競馬歳時記【9月3週】「ローズS」

【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「ローズステークス」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。

ローズステークスは、日本中央競馬会 (JRA) が阪神競馬場で施行する中央競馬重賞競走 (GII) である。競馬番組表での名称は「関西テレビ放送賞 ローズステークス(秋華賞トライアル)」と表記される。

競走名の「ローズ(Rose)」は、バラを意味する英語。花言葉は「愛」「美」「幸福」。

寄贈賞を提供する関西テレビ放送は、大阪市に本社を置く放送局。

ローズステークス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』( 以下省略 )

1980年代:エリザベス女王杯の京都G2トライアルとして創設

歴史

  • 1983年 – 4歳牝馬による重賞競走として創設、京都競馬場の芝外回り2000mで施行。当初は5着までの馬にエリザベス女王杯の優先出走権が与えられていた。また、1995年まで「エリザベス女王杯トライアル」の副称もつけられた。
  • 1984年
    • 名称を「関西テレビ放送賞 ローズステークス」に変更。
    • グレード制施行によりGIIに格付け。

創設されたのは1983年のこと、日本にグレード制が導入される前年のことです。1970年代に牝馬3冠目が秋競馬に創設されましたが、正式なトライアル競走がなく、1983年になって「ローズS」が前月の10月に設定される運びとなったのです。(関東で開催されていた「クイーンS」は9月開催と遠めで、必要に応じて牡馬混合戦や古牝馬も含む「牝馬東京タイムズ杯」を使うケースもありました。)

1980年代の主な「ローズS」
  • 1983年
    第1回
    ロンググレイス

    オークス馬ダイナカールやセントライト記念勝ち馬メジロハイネは惜敗。勝った上がり馬のロンググレイスが、創設年に「エリザベス女王杯」を優勝。

  • 1986年
    第4回
    メジロラモーヌ

    史上初の牝馬三冠馬はローズSも勝っての完璧な成績。但し、ローズS自体はポットテスコレディにクビ差の惜敗。

  • 1987年
    第5回
    マックスビューティ

    年明け無敗で牝馬2冠 → 神戸新聞杯も勝って7連勝。更にローズSも勝って8連勝とし、2年連続の牝馬三冠確実という機運が高まる勝利。

  • 1989年
    第7回
    シャダイカグラ

    デビュー以来連対率100%で、桜花賞1着、オークス2着の同馬が5ヶ月ぶりのレースも優勝。陣営は次走エリザベス女王杯を最後に現役引退することを発表。

創設当初は牝馬3冠路線にかかわる馬が挙って出走し、12番人気のタケノハナミが勝った1985年を除いて基本的には安定感のある重賞でした。当時はローズSを秋緒戦ではなく本番直前と捉える陣営もいたことから、調整度合いが高まってきていたこともあるのだと思われます。

1990年代:ヒシアマゾンらが優勝 → 阪神に移設

当初は京都競馬場で開催されていた「ローズS」は、1990年代中盤に阪神競馬場へ移設されます。代替開催時代を含めてみると、阪神競馬場での開催では著名な馬たちがローズSを制して現3歳秋以降の飛躍を遂げました。例えば、

1990年代の主な「ローズS」

また、1993年にはホクトベガ、1995年にはライデンリーダー、1997年にはシーキングザパールが3着と敗れているほか、1999年はフサイチエアデール、トゥザヴィクトリーが敗れています。

この間に、エリザベス女王杯が古馬に開放され、「秋華賞」が新設されたため、ローズSは9月開催となっています。そのために阪神開催に移ったのですよね。

2000年代:1800mに短縮(3冠牝馬は敗戦)

2000年代に入っても、秋華賞やエリザベス女王杯に直結するレースとして格式をもってきました。他のG1と異なり、有力なトライアルが「ローズS」のみだったことも影響しているでしょう。

2000年の主な「ローズS」
  • 2002年
    第20回
    ファインモーション

    ピルサドスキーの妹で、1000万下を勝ったばかりで格上挑戦し1番人気で勝利。デビュー5連勝で秋華賞、6連勝でエリザベス女王杯を優勝する偉業達成。

  • 2003年
    第21回
    アドマイヤグルーヴ

    秋華賞だけは譲らないとトライアルを完勝したアドマイヤグルーヴ。春2冠を達成したスティルインラブは初めて連対を外す5着とローズSで大負けを喫するも、本番・秋華賞を制して牝馬3冠を達成。

  • 2007年
    第25回
    ダイワスカーレット

    ウオッカが日本ダービー馬となり、秋華賞で再戦するのを前に、桜花賞馬ダイワスカーレットは落とせないトライアル。接戦を制して秋にリベンジへ。

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これらのほか、2004年にスイープトウショウ、2006年にはフサイチパンドラが3着。また、2008年のローズSで15着と敗れていた【ブラックエンブレム】は秋華賞で11番人気(29.9倍)を制しています。

