ウィキペディアで学ぶNHKラジオ「ひるのいこい」

【はじめに】
この記事では、1952年11月17日に改名し70周年を迎えたNHKラジオ第1の長寿番組「ひるのいこい」について、ウィキペディアの記載を私(Rx)が補いながら解説していきます。

昔、リスナーだった方は懐かしみつつ、今まさに聴取者の方は過去と比較しながら、新たな発見があれば幸いです。早速見ていきましょう!

ウィキペディアなどに学ぶNHKラジオ「ひるのいこい」

まず日本語版ウィキペディアで、NHKラジオ「ひるのいこい」について概要を確認していきましょう。

ひるのいこい』は、NHKラジオ第1NHK-FMNHKワールド・ラジオ日本で、年末年始などを除く月曜日から土曜日まで、12時台に生放送されているラジオ番組。NHK有数の長寿番組で、1952年11月17日に放送を開始し、今日に至っている。前身番組は、1949年7月放送開始の『農家のいこい』。

ひるのいこい
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』( 以下省略 )

この冒頭部分は非常にコンパクトに纏められています。「ひるのいこい」という番組名になってから、つい先日70周年を迎えており、『NHK有数の長寿番組』とも書かれています。この歴史はNHKの番組としても10本の指に入るレベルのようです。

長寿番組の一覧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

令和時代の番組構成

現在の放送時間は、帯番組の曜日によって異なり、

  • 月~金:12時20分~12時30分(10分番組:楽曲は2曲)
  • 土曜日:12時15分~12時30分(15分番組:楽曲は3曲)【本来の姿】

となっています。頻度としては6分の5が10分番組ですが、本来は土曜日の15分番組のスタイルが本来の形でした。2007年度までは毎日15分番組でしたが、2008年度の抜本的な見直しによって平日が単独番組か内包番組の違いこそあれ「10分番組(楽曲は2曲)」というのが基本になってしまっています。

まずは、平日10分バージョンの番組構成の目安から。(↓)

  • 12:20 お便りパート①(古関裕而作曲のテーマソングに乗せて)
  • 12:21 お便りパート②
  • 12:23 音楽パート1曲目(歌唱あり曲が1番ぐらいまで)
  • 12:25 お便りパート③
  • 12:27 音楽パート2曲目(インスト楽曲がフェードアウト)
  • 12:29 暮らしの文芸(俳句・短歌などを披露しながら番組終了)

音楽パートは、結構渋い選曲(戦前・戦後歌謡や有名歌手ながらメジャーではない楽曲)が流れることもあれば、予想の斜め上の選曲となることもあり、視聴者からは楽しみにされている部分もあります。

一方、2曲目は、NHKの番組とも縁のある楽曲や作曲家の作品が多めな印象です。『暮らしの文芸』に29分キッカリで移らないといけないため、基本的には時間が来たら曲送りをしてフェードアウトとなります。続いて、本来の土曜日15分バージョンでは、

  • 12:15 お便りパート①(古関裕而作曲のテーマソングに乗せて)
  • 12:16 音楽パート1曲目(歌唱あり曲を3分前後)
  • 12:19 お便りパート②
  • 12:22 音楽パート2曲目(歌唱あり曲を3分前後)
  • 12:24 お便りパート③
  • 12:25 お便りパート④
  • 12:26 音楽パート3曲目(インスト楽曲がフェードアウト)
  • 12:29 暮らしの文芸(俳句・短歌などを披露しながら番組終了)

構成が極端に変わる訳ではないのですが、「お便り」の数が1通、歌詞あり楽曲の数が1曲増えるというのが目に見える特徴です。
そして時間的な余裕から、紹介に1分以上かかる長尺のお便りも披露されやすく、また楽曲のオンエア時間もフルに近づくのも特徴です。10分に比べるとゆったりと番組を楽しむことができます。

古関裕而さん作曲のテーマソングにのせて

令和に入って、朝ドラ『エール』で再注目された昭和の大作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)さん。NHKのラジオ黎明期から縁のあった彼が、『ひるのいこい』のテーマソングを作曲し提供し、今も変わらず楽曲たちが使われ続けています。

