【はじめに】
皆さん、早速ですが、「異常震域」という言葉を見た事ございますか?
あれでしょ? モンハンのクエスト。ティガレックスを2体同時に……
すみません、そちらではない方です(^^ 深いところを震源とする地震(以下「深発地震」)が起きた時に震央から遠いところで震度が大きくなる現象(地学用語)の方です。
最近は特に関東圏などで有感の地震となるとTwitterのトレンド入りもしますが…… 結論からすると、この「異常震域」という言葉が生まれたのは、今から100年近く前(およそ大正時代)でして、昭和の時代には「異常」だと思われていた部分の理由が解明されています。
大正時代あたりから使われてきた表現ということで、そのネーミングが解明された後、実に令和の時代まで使われ続けているのですが、そうした変遷も十分把握せずに「異常だ、異常だ」と騒ぎ立てては、関東大震災の頃と大差が無くなってしまいます。
令和に生きる皆さんは、「異常震域」という言葉をしっかりと何処かのタイミングで理解し、不必要に怖がらない様にして頂ければと思う次第です。
「異常震域」は大正時代の言葉
異常震域(いじょうしんいき、英語: abnormal seismic intensity)は、通常ならば震源地(震央)で最も大きくなり、中心から同心円状に広がりながら小さくなるはずの地震で観測される震度(あるいは加速度)が、通常とは異なる傾向を示す現象、また、そうした震度分布がみられた地域のことである。
解説
異常震域
震源地より遠く離れた所で異常に震度が高くなる現象である。かつて地中に地震が伝わる特別な抜け道があると考えられ、地震みち(じしんみち)と呼ばれていた[1]。 1920年代には異常震域という用語が用いられるようになった[2]。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
このように、ウィキペディアの「異常震域」のページに書かれているとおり、1920年代(脚注にある記事は大正時代の終わり頃の文章を引用している。そのため本記事では『大正時代の頃』としている)には『異常震域』に類する言葉が使われていました。
理由は「深い地震だから」と、昭和の時代で既に明確
しかしそれから数年後、まだ20代だった和達清夫氏によって『異常なる震域』の原因が特定されます。「深いところでも地震が発生する」という(昭和以降においては当たり前の)概念です。
深発地震面は、断面図上に震源分布をプロットしていくと現れる。これを1927年に初めて発見したのが和達清夫であった。1930年代には日本の地震学研究者の間では広く認知されていた。一方、欧米では同時期に米国のヒューゴー・ベニオフが観測結果から深発地震の存在を予見しており、1950年代に研究成果を挙げて学界でも広く認められた。当時は地震は深くても数十kmほどまでの浅いところでしか発生しないと考えられており、この発見が地震研究にも大きな影響を与えた。以前は欧米を中心に深発地震面を「ベニオフ帯(Benioff Zone)」と呼んでいたが、近年は和達の功績を含めて「和達-ベニオフ帯」と呼ぶことが多い。
深発地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ですから、『異常震域』という言葉が大正の終わりに生まれますが、昭和時代の(遅くとも)前半には『異常』と思われていたことの原因は特定されていて、『異常』でも何でもなくなっていたはずです。
- 1928年(昭和3年)『深海地震の特異性及び三種類の地震に就いて』
- 1932年(昭和7年)『深發地震に就いて』
参考までに、昭和1桁台の研究を2本ほど示しましたが、この時代においては『深』という漢字1字が入ること自体、かなり先進的だったのではないかと感じますね。
【まとめ】「異常震域」という言葉を現代も使い続けるセンス
それでも、過去に使われていたという経緯(しきたり)などから、「異常震域」というフレーズが広く用いられてきました。ただ、個人的には、
- どこらへんが「異常」かといえば、『浅発地震』との比較での意味合いでしかない。 ≒
『浅い地震』のように、震央に近い所の方が揺れが大きく同心円状となるのが「通常」で、そうでない『深発地震』は、同心円状でないから「異常」という理屈になります。 - ただ、私から言わせれば、『浅いのに同心円状じゃない』&『深いのに同心円状』こそが、辞書的な意味での「異常」であって、『深い地震で関東地方などが大きく揺れる』ことは、(確かに浅い地震とは違う分布になるけれど、)むしろ「通常」と認識しています。
- 少なくとも、「異常震域」が起きたから、『何か異常なことが起きているんじゃ……』などと不安に思うことは、(現時点での知見からすると、確実なことは分かっていないので、)ナンセンスかと個人的には思いますね。
学術的・教科書的には仮に適当だったとしても、『災害報道のあり方』などが見直されつつある現代において、今一度考える時期に来ているのではないかなと感じます。
例えば、以下のメディア(YouTubeの動画解説)などでは、「異常震域」について短く纏めていますので、どうぞ参考になさってください。
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