競馬歳時記【8月4週】「キーンランドC」

【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「キーンランドC」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。

概要

キーンランドカップ(Keeneland Cup)は、日本中央競馬会(JRA)が札幌競馬場で施行する中央競馬重賞競走GIII)である。

競走名の「キーンランド(Keeneland)」はアメリカ合衆国ケンタッキー州レキシントンにある馬産地で、キーンランド競馬場も所在する。

キーンランドカップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「キーンランドカップ」の名前の由来となっている「キーンランド」は、アメリカにある競馬場の名前として知られています。「キーンランド・セール」という競り市の開催地であることから、日本における馬産・競り市の中心地である北海道との関係性で開催されてきたのだと思われます。

キーンランド競馬場(キーンランドけいばじょう; 英: Keeneland)は、アメリカ合衆国ケンタッキー州レキシントンにあるサラブレッド平地競走を開催する競馬場である。賭博施設のほか、サラブレッドの競り市、競馬関連資料を収集した資料館があることでも知られる。

キーンランド競馬場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

春でいえば「ブルーグラスS」はケンタッキーダービーへの重要なステップレースですし、秋には2歳戦の「ブリーダーズフューチュリティS」などのGIレースが行われます。

平成前半:札幌のオープン → 1000万下の短距離戦

オープン時代(1996~2001年)

さて、本題の「キーンランドカップ」の歴史に移っていきましょう。発足当初(1996年)当時は、札幌競馬場の芝1000m戦でオープン特別という位置づけでした。それが2000年には1200m戦となり、その年の勝ち馬というのが【メジロダーリング】です。

上の記事でも触れましたが、メジロダーリングは、第1回「アイビスサマーダッシュ」の勝ち馬です。函館スプリントSに次ぐ牡馬混合戦での重賞連勝となりました。

施行日競馬場距離条件優勝馬性齢タイム
1996年6月23日札幌1000mオープンオギティファニー牝50:56.5
1997年8月24日札幌1000mオープンエーピーライ牡50:57.2
1998年8月30日札幌1000mオープンスーパーナカヤマ牡40:58.1
1999年8月29日札幌1000mオープンシンボリスウォード牡40:58.5
2000年8月27日札幌1200mオープンメジロダーリング牝41:09.5
2001年8月26日札幌1200mオープンエピグラフ牡41:09.4
キーンランドカップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』( 以下省略 )

条件戦時代(2002~2005年)

そして、重賞に昇格する前の2002年から2005年には「1000万下(今でいう2勝クラス)」の条件戦として開催された歴史もありました。

2002年8月10日札幌1200m1000万下ブルーショットガン牡31:09.5松永幹夫
2003年8月16日札幌1200m1000万下タカオルビー牝31:08.4菊沢隆徳
2004年8月29日札幌1200m1000万下ロードダルメシアン牡51:09.3松永幹夫
2005年8月28日札幌1200m1000万下モアザンベスト牝31:08.9五十嵐冬樹

このうち2002年にこのレースを勝ったブルーショットガンは、7歳を迎えた2006年春に「阪急杯」に出走。このレースが現役最後の重賞となる松永幹夫騎手を鞍上に、11番人気ながら劇的な勝利をあげ、生涯唯一の重賞制覇を果たしています。

その他、タカオルビーはアイビスサマーダッシュで2着、ロードダルメシアンはオープンクラスで勝利を挙げていますし、モアザンベストに関してはホッカイドウ競馬の五十嵐冬樹ジョッキーが優勝騎手に名を連ねています。

平成後半:重賞昇格、牝馬の勝率は約7割

それまで条件戦として開催されてきた「キーンランドC」を重賞に昇格させるというニュースを最初に聞いた時は少し驚いたのを覚えています。「条件 → オープン → 重賞昇格」というルートを辿るレースは多いのですが、オープン → 条件降格を挟んでの重賞昇格は少し変わったルートに思えたからです。

それでも短距離路線の拡充、サマースプリントシリーズの充実にあって、このキーンランドカップは、秋に向けて重要度の高いGIIIとなっていきます。

それこそ現代において、「スプリンターズS」というGIの“1ヶ月ちょっと前に開催される重賞”というスケジュール感が非常に選びやすい条件なのだと思うのです。

回数施行日競馬場優勝馬性齢
第1回2006年8月27日札幌チアフルスマイル牝6
第2回2007年8月26日札幌クーヴェルチュール牝3
第3回2008年8月31日札幌タニノマティーニ牡8
第4回2009年8月30日札幌ビービーガルダン牡5
第5回2010年8月29日札幌ワンカラット牝4
第6回2011年8月28日札幌カレンチャン牝4
第7回2012年8月26日札幌パドトロワ牡5
第8回2013年8月25日函館フォーエバーマーク牝5
第9回2014年8月31日札幌ローブティサージュ牝4
第10回2015年8月30日札幌ウキヨノカゼ牝5
第11回2016年8月28日札幌ブランボヌール牝3
第12回2017年8月27日札幌エポワスセ9
第13回2018年8月26日札幌ナックビーナス牝5

このレースを叩いてスプリンターズSへの道を作ったのが、2011年の【カレンチャン】でしょう。条件戦からの4連勝目がキーンランドCであり、次走のスプリンターズSでは、単勝1.5倍のシンガポール・ロケットマンらを退け、5連勝でGI初制覇を遂げています。

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ちなみに、注目すべき点として、『夏は牝馬』という格言を体現するかのごとく、牝馬が圧倒的な強さを見せています。平成年間の13回で牡馬が勝ったのは、2008・09・12年の3回、セン馬の17年を含めても4回です。牝馬の勝率が約7割という点には驚きを隠せません。

令和時代:ダノンスマッシュらが優勝

時代が変わって2019年は、世界で活躍する【ダノンスマッシュ】が人気に応えて(当時)重賞3勝目。牡馬の優勝は実に7年ぶりのことでした。しかし2020年・エイティーンガール、2021年・レイハリアと続けて牝馬が勝っており、その傾向は令和も変わっていません。

レースR勝ち馬
2016111.75ブランボヌール
2017108.75エポワス
2018110.25ナックビーナス
2019112.75ダノンスマッシュ
2020107.75エイティーンガール
2021108.25レイハリア
2022

2016年以降のレーティングをみた時に、「GIIIの目安:105ポンド」を遥かに上回り、平均値でも「GIIの目安:110ポンド」付近に収束しています。GII「セントウルS」とも大きな差はなく、実質的に「スプリンターズS」の前哨戦的な位置づけとなっていることもこの数値から窺えそうです。

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