戦後は、暗く不安な日本を音楽によって明るくするための活動に力を注ぎ、クラシックの香り溢れる流行歌や、勇壮で清潔感のあるスポーツ音楽が大衆の心をとらえた。長崎だけにとどまらず日本全体に向けた壮大な鎮魂歌「長崎の鐘」をはじめ、毎年夏の甲子園に流れている高校野球大会歌「栄冠は君に輝く」や戦後日本の発展の象徴でもある1964年開催の東京オリンピックの開会式に鳴り響いた「オリンピック・マーチ」といったスポーツ音楽、現在も日曜以外のほぼ毎日放送されている『ひるのいこい』や『日曜名作座』といったラジオ番組のテーマ曲、その他にも「フランチェスカの鐘」「高原列車は行く」などの格調高い曲を数多く創作した。

古関は、NHKテレビラジオを通じて各音楽番組にも出演。ラジオドラマ『君の名は』では放送中に、スタジオにハモンドオルガンを持ち込み、生演奏をして劇中伴奏を務め、他の番組でも時折生演奏を行った。

古関裕而
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

どうやら私誤解をしていて番組初回からではないのかも知れませんが、昭和前半からNHKと縁のあった古関裕而さんが、NHKの番組のテーマソングとして『スポーツショー行進曲』、『今週の明星』と並び代表曲のように語られるのが『ひるのいこい』の各テーマ曲です。

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今でもBGMとして掛かる楽曲は全て古関裕而先生が生前に作曲された楽曲たちですので、昔聞いていた視聴者の方は懐かしく、そして新たな視聴者さんもそれぞれに『懐かしさ』を覚えるメロディーかと思います。(権利の関係で私はリンクを貼れませんが)ぜひ番組をお楽しみ下さい。

前身番組からの流れにみるリスナーの変遷

現在はリスナーからのお便りという形になっていますが、10年ほど前までは番組特有のネーミングがありました。まずウィキペディアの記載をみますと、

日本各地の「NHK農林水産通信員」(2006年9月30日まで)「NHKふるさと通信員」(2012年度まで)と呼ばれる、農業協同組合漁業協同組合の職員、農業普及指導員を務める県職員から提供された農業・漁業関連のニュースや季節の話題、リスナーからのはがき、投稿俳句を読む「暮らしの文芸」(2008年度~2010年度は土曜日のみ)を紹介し、それらの合間に音楽をかける。2013年度からは「ふるさと通信員」の名称がなくなったことから、聴取者からのお便りに統一された。

ひるのいこい
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

最近聞いていなかった方からすると、

えっ、「農林水産通信員」とかって名称なくなっちゃったの!?

って驚かれるかも知れませんが、既に10年近くそういった状況が続いています。昭和からしばらくこの「農林水産通信員」などと呼ばれる方々がプロフェッショナルなお便りを送っていたのですが、その前の番組初期(1952年が第1期)は「RFD(Radio Farm Director)通信員」と呼ばれてたそうです。『RFD通信員』などで検索すると幾つか論文もネット上にありますので、興味ある方はご参照を

また、JAcom(農業協同組合新聞)さんの以下のコラムも(番組名を変換する誤りはありますが)興味深い内容となっています。

戦後直後の1949年に「農家のいこい」と「職場のいこい」という番組が交互に放送されていたものの、評判の良かった「農家のいこい」が一本化され、番組名を『ひるのいこい』と農家に限定しないこととしたのが実情のようです。

「RFD」の名のあるとおり、農協・漁協や各自治体にお勤めの方などが作文されていたこともあって、1952年当時の原稿などを耳にすると、非常に「農家」の方の専門向けな内容で、戦後直後の厳しい農作環境が窺えるものとなっていました。言ってしまえば、午前中の農業などを終えてお昼休みを取っている方向けの番組であったため、内容が「第一次産業」に偏っていたのは至極当然の帰着だったのです。

平成の初頭には、『昭和の農村の原風景』といった観点からも、大正時代生まれの方々もご存命だったこともあって番組は支えられていましたが、第一次産業の衰退が21世紀に決定的になるのと合わせて、徐々に「農業」路線の比重が弱まり、『(昭和の古き良き)ふるさとのノスタルジー』に重きが置かれるようになりました。また、専・兼業農家のみならず、家庭菜園クラスの内容にシフトしていきます。

平成以降に聞き始めた方はひょっとすると「農業や自然に関する話題が多いな」と感じたかも知れませんが、むしろこれでも現代のレベルに合わせた、昭和から少しずつ濃度が薄まった結果として今がある訳で、暮らしの文芸(短歌や俳句)も自然の移ろいを投影したものとなっている点が特徴の番組とも言えるのです。

