この記事では、毎年2月下旬に行われるサウジアラビアの競馬のビッグイベント「サウジカップ」と、当日に行われるその他のレースをまとめて「サウジカップ・デー」として振り返っていきます。
毎年、多くの日本馬も遠征して活躍をみせていますので、過去を振り返るのにもお役立ていただければ幸いです! それでは概略から早速みていきましょう~
1.サウジカップ(デー)について
まずは、日本語版ウィキペディアの冒頭部分を引用して、概略を抑えておきましょう。
サウジカップは、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィーズ競走馬術広場で開催されている競馬の競走である。距離はダート1800m。賞金総額2000万米ドルを誇る世界最高賞金レースである。
日本語版ウィキペディア > サウジカップ(2022/02/26閲覧)
一昔前では、サウジアラビアなんて競馬の印象に薄かったのですが、この「サウジカップ」の創設によって世界から一躍注目される存在となりました。
ちなみに、参考までに、『海外競馬完全読本2006-2007』を今引いてみても、レース数:322(国際グレードは0)、生産頭数719などと書かれているのみです。当時としては、各国のデータ一覧の一部としてしか表示されていない単なるパートIII国でした。
それが石油パワーなどによって、世界最高賞金のレースを創設できるに至ったのです。
概要 [編集]
( 同上 )
サウジアラビアジョッキークラブが2020年に創設した国際競走。総賞金は2000万米ドルで、施行日はサウジカップデーと称して、本競走を含め8つの競走(6つは国際競走で1つはアラブ馬限定)が行われる。
本競走はダート1800mで行われるが、アメリカやドバイ、日本と異なって、ウッドチップを含んでいるというキング・アブドゥルアズィーズ競走馬術広場のダートコースや高額な賞金の影響か第1回のベンバトル、マジックワンド、第2回のミシュリフなど主に芝のレースに出走してきた欧州馬も毎年数頭が参戦している。
ちょっと後半部分は日本語の修飾関係が込み入っていますが、各レースの出走馬・所属国をみれば明らかな様に、世界各国の国際レースの中でも「国際色豊か」なのは確かです。
歴史 [編集]
( 同上 )
・2020年 – キング・アブドゥルアズィーズ競走馬術広場のダート1800mで創設。初代優勝馬はマキシマムセキュリティ。
・2021年10月5日-IFHA(国際競馬統括機関連盟)がサウジアラビアの競馬をパートII国に格上げすると発表。これと共に、2022年からサウジカップは国際G1、同日の開催のアンダーカードに含まれるサラブレッド系の国際競走を国際G3にそれぞれ格付けされることになった。
「サウジカップ」は、第1・2回から獲得賞金こそ世界最高でしたが、国際格付けでは「G1」に格付けされていませんでした。2022年の第3回から正式に「国際G1」に認定される運びとなった訳です。
そして、メインの「サウジカップ」以外にどんなレースが開催されるかというと、
これらのレースが開催されます。日本国内の「G3」よりもかなり賞金額となっています。実力のある馬ならば、「芝3000m」や「3歳ダート1600m」で高額賞金を狙うのも選択肢となってきています。
ここからは、過去の成績を、レースごと個別にみていきたいと思います。
2.「サウジカップ」
まずは、ゲートスタートするのは最後ですがメインイベントであるサウジCを紹介していきましょう。
第1回(2020/02/29)米・マキシマムセキュリティ
日本からは、ゴールドドリームとクリソベリルが遠征した第1回の「サウジカップ」は、世界最高賞金を誇るに相応しい国際色豊かなメンバー。1・2着は充実のアメリカ勢でした。
1着 米・Maximum Security(マキシマムセキュリティ)
2着 米・Midnight Bisou(ミッドナイトビズー)
3着 英・Benbatl(ベンバトル)
6着 日・ゴールドドリーム
7着 日・クリソベリル
優勝したのは、ケンタッキーダービーを優勝 → 17着降着となっていた「マキシマムセキュリティ」。結局生涯成績14戦10勝という名馬です。「ペガサスワールドカップ」の優勝賞金が4分の1の3億円に減額されたことで、サウジCに路線転換し、初代王者に輝きました。
2着の「ミッドナイトビズー」は前年に重賞7連勝、BCディスタフでも2着となった「ミッドナイトビズー(牝5)」。22戦13勝、すべて3着以内という安定感で中距離に強い馬が入りました。
