【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「キーンランドC」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。
概要
キーンランドカップ(Keeneland Cup)は、日本中央競馬会(JRA)が札幌競馬場で施行する中央競馬の重賞競走(GIII)である。
競走名の「キーンランド(Keeneland)」はアメリカ合衆国のケンタッキー州レキシントンにある馬産地で、キーンランド競馬場も所在する。
キーンランドカップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「キーンランドカップ」の名前の由来となっている「キーンランド」は、アメリカにある競馬場の名前として知られています。「キーンランド・セール」という競り市の開催地であることから、日本における馬産・競り市の中心地である北海道との関係性で開催されてきたのだと思われます。
キーンランド競馬場(キーンランドけいばじょう; 英: Keeneland)は、アメリカ合衆国のケンタッキー州レキシントンにあるサラブレッドの平地競走を開催する競馬場である。賭博施設のほか、サラブレッドの競り市、競馬関連資料を収集した資料館があることでも知られる。
キーンランド競馬場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
春でいえば「ブルーグラスS」はケンタッキーダービーへの重要なステップレースですし、秋には2歳戦の「ブリーダーズフューチュリティS」などのGIレースが行われます。
平成前半:札幌のオープン → 1000万下の短距離戦
オープン時代(1996~2001年)
さて、本題の「キーンランドカップ」の歴史に移っていきましょう。発足当初(1996年)当時は、札幌競馬場の芝1000m戦でオープン特別という位置づけでした。それが2000年には1200m戦となり、その年の勝ち馬というのが【メジロダーリング】です。
上の記事でも触れましたが、メジロダーリングは、第1回「アイビスサマーダッシュ」の勝ち馬です。函館スプリントSに次ぐ牡馬混合戦での重賞連勝となりました。
施行日 | 競馬場 | 距離 | 条件 | 優勝馬 | 性齢 | タイム |
---|---|---|---|---|---|---|
1996年6月23日 | 札幌 | 1000m | オープン | オギティファニー | 牝5 | 0:56.5 |
1997年8月24日 | 札幌 | 1000m | オープン | エーピーライ | 牡5 | 0:57.2 |
1998年8月30日 | 札幌 | 1000m | オープン | スーパーナカヤマ | 牡4 | 0:58.1 |
1999年8月29日 | 札幌 | 1000m | オープン | シンボリスウォード | 牡4 | 0:58.5 |
2000年8月27日 | 札幌 | 1200m | オープン | メジロダーリング | 牝4 | 1:09.5 |
2001年8月26日 | 札幌 | 1200m | オープン | エピグラフ | 牡4 | 1:09.4 |
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』( 以下省略 )
条件戦時代(2002~2005年)
そして、重賞に昇格する前の2002年から2005年には「1000万下(今でいう2勝クラス)」の条件戦として開催された歴史もありました。
2002年8月10日 | 札幌 | 1200m | 1000万下 | ブルーショットガン | 牡3 | 1:09.5 | 松永幹夫 |
2003年8月16日 | 札幌 | 1200m | 1000万下 | タカオルビー | 牝3 | 1:08.4 | 菊沢隆徳 |
2004年8月29日 | 札幌 | 1200m | 1000万下 | ロードダルメシアン | 牡5 | 1:09.3 | 松永幹夫 |
2005年8月28日 | 札幌 | 1200m | 1000万下 | モアザンベスト | 牝3 | 1:08.9 | 五十嵐冬樹 |
このうち2002年にこのレースを勝ったブルーショットガンは、7歳を迎えた2006年春に「阪急杯」に出走。このレースが現役最後の重賞となる松永幹夫騎手を鞍上に、11番人気ながら劇的な勝利をあげ、生涯唯一の重賞制覇を果たしています。
その他、タカオルビーはアイビスサマーダッシュで2着、ロードダルメシアンはオープンクラスで勝利を挙げていますし、モアザンベストに関してはホッカイドウ競馬の五十嵐冬樹ジョッキーが優勝騎手に名を連ねています。
平成後半:重賞昇格、牝馬の勝率は約7割
それまで条件戦として開催されてきた「キーンランドC」を重賞に昇格させるというニュースを最初に聞いた時は少し驚いたのを覚えています。「条件 → オープン → 重賞昇格」というルートを辿るレースは多いのですが、オープン → 条件降格を挟んでの重賞昇格は少し変わったルートに思えたからです。
それでも短距離路線の拡充、サマースプリントシリーズの充実にあって、このキーンランドカップは、秋に向けて重要度の高いGIIIとなっていきます。
それこそ現代において、「スプリンターズS」というGIの“1ヶ月ちょっと前に開催される重賞”というスケジュール感が非常に選びやすい条件なのだと思うのです。
回数 | 施行日 | 競馬場 | 優勝馬 | 性齢 |
---|---|---|---|---|
第1回 | 2006年8月27日 | 札幌 | チアフルスマイル | 牝6 |
第2回 | 2007年8月26日 | 札幌 | クーヴェルチュール | 牝3 |
第3回 | 2008年8月31日 | 札幌 | タニノマティーニ | 牡8 |
第4回 | 2009年8月30日 | 札幌 | ビービーガルダン | 牡5 |
第5回 | 2010年8月29日 | 札幌 | ワンカラット | 牝4 |
第6回 | 2011年8月28日 | 札幌 | カレンチャン | 牝4 |
第7回 | 2012年8月26日 | 札幌 | パドトロワ | 牡5 |
第8回 | 2013年8月25日 | 函館 | フォーエバーマーク | 牝5 |
第9回 | 2014年8月31日 | 札幌 | ローブティサージュ | 牝4 |
第10回 | 2015年8月30日 | 札幌 | ウキヨノカゼ | 牝5 |
第11回 | 2016年8月28日 | 札幌 | ブランボヌール | 牝3 |
第12回 | 2017年8月27日 | 札幌 | エポワス | セ9 |
第13回 | 2018年8月26日 | 札幌 | ナックビーナス | 牝5 |
このレースを叩いてスプリンターズSへの道を作ったのが、2011年の【カレンチャン】でしょう。条件戦からの4連勝目がキーンランドCであり、次走のスプリンターズSでは、単勝1.5倍のシンガポール・ロケットマンらを退け、5連勝でGI初制覇を遂げています。
ちなみに、注目すべき点として、『夏は牝馬』という格言を体現するかのごとく、牝馬が圧倒的な強さを見せています。平成年間の13回で牡馬が勝ったのは、2008・09・12年の3回、セン馬の17年を含めても4回です。牝馬の勝率が約7割という点には驚きを隠せません。
令和時代:ダノンスマッシュらが優勝
時代が変わって2019年は、世界で活躍する【ダノンスマッシュ】が人気に応えて(当時)重賞3勝目。牡馬の優勝は実に7年ぶりのことでした。しかし2020年・エイティーンガール、2021年・レイハリアと続けて牝馬が勝っており、その傾向は令和も変わっていません。
年 | レースR | 勝ち馬 |
---|---|---|
2016 | 111.75 | ブランボヌール |
2017 | 108.75 | エポワス |
2018 | 110.25 | ナックビーナス |
2019 | 112.75 | ダノンスマッシュ |
2020 | 107.75 | エイティーンガール |
2021 | 108.25 | レイハリア |
2022 |
2016年以降のレーティングをみた時に、「GIIIの目安:105ポンド」を遥かに上回り、平均値でも「GIIの目安:110ポンド」付近に収束しています。GII「セントウルS」とも大きな差はなく、実質的に「スプリンターズS」の前哨戦的な位置づけとなっていることもこの数値から窺えそうです。
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