そして、番組当初は多かった明治・大正時代生まれの方々も、戦前生まれの方々も比重がどんどんと減っていった今や、戦後生まれの視聴者が大半となっています。ある意味で自然に関わる方々の聴取率は依然として高いかも知れませんが、かつてに比べて世代は大きく若返っています。

その様子が窺えるのが、掛かる楽曲の傾向です。『ひるのいこい』という番組のイメージや紹介されるお便りの内容との落差が大きいのは、『リスナーにとっての青春時代の楽曲』が時代につれて若返り続けている点にあるとも思いました。例えば「NHKのど自慢」でも農家をされている若い方が出場されるのを見かけますし。

その他
司会者がふるさと通信員を紹介する際、東京都の場合は“東京の××”と紹介し、46道府県の場合は“○○放送局の××”と紹介していた。ただし、津放送局のみ“三重県・津放送局の××”と紹介していた。

2020年4月よりそのリスナーが住んでいる市までは紹介せず『○○(都道府県)にお住いの××(ラジオネーム)さんからのお便りです。』とラジオネームでも紹介される様になった。

( 同上 )

かつては、農協・漁業や地方公務員などが担ってきた「お便り」を、一般聴取者にも開放したことで、当然、番組に送られるお便りの内容が変わってきて、それに連れて番組コンセプトも少しずつ変わってきた。それが平成・令和の時代に少しずつ今後も変わっていくのだろうと予想されます。

番組進行のアナウンサーについて

現在の番組進行アナウンサーは、平日は2019年度から「吉松欣史」アナウンサー、土曜日は2020年度から「石井かおる」アナウンサーが担当しています。個人的には、吉松アナウンサーは少し大袈裟な朗読ぶりなので、石井アナウンサーの落ち着いた語り口の方が過去と比べると合っているかなという風には感じています。数年ごとに担当が代わり、番組のイメージも変わるのでそこもお楽しみ下さい。

20世紀に遡ると、例えば、1万回記念の1982年当時は『にっぽんのメロディー』でもお馴染みだった【中西龍】アナウンサー、そして1992年の40周年特番で“原稿朗読の加賀美幸子”こと【加賀美幸子】アナウンサーも、長らく担当してきたと聞いています。そして平成後半の鎌田正幸アナや佐塚元章アナなどしかり、不必要に感情を乗せない落ち着いた語り口調が本来の持ち味なような気がしていました。

いずれにしても、スムーズに耳に入ってきて、情景や心象が浮かぶような朗読や曲紹介でなければ、『ひるのいこい』という10~15分の短い番組で「いこい」を得られないので、中堅以上が腕を見せるそんな番組だったようにも思えます。皆さんの思い出のアナウンサーがいましたら、ぜひコメント欄にお寄せ頂ければと思います。

歴代の記念番組について(判明分)

70周年を迎える長寿番組「ひるのいこい」は、基本的に淡々と短尺番組を続けていくスタイルを取っていますが、著名人・一般人を問わず視聴層が多かったことから、10年に1回といったスパンで特番が放送されてきたことがウィキペディアなどからも断片的に窺えます。例えば、

  • 30周年&1万回記念
    1982年11月22日・23日・24日には番組の一万回を記念した特別企画として、ひるのプレゼントとの特別編「ひるのいこいプレゼント」を総合テレビと同時放送を行った [5][6][7]
  • 40周年記念
    1992年11月23日には番組開始40周年特別番組「特集・ひるのいこい -ふるさとを伝えて40年-」が放送された[8][9][10]。(放送時間は過去最長の午前9時05分から午後3時55分まで)
  • 50周年記念
    NHKクロニクル・過去の番組表によると、「特集・ふるさとを見つめて~“ひるのいこい”50年」がラジオ第1で放送。2002年11月16日(土)の午後0時15分から中断を挟んで午後1時30分まで。ゲストに「やくみつる」さん。
  • 60周年記念
    NHKラジオ第1で、2012年11月17日(土)に「ふるさとを見つめて~ひるのいこい60年~」が放送。午後0時15分から55分まで佐塚アナウンサーが担当。

そして、2022年11月23日(水・祝)には、70周年記念番組が放送される予定とのことです。ぜひ奮ってお聞き頂ければと思います。

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