日本馬は、ゴールドドリームが6着、クリソベリルが7着(国内6戦6勝で初の海外遠征も大敗)と、個人的には善戦だと感じる着順なのですが、事前の期待が高かっただけに国内では失望の声も聞かれました。
一方、欧州勢代表格の1頭「マジックワンド」は勝ち馬からそこまで大差はついていないものの9着と敗れました。しかし同じく芝を主戦としてきたUAEの「ベンバトル」は、メイダンのG2を芝→ダートと2連勝してサウジCに挑戦し3着に健闘しました。
第2回(2021/02/20)ミシュリフ
1週開催が早まりフェブラリーSと重複した2021年は、日本からチュウワウィザードが参戦しました。
1着 英・Mishriff(ミシュリフ)
2着 米・Charlatan(シャーラタン)
3着 沙・Great Scot(グレイトスコット)
9着 日・チュウワウィザード
前年と同様、世界各国の一流馬が集った第2回「サウジC」。日本からは初海外遠征となるチュウワウィザードが参戦しました。結果こそ20馬身離されての9着でしたが、その次走の「ドバイワールドC」で2着となったことを思うと、この敗戦も未来に繋がったといえるかも知れません。
優勝したのはイギリスの「ミシュリフ」です。前年にサンバサウジダービーで日本馬フルフラットの2着に惜敗していた同馬ですが、夏に「仏ダービー」を制して挑んだ明け4歳の初戦。ダートへの不安もある中でしたが、4戦4勝のアメリカ・シャーラタンを下しました。
そしてこのミシュリフは、次走のドバイシーマクラシックで、日本のクロノジェネシスやラヴズオンリーユーをクビ差下して優勝したことで名を覚えた方も多いかと思いますね。
第3回(2022/02/26)エンブレムロード
日本からは、チャンピオンズCを圧勝した「テーオーケインズ」と、前年の(本家アメリカの)「ブリーダーズカップディスタフ」を制する快挙を成し遂げた「マルシュロレーヌ」が出走しました。
人気の中心は大外枠からのゲートながら連覇を目指すミシュリフ。また日本のテーオーケインズも欧米のブックメーカーによれば1桁台の人気を背負っていました。
しかしレースは蓋を開けると4コーナーまでで消耗戦の様相を呈し、注目馬が次々と脱落。直線では、3頭が抜け出し、地元の伏兵・エンブレムロードがアメリカの強豪を抑え地元勢初優勝を達成します。
※イメージとしては、ちょうど「ジャパンカップ」をカツラギエースが勝った並の衝撃でしょうか。
1着 沙・Emblem Road(エンブレムロード)
2着 米・Country Grammer(カントリーグラマー)
3着 米・Midnight Bourbon(ミッドナイトバーボン)
6着 日・マルシュロレーヌ
8着 日・テーオーケインズ
13着 仏・Sealiway(シリウェイ)
14着 英・Mishriff(ミシュリフ)
上位陣はオッズ的には人気薄サイドで決着し、英語実況などでは大きなショックをもって報じられました。人気を集めていたヨーロッパのシリウェイはブービー、昨年の覇者ミシュリフはシンガリ負けだったことからも、難しさを感じた1戦でした。
日本馬ではマルシュロレーヌが健闘の6着で現役を退き、テーオーケインズは初遠征で海外の壁はやはり低くなく8着と敗れています。(これでもチュウワウィザードの昨年よりかは着順は上ですが。)
3.サウジカップデーのアンダーカード
メインのサウジカップ以外では、日本馬も勝利を収めています。前座というと表現が悪いですが、いわゆるメインの前に開催される「アンダーカード」のレースたちも早速みていきましょう。
1)ネオムターフカップ(芝2100m・総額150万$)
2020年は「モハメドユスフナギモーターズカップ」として開催され、日本からはディアドラが出走。 当時は相手関係が手薄なこともあって、イギリスのブックメーカーでは単勝1倍台に支持されたそうですが、バーレーン調教馬の「ポートライオンズ」に敗れ2着となりました。
2021年はレース名を現行に変更。日本からの挑戦はなく、「トゥルーセルフ」が優勝しています。
2022年は日本から「ジャパンC」2着馬のオーソリティが出走。好スタートからハナを奪うと、直線では接戦となる2着争いを尻目に鮮やかな逃げ切り勝ちを収め、スタミナを活かしたレースで初遠征勝利を収めました。
2)1351ターフスプリント(芝1351m・総額150万$)
