【プレバト俳人列伝】宮田俊哉さん(Kis-My-Ft2)の才能アリの俳句

【はじめに】
この記事では、Kis-My-Ft2(キスマイ)の【宮田俊哉】さんが「プレバト!!」で披露した俳句のうち、「才能アリ」査定となった句を振り返っていきたいと思います。

(2016/05)75点『登山列車近づく空はラムネ色』

初出場は「キスマイ(Kis-My-Ft2)」そして「舞祭組」のメンバー中では決して早くなかったものの、2015年下半期に2度俳句査定に挑戦した宮田さん。初回は30点6位の才能ナシ2回目は50点4位の凡人と徐々にランクアップして迎えた3回目にして、他メンバーにも負けない高得点を叩き出します

『登山列車近づく空はラムネ色』

上五を字余りにはしているものの極めて定型的であり、その句の内容は清々しくわかり易く感じます。

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しかし細かく見出すと、『ラムネ』という目立つ季語はあくまでも「色の名前」としての比喩であり、空気感は夏感に溢れていますが主たる季語ではありません。むしろ「登山」(←これも夏の季語)から派生して「登山列車」を主たる季語と見做すのが解釈としてのセオリーといえそうです。

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季語の問題一つをとっても、どこまで調べ上げてこの2つの季語の強弱を意識していたか分かりませんが、全体として良く纏まっており、相互にシナジー効果を呼んでいる部分が高く評価されての「75点」だったのだと思います。今と得点の分布が違うとはいえ、今の「75点」の俳句と近く夏井先生が高評価を下したことは間違いありません。

細かい助詞の部分では「空【は】」とすることで、登山列車の色など「ラムネ色」以外のものの存在が暗示されている点も極めて興味深いと感じました。宮田さんがこれらを全て意識して17音としたのかは判断しかねますが、句の1単語1単語を深く読む夏井先生のお眼鏡に叶っての“三度目の正直”でした。

(2016/08)72点『土産買い汗拭き乗り込む6号車』

初の才能アリを獲得した次の挑戦(4回目)でも、他のメンバーに続いて「特待生」昇格を期待させるそんな結果となりました。既に横尾さんが特待生として先頭を走り、6月には千賀さんも特待生に昇格を果たした2016年夏(暦の上では秋)の作品です。

『土産買い汗拭き乗り込む6号車』

この句で、良く言えば『難しいことに挑戦』しており、悪く言えば『セオリー崩し』しているのは主に以下の2点です。

  • 「汗拭き乗り込む」と中七が字余り(中八)になっている
    このリズムが良いと捉える人がいる一方で、モタモタッとして勢いが削がれているという見方の人も出てくるおそれ
  • 「買い」・「拭き」・「乗り込む」など動詞が多い
    動作が多いと時間軸が長くなったり説明臭くなったりして基本的には17音の器に盛るには情報が多くなってしまうので難しいというのがセオリー

夏井先生は結果的に『難しいことに良くチャレンジ』したとして72点の高評価とした訳ですが、うまいか下手かは選者によっても判断がわかれるほどにギリギリなラインでした。

しかし逆の見方をすれば、セオリーを抑えてない句であってもその作品の持つパワーや魅力を最大限に尊重して評価する夏井先生だからこその高評価だったと思いますし、一定の説得力があると思います。

(2019/09)70点『運動会父とお揃いバンソウコウ』

しかしそこから10回続けて「凡人 or 才能ナシ」という長いトンネルに入ってしまいます。その間に、メンバーの特待生は名人となったりタイトル戦優勝という結果を残す中で、連敗を止める形となったのが令和2度目の挑戦で才能アリとなった本作です。

『運動会父とお揃いバンソウコウ』

季語は平成の歳時記では秋とされている「運動会」。中七から下五にかけての温かな家庭のエピソードとの取り合わせが、非常にストレートで良いと思いました。

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描かれているのは最終的に下五の『絆創膏』なのですが、そこに至るまでに『父親と二人三脚に出場をして揃って転んで怪我をしてしまい、母親か保健室の先生あたりにお揃いの絆創膏を貼ってもらった』というエピソードが想像に難くありません。

それだけの情報量を詰め込むことに成功しているという判断から、(得点こそ過去2回の才能アリには及ばないものの)堂々70点の才能アリとなりました。

(2021/03)71点『洗濯機裏の秘かな猫の恋』

しばらく「凡人2回→才能ナシ1回」が続いていた宮田さんですが、前回の才能アリから数えて「才能アリ→凡人→凡人→才能アリ」と推移し、4度目の才能アリとなったのがこちらの句でした。

『洗濯機裏の秘かな猫の恋』→『洗濯機裏ひそやかな猫の恋』

季語は春の『猫の恋』です。まずそれを使ってくるところからも俳句を勉強している一端が見えます。そして『6号車』の句のときと似て、非常に多くの要素を17音の器に盛り込んでいながら、破綻をせず今回はセオリーにも沿ったような構成となっています。

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夏井先生は全体の構成(上五・下五)は変えず、中七に少し手を加えるのみとしました。しかし添削後の『洗濯機裏ひそやかな猫の恋』の方がスッキリしたような感じがしますよね。

ここまで才能アリの佳句を考えたときに、着眼点がピンポイントで、特に下五の印象が強く残る作品が多い印象を受けます。『猫の恋』は別にして、他の句は季語でないもので句が終わるのに、主役となるべき季語も下五の単語も相並び立っています。そこに宮田さんのポテンシャルを感じますし、しっかりと詠み込んで評価してくれる夏井先生のお眼鏡に叶う句もあるのだと思います。

全体で見ると「才能アリ」率は1割台であり、二階堂さんに比べるとボラティリティ(点差のブレ)が小さい代わりに挑戦しても殆どの回が「凡人」となるという弱みもあります。

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2022年8月の回で御本人が述べたとおり、『ベーブ・ルース』のようなホームラン王を目指すために、ぜひこのままの宮田さんの良さを活かしつつ、今後も挑戦を続けて頂きたいという風に感じましたねー

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