競馬歳時記【11月2週】「デイリー杯2歳S」

【はじめに】
重賞競走の歴史を振り返りながら季節の移ろいを感じる「競馬歳時記」。今回は「デイリー杯2歳S」の歴史をWikipediaと共に振り返っていきましょう。

デイリー杯2歳ステークス(デイリーはいにさいステークス)は、日本中央競馬会 (JRA) が京都競馬場で施行する中央競馬重賞競走GII)である。寄贈賞を提供するデイリースポーツは、神戸新聞社が発行するスポーツ紙。

デイリー杯2歳ステークス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

昭和時代:関西2つ目の現2歳重賞として創設

先週の「京王杯2歳S」でも書きましたが、昭和20年代に創設した東西の年末の現2歳重賞に続き各地の現2歳重賞が創設されたのは昭和40年代に入ってからでした。

関東は「朝日杯3歳S」が年末に行われる前に「京成杯3歳S」が創設。そして関西では、東に次ぐ翌1966年に「阪神3歳S」の前に「デイリー杯3歳S」が創設されたのです。ちなみに夏競馬で北海道の現2歳重賞が創設されたのもこの1966年でした。

1960年代:冒頭4回でクラシックホース3頭輩出

回数施行日競馬場距離優勝馬性齢タイム
第1回1966年11月23日京都1600mヤマピット牝21:38.0
第2回1967年10月10日阪神1400mコウユウ牝21:25.2
第3回1968年10月10日阪神1400mファインハピー牝21:25.7
第4回1969年10月5日阪神1400mタニノムーティエ牡21:24.1

初回は京都のマイル、そして2回目からは阪神競馬場の1400m戦となりました。

1966年9月、ヤマピットは京都競馬場新馬戦でデビューし、1100メートルを1分05秒5のレコードで逃げ切って、2着に大差を付けて勝った。このレコードは50年以上経った2018年現在も破られていない。

2戦目は不良馬場の3歳ステークスで、同じように新馬戦をレコード勝ちしてきた牡馬が相手だったが、ここでも大差で逃げ切った。11月の楓ステークスでも従来の記録を1秒半短縮する1分31秒5で逃げ切り、2週間後のデイリー盃3歳ステークスでも逃げ切り勝ちを収め、ふたたび記録を1秒半縮める1分38秒0のレコードを樹立した。

デビュー以来すべて逃げ切りの無敗の4連勝で、不良馬場の1戦をのぞくとすべてレコード勝ちのヤマピットは、関西の3歳チャンピオン決定戦である阪神3歳ステークス単勝支持率50パーセントを超える本命になった。池江泰郎が騎乗したヤマピットは、内側の4番枠からスタートしたがほかの馬に包まれてしまい、デビュー以来はじめて先頭に立てないまま3着に敗れた。しかし5戦4勝のヤマピットはこの年の最良3歳牝馬に選ばれた。

ヤマピット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

初回を勝ったのは昭和中期の関西を代表する名牝【ヤマピツト】で、2回目も社台初期の名牝【コウユウ】が勝つなど、2年連続で「牝馬クラシックホース」を輩出するという豪華な幕開けを飾りました。

そして第4回に初めて牡馬としてこのレースを制した【タニノムーティエ】は、翌年、関西発の二冠馬となるなど、1960年代の時点でクラシックホースを3頭輩出していました。

1969年に中央競馬でデビューし、同年の関西の3歳王者戦・阪神3歳ステークスに優勝。翌1970年のクラシック三冠路線では関東のアローエクスプレスとライバル関係を築き、その対戦は当時色濃かった東西対抗意識のなかで「A・T対決」とも呼ばれたが、同馬を退けて皐月賞東京優駿(日本ダービー)の春クラシック二冠を制した。

同年秋には史上3頭目の三冠達成への期待を掛けられるも、夏の休養中、競走能力へ大きな影響を及ばす呼吸疾患の喘鳴症を発症し、三冠最終戦・菊花賞では大敗を喫して引退した。

タニノムーティエ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

1970年代:キタノカチドキが4年ぶりに勝ち馬から二冠馬に

1967年から1973年まで1400mで開催されてきた「デイリー杯3歳S」は、1974年から1977年まで阪神1200mに短縮されました。阪神1400m時代の最後に勝ったのが、二冠馬となる【キタノカチドキ】です。