そして2009年には【レッドディザイア】が2着と惜敗。春2冠もブエナビスタの2着と敗れていた同馬が秋華賞ではブロードストリートやブエナビスタを下してG1馬に輝いています。

2010年代:三冠牝馬2頭は明暗わかれる

2010年代前半には2頭の三冠牝馬が誕生しましたが、秋競馬での緒戦は明暗がわかれました。

  • 2010年:アニメイトバイオ
    三冠牝馬となる【アパパネ】は24kg増で4着(牝馬限定戦で初めて連対を外す)
  • 2012年:ジェンティルドンナ
    春2冠に続いてヴィルシーナを2着に下して連勝。終わってみれば、桜花賞→優駿牝馬→ローズS→秋華賞→ジャパンC の5連勝で年度代表馬に選出。

アパパネは4着、ジェンティルドンナはヴィルシーナに勝ってローズSを終え、秋華賞で3冠を果たしました。ただ三冠牝馬2頭はこのレースを叩いてその栄誉を掴んでいます。また2010年代後半に入ると、

  • 2017年:リスグラシュー3着
  • 2018年:サラキア2着

と有馬記念を盛り上げた牝馬2頭はこの舞台敗れています。そして2019年には【ダノンファンタジー】が復活のレコード勝ちを果たしたことも記憶に新しいところでしょうか。

2020年代:紫苑Sに強豪流出、オープンクラス1頭の年も

2016年以降のレースレーティングをみてみますと、G2の目安(表の数字では106ポンド)を上回っています。それでも以前の様に、トライアルが1つしかなかった時代と比べると状況は変化しています。

レースR勝ち馬
2016108.00シンハライト
2017107.25ラビットラン
2018107.25カンタービレ
2019109.50ダノンファンタジー
2020105.50リアアメリア
2021109.00アンドヴァラナウト
2022
牝馬限定戦のアローワンス調整前の値で、G2の目安は106ポンド。牡馬混合戦に置き換えると「+4ポンド」する必要があり、例えば2019年を、牡馬混合戦と同じ水準でみようとすると「109.50+4=113.50ポンド」相当。3歳牝馬限定G2としては最高水準。

リアアメリアが勝った年を除いて、G2の目安を超えており、シンハライトやダノンファンタジーは、3歳春までにG1を制しこのレースが秋緒戦でした。但し、秋から冬を見据えて、秋華賞にぶっつけ本番で挑む馬が増えてきていることも、ローズSの今後に不安感を覚える一因となっています。

最も目立つのが、「ローズS」の前週に開催される重賞「紫苑S」への強豪流出およびぶっつけでの秋華賞参戦というローテーションです。

下に示したのは、牝馬3冠で1・2着となった馬の秋緒戦(秋華賞前に選んだレース)をざっくり示しています。

桜花
1着
桜花
2着
オークス
1着
オークス
2着
秋華
1着
秋華
2着
2016ローズローズローズ休養紫苑紫苑
2017ローズローズ毎日王冠ローズ紫苑ローズ
2018ぶっつけぶっつけぶっつけ引退ぶっつけ1000万下
2019休養ローズ休養紫苑ぶっつけ紫苑
2020ぶっつけ休養ぶっつけぶっつけぶっつけ紫苑
2021札幌記念休養ぶっつけぶっつけぶっつけ紫苑
2022
休養:秋華賞を回避した馬(11月以降に緒戦を迎えた馬を含む)、ぶっつけ:春競馬以来トライアルを使わず秋華賞に直行した組

2016年に「紫苑S」が重賞に格上げされると、秋華賞でワンツーを決めており、それ以降は2017年にリスグラシューが2着に入って以降は、秋華賞ぶっつけ組や紫苑S組ばかりが秋華賞で結果を残しており、ローズSは露骨に苦戦するようになっています。

そうした結果、2022年には恐れていた事態となってしまいました。オープンクラスは「忘れな草賞(リステッド競走)」を勝った1頭のみ、他は条件(しかも1勝クラス勝ちか2勝クラスで勝ちきれない馬たち)クラスというメンバーが揃ってしまったのです。

レーティングがどんな値になるか分かりませんし、夏の上がり馬が誕生するかも知れませんが、G2競走で重賞馬どころかオープンクラスが1頭のみでその他は条件馬となれば「G2」の格が適切か非常に不安になってしまいます。

恐らく、2010年代後半の「紫苑S」の創設が決め手となり、一気にトレンドが「ローズS以外」に偏っていってしまうのではないかと危惧しているところです。出来るのは、このレースの好走馬が秋競馬で飛躍を遂げることのみ。そうでなければ、G2の目安をガクッと下回ってしまう恐れもあるだけに、2020年代中盤にかけてが一つの山となりそうです。

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