【はじめに】
この記事では、「プレバト!! 俳人」としての【北山宏光】さんについて、初挑戦の2015年から振り返っていきます。
2015~18年:一般参加者時代
北山さんが初めて「プレバト!!」の俳句査定に参加したのは2015年1月のことでした。後に特待生・名人として活躍することとなるキスマイのメンバーの中でも最も早く出演をしたのが北山さんでした。
初挑戦は8位13点、2回目は倍になるも7位25点での2連続才能ナシ。そして3回目には更に点数が倍になって3位50点と初の凡人査定。そこからは一進一退となって、初挑戦から1年半で5回出場するも「才能ナシ→才能ナシ→凡人→凡人→凡人」という惨憺たる結果でした。
ちなみに、初期の北山さんを振り返る際によくネタにされてしまうのが、2回目(初期ではあるものの一部誤解がある初挑戦時ではない)に披露した句『高めから紫陽花覗く俺634(むさし)』でしょう。ここでいう“634”は兼題になっていた東京スカイツリーの高さ634mからの発想(語呂)でした。
そこから6回目に初の才能アリ(70点)を獲得した後は、70→35→70→70→35点という俳句査定とは思えないほどの偏差の大きな出来の俳句を披露し、特待生候補となっては一歩後退、期待値が下がったところで目覚ましい句を披露して特待生候補というのが2年半続くこととなりました。
それでも「才能アリ」率をどんどんと高めていって、気づけば2年半で「才能アリ」7回。しかも全部1位という長打力が光りました。
特に2017年11月からは73点2回、72点1回という非常にハイレベルな結果だったこともあり、2018年夏からは才能ナシを2回連続で取ってしまい完全に特待生昇進は白紙かと思われたところで「手袋」の句が73点という高評価だったことから、出場18回目にして念願の特待生に昇格を果たしたのです。
北山さんの句の中でも特に好きだった作品を3つ挙げるとすれば、
- 『忘れるな冬晴れ越えて東北へ』
東日本大震災を思った作品で、個人的には「忘れるな」というストレートな上五から、下五の「東北」でネタ明かしされるような快さがありました - 『原爆忌あいつと青く飛んだ日々』
こちらは先に「原爆忌」という若者にとって扱うのが難しいであろう季語が登場し、「あいつ」という具体性が一見すると低そうな中七を繋いで後半もどこか漠然とした感じを残しつつも現代人に通じる戦争の辛い過去を暗示させる展開となっているのが非常に見事でした - 『手袋を外して撫でる猫の喉』
特待生昇格を決めた1句。夏井先生の講評のとおりで、猫好きの習性を良く捉えた展開だったと思います。「手袋」という冬の季語を敢えて外しているのに、それでも冬の季語が主役としてしっかりと立っていて、冬の寒さを覚える(猫の動物の温かさとの対比も)見事さだと思いました
こういったところかと思います。確かにまだ句作の土台がしっかり出来てない状況ではありましたが、良いところを褒めて伸ばした結果の特待生昇格だったというふうに思い返します。
2019~ 年:特待生時代
『全然信頼してないけど、』と前置きし、特待生はいつでも落とせるという軽いノリ(?)で、特待生に昇格した北山さん。それを証明してしまうかのように、通常回は4回連続「現状維持」で、常に特待生剥奪の恐怖に怯えながらの戦いとなりました。
時代は令和となりタイトル戦にも参加するようになりましたが、……こちらも全く奮わず、最下位付近をうろうろするのが続く結果となります。通常、どちらかで活躍の糸口を掴むことが多いのですが、北山さんはそれをつかめずに1年半が過ぎてしまいました。
唯一、タイトル戦で予選通過を果たしたのが2019年12月の冬麗戦。梅沢名人が予選に回って3位と苦戦する中、決勝進出4枠中4位に滑り込み、何とか決勝進出。その年の決勝でも6位とそれなりの結果を残しました。
トレンドが変わったのは2020年のコロナ禍に入ったタイミングです。成績は問わず良作を列挙すると、
初めて昇格をして、特待生剥奪の危機感から少し遠ざかったこともあってか、カタカナ語を使った攻めの俳句が増えてきたように感じたのがこの頃です。炎帝戦でいきなりアンディーウォーホルが飛び出したのは非常に驚きましたし、「FMさがみ」の句も素晴らしかったです。
振り返ってみると、初期から「音楽」などアート系の取り合わせが多かった北山さんの多才な一面を、覗かせてくれる作品も増える中、ウィズコロナの時代に移っていきます。
2021年:タイトル戦「金秋戦」初優勝!
2021年初夏に『葉桜や融氷の音のグラスより』という句で3級に昇格をすると、60人が参加する新・炎帝戦では『花栗や肌に張り付くツアーロゴ』が全体の7位入賞。「花栗」という難しい季語を使ってキスマイのライブを描いたのは見事でした。
そして、2021年9月。これまで予選で2位に入ることも出来ていなかった中で初の1位通過を果たしたのが金秋戦Cブロック。『秋声や台詞をなぞる蛍光ペン』は基本型でありながら伝える情報量が多く、詠み手に追体験させる部分に魅力が詰まっていました。
そして、「バッテリー切れ間近なケータイの残量」という難しい兼題が出され、名人が軒並み苦戦した2021年金秋戦・決勝。横尾名人が2位。名人初段の森口さんに優勝を譲り、北山さんは最下位か……と視聴者の多くが思ってしまいがちな中、結果はまさかのタイトル戦初優勝!
2021年金秋戦優勝『スマホ死す画面に浮かぶ指紋と月』
「スマホ死す」というドキッとする上五を日常使いする若者世代とのジェネレーションギャップを俳句から受けつつ、最後に「月」がポッと登場するところに俳句の懐の深さを感じざるを得ませんでした。
しかし、再びその反動は長く、2022年の年末まで1年3ヶ月、満足な結果を出せず、特待生3級のまま優勝額が外されていってしまいました。
それでも、広い目でみれば「年1ペース」で昇進を続けてきた北山さんは、2022年年末に2級、そして2023年夏には特待生1級に昇進。それは6月にキスマイそしてジャニーズからの卒業を発表し、同月末で正式に卒業するというタイミングでした。
キスマイメンバーだった最後の出場回に「特待生1級」となって名人に王手となり、横尾さんや千賀さんといったメンバーを追いかけて努力してきた「名人昇格」という夢は、卒業後に繋がるというドラマを描いて、北山さんは新たなステージへと向かいます。
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