2021年は「STC1351ターフスプリント」として開催。その名のとおり、距離(メートル法)がレース名に冠されています。
2022年は日本から、エントシャイデン、ラウダシオン、ソングラインの3頭が出走。マイルから1400mに適正を持つ馬が「阪急杯(1着4,300万円)」を蹴ってもおかしくない賞金です。
レースは見応えのある直線の3頭の勝負になり、ソングラインが競り勝って優勝。明け4歳世代の強さをここでも証明する形となりました。日本馬は連勝となり、“Song Line from Japan Again!” と実況で伝えられました。
3)レッドシーターフH(芝3000m・総額250万$)
2020年は「ロンジンターフH」として開催。
2022年の開催に向けては、メロディーレーンが登録したことで話題になりましたが不出走。日本からは「ステイフーリッシュ」が3年ぶりの勝利(3勝目)を目指して出走しました。
国内では2018年の京都新聞杯での勝利を最後に2着5回3着6回と重賞惜敗が続いていた同馬ですが、蓋を開ければ大楽勝。直線では見る見る着差を付け、約3年ぶりの3勝目を達成しました。海外実況でも「日本馬、そしてルメール騎手」の快進撃が大きく報じられました。
4)ジョッキークラブローカルH(ダ1800m・総額100万$)
「ローカル」と名を冠しているとおり、サウジアラビア調教馬限定の競走。(なので日本とは基本的に無関係でしょう。)
5)オバイヤアラビアンクラシック(ダ2000m・総額200万$)
「アラビアン」と冠しているとおり、『純血アラブ馬』限定の競走。国際アラブ競馬連盟によって「G2 PA」に格付けされています。日本における“アラブ馬(アングロアラブ種)”競走は途絶えて久しいですが、世界的には今でも当然のごとく開催は続いています。
6)サウジダービー(ダ1600m・総額150万$)
「ダービー」と冠しているとおり3歳馬限定の競走です。日本のみならず、この時期に3歳ダート路線で100万ドルを超えるようなレースは多くないので、遠征に前向きな陣営が集結します。
第1回(2020年・サンバサウジダービーC)、第2回(2021年・アルラジヒ銀行サウジダービー)と、レース名が微妙に変わっていますが、どちらも日本馬(森秀行厩舎)が制しています。
第1回は「フルフラット」(当時は未勝利勝ち馬で、1勝クラス2着からの挑戦)が優勝して驚きをもって迎えられ、第2回は「ピンクカメハメハ」がダートに転戦して初めてで勝利。新馬勝ち以来、芝で入着できていなかった同馬が2勝目を挙げました。
※ただ、フルフラットはユニコーンS6着、ピンクカメハメハはUAEダービー10着と大敗していることからも、賞金額に見合うレベルに達していなかった側面もあったため、レースレベルが年や挑戦馬によってバラツキが出ることも予想されます。
2022年は、コンシリエーレ(OP・カトレアS勝ち馬)とセキフウ(Jpn2・兵庫ジュニアGP勝ち馬)が登録しており、日本馬の3連覇を狙い出走しました。
日本馬はセキフウが2着、コンシリエーレが3着と最後捉えきれず、勝ったのは3~4角でまくった米のパインハースト。「デルマーフューチュリティS(G1)」以来の重賞制覇となりました。
7)リヤドダートスプリント(ダ1200m・総額150万$)
ダートのスプリントという絶妙な距離設定のレースで、日本馬も活躍している同レース。下の「note」にも書いたとおり、『フェブラリーS(東京ダ1600m)』よりも距離適性のあった馬であれば、サウジカップデーに遠征するという流れは中々止められるものではない気がしています。
☆春のダート路線について(メモ)|note
https://note.com/yequalrx/n/n4e1c9cf52cb3
2020年は「サウジアスプリント」として開催され、マテラスカイが惜敗の2着。
2021年は日本馬がワンツーとなり、コパノキッキングが優勝、マテラスカイは2年連続の2着となり、カペラSを勝って挑んだジャスティンは6着と敗れています。
2022年は、連覇を目指すコパノキッキングと、ダンシングプリンス、チェーンオブラブが出走。結果はダンシングプリンスが5馬身 3/4をつける圧勝。芝で未勝利を脱せず、船橋に転籍してダートで開花し通算6連勝。京葉S→カペラSと連勝して臨んだ今回も快速ぶりを見せつける結果となりました。
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