プレバト!! 春の俳句タイトル戦(俳桜戦→春光戦)の歴代優勝句

【はじめに】
この記事では、「プレバト!!」俳句査定の春のタイトル戦(俳桜戦 → 春光戦)の歴代優勝句を振り返りたいと思います。皆さんは、どの春の俳句が好きですか?

(↑)予選の「添削ナシ」の句をまとめた記事も2022年分まで更新しました。合わせてご覧ください。

2017/4/6:野良犬の吠える沼尻 花筏/東国原英夫

現行の年間スケジュールでは初のタイトル戦となった「第1回・俳桜はいおう戦」。当時はまだ名人初段だった東さんが初のタイトル戦王者となりました。

一般的なイメージで「桜」を描くと明るいイメージになりがちかと思いますが、初のタイトル戦を制したのは、不穏な雰囲気が漂う作品でした。句全体を読むと、「野良犬」も「吠える」も「沼尻」も「花筏」も全てが不穏に感じてきてしまいます。それを狙って出来ていることを夏井先生が評価しました。

仮にこれを、要素を同じままで、私が明るい感じの句(出来はさておき)に作り変えてしまうと、

(比較句)盲導犬うとうと小川の花筏/東国原英夫

こんな感じになりましょうか。私が作った比較句の方からは基本的に「不穏」な感じは受けないと思います。対して、東さんの句は、単語すべてが不穏さを引き出すためのアイテムになってます。

逆に、春の季語「花筏」自体には、本来、不穏な思いが無いはずなんですが、前の12音から漂う不穏な雰囲気を受けて、本来綺麗なはずの「花筏」を不穏なものにしてしまう力の凄みを感じました。

2018/4/12:花震ふ富士山火山性微動/東国原英夫

2017年の春・秋と制し、2018年の第2回「俳桜戦」で連覇となった東国原名人。1年で名人初段から6段まで大出世しています。

夏井先生の言葉を借りれば、「花(桜)」と「富士山/火山」は非常に取り合わせとして「ベタ」です。句の真ん中(花震ふ富士山)までは非常に“予定調和”な感じがしてしまいます。

しかしそこからの展開が見事でした。「火山性微動」という8音もの長さの言葉をどっしりと据えて、俳句の調べを整えることで、“凡そ詩になりにくい科学の言葉”を俳句にしてしまっているからです。

新語や流行語、長い言葉やカタカナ語を積極的に読み込みたくなる時期もあるのですが、こういう句をしっかりと不自然でない形で詠むのは、やってみると本当に難しく、単語一つ一つに思いを込めた東さんの思いを読み取った夏井先生も素晴らしい査定だったと感動したことを覚えています。

そしてこの句は、2020年6月に放送された「歴代俳句ベスト50」で、「天(最優秀句)」に選ばれた作品でもありました。(上のnoteの記事で、ベスト50の作品すべてを紹介しています。ぜひどうぞ)

2019/4/4:サイフォンに潰れる炎花の雨/村上健志

75→78点と2回の査定で特待生昇格、新春SPでは俳句査定史上初の2ランク昇格を果たした“スーパールーキー”の村上健志名人。タイトル戦初年度はややスランプでしたが、2年目(2018年度)に入るとタイトル戦でも成績が安定し始めます。

そうした中で、番組初挑戦から約2年半にして、初優勝を遂げたのが2019年・春のタイトル戦でした。ちなみにこの大会から、「桜」以外の兼題も出題されるようになり、タイトル名も「俳桜戦」から今の「春光戦」に変わっています。梅沢名人を隠すように両腕を広げて天を仰ぎ喜ぶ姿は印象的でした(^^

この句は村上さんの句柄を確立させた、真骨頂とも言える作品です。まず「(コーヒー)サイフォン」というアイテムに着目して上五に置き、ポイントとなるのが中七へと繋ぐ「潰れる」という動詞です。

この言葉遣いによって、(夏井先生のニュアンスを汲み取ると、)俳句を上から読んだ時に「0コンマ何秒、サイフォンに潰れる物って何? と脳を働かせる/巡らせ」ている。読者に小さな謎を与えて、すぐに解決=炎の形状や物理的な動きの比喩だと分からせることが大きな工夫といえるでしょう。

