきていないのは残念ですが、並の3歳重賞よりも注目すべき一戦だという捉え方を私はしつつ、楽しみにしていきたいと思っています。
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