【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「シリウスS」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。
シリウスステークスは、日本中央競馬会 (JRA) が阪神競馬場で施行する中央競馬の重賞競走(GIII)である。
競走名の「シリウス(Sirius)」は、おおいぬ座のアルファ星。地球から見える恒星(太陽を除く)では最も明るく、鋭く輝くことから西洋では犬の目に例えられ、中国でも「天狼星」と称される。
シリウスステークス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1990年代:冬の一等星だけに11~12月に開催
1990~96年:中京の芝1200m・オープン特別 時代
現在と全く条件が異なりますが、平成2年(1990年)から数年間、「シリウスステークス」という名称のオープン特別が開催されていました。条件としては、中京競馬場の芝1200mのオープン特別でして、ダート中距離重賞の印象が強い今とは共通点が全くないようにすら感じます。
そして、実はこの「シリウスS」という名称に関して重要なのが開催時期です。オープン特別時代のうち1991~95年に関しては、いわゆる「ジャパンC」当日のローカル・メイン競走の扱いとなっていたのがこの「シリウスS」だったのです。つまり11月最終週が定位置でした。
シリウス(Sirius)は、おおいぬ座で最も明るい恒星で、全天21の1等星の1つで、太陽を除けば地球上から見える最も明るい恒星である。……オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオンともに、冬の大三角を形成している。冬のダイヤモンドを形成する恒星の1つでもある。
シリウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
素朴な疑問として、一般に「シリウス」といえば『冬』を代表する恒星のイメージがあります。なのに中央競馬では、冬の大三角に数えられる恒星を冠した重賞は、現在はどちら(プロキオンSとシリウスSのこと)も冬以外の季節に開催されているのです。ひょっとすると天文好きの競馬初心者は疑問に思うかも知れません。
これには、当初はちゃんと冬に開催していたが、主催者側の都合で時期が変わってしまい、それなのに冬の恒星の名をそのまま残したために季節感と齟齬が生じている……というのが有り体に言っての答えではないかと思います。「プロキオンS」は以前から冬というより春の開催だった時点で、JRAはそこまで時期を重視していなかった疑惑がありますが(^^;
施行日 | 競馬場 | 距離 | 条件 | 優勝馬 | 性齢 |
---|---|---|---|---|---|
1990年12月2日 | 中京 | 芝1200m | オープン | ホリノウイナー | 牡3 |
1991年11月24日 | 中京 | 芝1200m | オープン | ミナモトジュニアス | 牝4 |
1992年11月29日 | 中京 | 芝1200m | オープン | サムソンクイーン | 牝5 |
1993年11月28日 | 中京 | 芝1200m | オープン | ユウキトップラン | 牡5 |
1994年11月27日 | 中京 | 芝1200m | オープン | エイシンワシントン | 牡3 |
1995年11月26日 | 中京 | 芝1200m | オープン | ニホンピロスタディ | 牡3 |
1996年12月21日 | 阪神 | 芝1200m | オープン | ニシノファイナル | 牝3 |
オープン特別時代は、初冬の時期に開催され、年末のG1・スプリンターズSの実質的にトライアル的な存在のレースでもありました。
最も象徴的なのが米国産馬【エイシンワシントン】で、重賞馬ということもあり単勝1.0倍に支持され、しかも短距離レースで6馬身差をつけるという衝撃的な結果を残しています。年末のスプリンターズSはサクラバクシンオーの4着と敗れ、2年後にはフラワーパークと1cmのハナ差に敗れての2着となるなどG1には手が届きませんでしたが、強いインパクトとスタートダッシュの印象を残した馬です。
オープン特別時代の最終となる1996年度は阪神競馬場の年末に開催され、それが翌1997年の重賞昇格時にも影響を及ぼしたものと思われますね。
1997~2000年:12月・阪神ダート1400m G3時代
1995年までの実績を考えると、時期(11→12月)、競馬場(中京→阪神)、コース(芝→ダート)、距離(1200m→1400m)の全てが変わってしまい、レース名だけを継承した感のある「シリウスS」。
しかしダート路線の拡充という意味では、当時唯一の中央ダートG1だった「フェブラリーS」の2ヶ月前に設置され、将来を期待を寄せられての重賞昇格だったのだと想像できます。
1999年(第3回)には、現3歳牝馬【ゴールドティアラ】が54kgという実質的にはトップハンデ級のハンデを背負いながら1番人気に応えています。秋開催のユニコーンSで宇都宮のベラミロードを2馬身半差をつけて重賞初制覇を果たし、2度目の牡馬相手の重賞として挑んだシリウスSを制したゴールドティアラは、翌年「南部杯(G1)」を制することに繋がりました。