最後の季語「花の雨」に関しては、下記の記事も合わせてご参照ください。(大変好きな句でした。)

2020/4/9:「まるでシンバル移り来し街余寒」東国原英夫

春のタイトル戦を、2年ぶり3度目の優勝となった東国原名人。「不動産屋さん」という兼題で、発想自体は『上京』というベタなものでしたが、大胆な破調を使ってフジモン以下を制して優勝しました。

(個人的には、2018年の優勝作品が好き過ぎてこの句はそこまで……って感じなのですが、)夏井先生が高く評価する理由というのは十分理解できます。

この句の最大の特徴はやはり「破調」でしょう。再び、私が考えた(無理やり定型にした)句とで比べてみましょう。

(比較句)シンバルめく上京の街 冴え返る

言っていることは極端に変わっていないのですが、何か妙に定型に収まってしまっていて、句の着眼点自体も「ベタ」であることが何となく伝わってきませんかね?

「都会が騒がしい」ことも、うるさいのを「シンバル」に例えることも、「上京したての都会が寒い」ことも、オーソドックスな感想です。上の句だったら、

「(シンバルみたいって)比喩したら、凡人は何かやった気になる」

と、夏井先生にバサッと行かれてしまいそうです。(+「上京の街」は重複表現で、更に減点対象か)

(優勝句)「まるでシンバル移り来し街余寒」東国原英夫

しかし、東国原さんの句は春光戦を優勝しました。東さんが素直に上京時に感じた印象を「まるでシンバル/移り来し街/余寒」という(足して17音ではあるものの)「7+7+3音」の定型から逸脱してギクシャクしたリズム感で描き、この句の内容にはマッチしていると先生は判断したのです。

2021/3/25:「浜風光るスクイズの土埃」横尾渉

あの「庖丁始」の句でタイトル戦初優勝を果たした横尾さんが、「吾子俳句の千原ジュニア名人」や、「志村忌の梅沢永世名人」を下して2度めの優勝を果たしたのが、この「浜風光る」の句でした。

(↑)「志村けん」さん追悼句を詠んだ、東国原英夫名人と梅沢富美男名人の作品については、こちらの記事をどうぞ。

兼題「じゃんけん」から、キャッチャーの出すサインを「じゃんけん」の手の形と重ねて発想をしたという作品です。言われてみれば確かにそうなのですが、このことに気づくのが本当に素晴らしいです。
言われて気付かされることに「自分で気がつけるか」が、名人・特待生と我々との違いですよね~

俳句の技巧的なところに関しては、下の記事にも書いているのですが、横尾さんはかつて「風光る」という季語を使った野球の句を使って『現状維持』査定だったことがありました。

そういった経験を踏まえ、「風光る+野球」という取り合わせの句にタイトル戦で再チャレンジをして見事に優勝を掴んだというドラマチックな展開でもあったのです。

最後に、俳句初心者の皆さん、手元にもし「俳句歳時記」があれば、『風光る』、そして『浜風光る』を引いてみてください。きっと『風光る』は収録されていますが、『浜風光る』としては収録されていないはずです。それもそのはず、『浜風光る』というのは横尾さんが工夫して作った表現だからです。

「風光る」は、使い勝手が非常に良くてついつい頼りがちな春の季語なのですが、ややもすると雰囲気が先行して映像を持たない印象になりがちです。しかし、横尾さんは「浜」という1文字を字余りも厭わずに加えました。このことで単なる風が「浜風」となって様々な効果が期待できるようになります。

7・5・5という定型から外れたリズムですが、季語の次に「スクイズ」と来ることで野球を描いていることがはっきりとします。そして下五に「土埃」という映像で着地することで、夏井先生も仰っていたとおり、『阪神甲子園球場&春のセンバツ』かな? と詠み手にヒントを与えて読みを委ねています

もちろん季語に手を加えてアレンジすることを嫌う俳人も多く居ますが、2021年の春光戦のハイレベルな中で、夏井先生がこの句を1位に推した理由も分かる気がしましたね。

2022/3/31:(ネタバレを避けるため、後日更新予定)

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