2000年代:距離が伸びて中距離戦に
「シリウスS」は、21世紀に入って2つの大きな条件変更を迎えます。1つ目が2001年の開催時期の変更で、初冬から秋競馬の前半(JBCシリーズの前哨戦)に移りました。
そして、2006・07年にかけて、短距離から中距離へとシフトしていき、阪神ダート1800mで開催されることとなった「ジャパンCダート(→ 現・チャンピオンズC)」の前哨戦としての位置づけとなっていきます。
回数 | 施行日 | 競馬場 | 距離 | 優勝馬 | 性齢 | タイム |
---|---|---|---|---|---|---|
第4回 | 2000年12月9日 | 阪神 | 1400m | マイネルブライアン | 牡3 | 1:23.3 |
第5回 | 2001年9月29日 | 阪神 | 1400m | ブロードアピール | 牝7 | 1:23.7 |
第6回 | 2002年9月29日 | 阪神 | 1400m | スターリングローズ | 牡5 | 1:22.4 |
第7回 | 2003年10月5日 | 阪神 | 1400m | マイネルセレクト | 牡4 | 1:23.1 |
第8回 | 2004年10月3日 | 阪神 | 1400m | アグネスウイング | 牡4 | 1:23.1 |
第9回 | 2005年10月2日 | 阪神 | 1400m | ブルーコンコルド | 牡5 | 1:23.9 |
第10回 | 2006年9月30日 | 中京 | 1700m | メイショウバトラー | 牝6 | 1:43.1 |
第11回 | 2007年9月29日 | 阪神 | 2000m | ドラゴンファイヤー | 牡3 | 2:05.1 |
第12回 | 2008年10月4日 | 阪神 | 2000m | マイネルアワグラス | 牡4 | 2:03.8 |
第13回 | 2009年10月3日 | 阪神 | 2000m | ワンダーアキュート | 牡3 | 2:04.5 |
歴代の勝ち馬を見ても、G1級の馬が名を連ねています。G1路線を盛り上げた名馬を取り上げますと、
2010~20年代:G1級勝つ年もあるがレート下降中
歴代の勝ち馬だけを見れば、時にG1級の馬が勝つ年もあるので、一定の水準を維持している印象です。
- 2011年
第15回中日新聞杯・札幌記念(芝重賞)に次ぐ2年ぶりの重賞制覇はダートの「シリウスS」。これによって芝・ダート両重賞制覇の記録達成。
- 2015年
第19回ジャングルポケットとヘヴンリーロマンスの仔。準オープンを勝って、ここでも3馬身差の圧勝。ここから重賞5連勝で「JBCクラシック」を制覇。
- 2018年
第22回ジャパンダートダービー2着からの秋緒戦の「シリウスS」を制覇。3歳馬ながら年末の「東京大賞典」を制し、同レース4連覇に繋がっていく。
- 2020年
第24回中京1900m代替開催。3連勝でユニコーンSを制するもジャパンダートダービーは7着大敗。シリウスSを勝つもG1で勝てないレースが2度。年明けには「フェブラリーS」を勝ち、2022年にかけて連覇。
しかし、レースレーティングをみると、かなり値としては差が激しくなっています。表をご覧下さい。
年 | レースR | 勝ち馬 | 斤量 |
---|---|---|---|
2016 | 108.50 | マスクゾロ | 56kg |
2017 | 104.25 | メイショウスミトモ | 55kg |
2018 | 112.25 | オメガパフューム | 53kg |
2019 | 104.75 | ロードゴラッソ | 55kg |
2020 | 104.00 | カフェファラオ | 54kg |
2021 | 106.25 | サンライズホープ | 56kg |
2022 |
国際基準での「G2の目安:110ポンド」を上回る年(2018年=112.25ポンド)もありますが、基本的にはG3のハンデ戦ということを考えると一線級が挑戦することは稀です。結果的にG1馬がこのレースを使っていたケースはあっても、それが翌年以降だと反映されないため、カフェファラオが勝った2020年などはレースレーティングとしては「104.00」です。
国際的なボーダーとして「G3の目安:105ポンド」ということを考えると、国内ダート重賞のレートが低いことを考慮しても、厳しい状態が続いていることが窺えるでしょう。
優勝賞金に差は小さいものの、近い距離・日程のJpnIIとして「日本テレビ盃」がありますし、同じGIII格のJpnIII「白山大賞典」もあります。更に翌週には牝馬限定戦のJpnII「レディスプレリュード」が。更に距離が問題なければJpnI「南部杯」に挑む一流馬も多いでしょう。
そして最近は11月から来年春にかけてダートの主流と見做すと、秋競馬はJpn1を緒戦に選ぶ馬も増えてくるなどレーシングカレンダーにも時代の波が訪れ始めているかも知れませんね。
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