2戦目は10月7日のデイリー杯3歳ステークス。枠入り不良のために発走が9分遅れるアクシデントがあったものの、重馬場を苦にせず、スタートしてから3頭で競い合う形になり、第3コーナーで1頭、第4コーナーで1頭競り落として、直線で2着馬のフジノタカザクラに9馬身の大差をつけて圧勝した。

その後、11月10日に京都競馬場で行われたオープンも勝ったキタノカチドキは無敗のまま、12月9日、関西の3歳(現2歳)馬NO.1決定戦の阪神3歳ステークスに出走した。このレースでは、2番手の位置から最後の直線に入って抜け出し、2着馬のイットーに3馬身差をつけて勝利した。4戦負けなしでこの年を終えたキタノカチドキはこの年の最優秀3歳牡馬に選出されている。

キタノカチドキ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そして、1978年からは1400mに(4年で)復帰し、約20年間「1400m」という距離が維持されます。

1980年代:ニホンピロウイナーが3連勝で重賞初制覇

1984年にグレード制が導入されると、いきなり「G2」に格付けされます。ただ、ここまでの実績を思えば、関西のG2として君臨し続けていることは納得です。

第15回1980年10月18日阪神サニーシプレー牡21:24.9
第16回1981年10月31日京都リードエーティ牡21:24.0
第17回1982年11月6日京都ニホンピロウイナー牡21:23.3
第18回1983年11月5日京都ロングハヤブサ牡21:22.9
第19回1984年11月3日京都タニノブーケ牝21:23.9
第20回1985年11月2日京都ヤマニンファルコン牝21:23.7
第21回1986年11月1日京都ダイナサンキュー牡21:23.4
第22回1987年11月14日京都ダイタクロンシャン牡21:24.3
第23回1988年11月12日京都アイドルマリー牝21:24.1
第24回1989年11月11日京都ヤマニングローバル牡21:23.1

さてそれより少し前、1982年にこのレースを制したのは、後の名スプリンター【ニホンピロウイナー】でした。ウィキペディアでは競走成績の表がかなり間違っていますが、距離を1400mに伸ばしても全く問題としない強さで3連勝を遂げていたのです。4戦目の阪神3歳Sは2着と初黒星。

平成・令和時代:短距離からマイルへ

平成前半:笠松所属の馬が2年連続優勝

1989年11月11日京都1400mヤマニングローバル牡2JRA1:23.1
1990年11月10日京都1400mノーザンドライバー牝2JRA1:23.1
1991年11月2日京都1400mニシノフラワー牝2JRA1:23.2
1992年11月7日京都1400mビワハヤヒデ牡2JRA1:21.7
1993年11月6日京都1400mボディーガード牡2JRA1:22.0
1994年10月22日阪神1400mマキシムシャレード牝2JRA1:22.3
1995年10月21日京都1400mロゼカラー牝2JRA1:22.2
1996年10月19日京都1400mシーキングザパール牝2JRA1:21.3
1997年10月18日京都1600mボールドエンペラー牡2JRA1:35.6
1998年10月24日京都1600mエイシンキャメロン牡2JRA1:36.0
1999年10月23日京都1600mレジェンドハンター牡2笠松1:34.6
2000年10月14日京都1600mフジノテンビー牡2笠松1:34.6

初回から3連覇したように牝馬も活躍するレースだった「デイリー杯3歳S」は、「ファンタジーS」が創設されるまで牝馬が非常に強く、1990年代では、ニシノフラワー、ロゼカラー、シーキングザパールなどが牡馬を相手に勝っています。

また、牡馬では1992年に【ビワハヤヒデ】が1分21秒台で勝っており、生涯唯一の短距離戦でもレコード勝ちを収めています。そして、1997年にはマイル戦に再延長されました。

そして、1999年から2000年にかけては、岐阜県・笠松競馬に所属する地方馬がこのレースを連続で制し、まさに時代を感じさせる中央制覇の歴史を積み重ねていました。

レジェンドハンター(欧字名:Legend Hunter、1997年5月26日 – 2008年12月13日)は、日本競走馬。主な勝ち鞍に1999年デイリー杯3歳ステークス2003年全日本サラブレッドカップ

笠松競馬に所属しながら中央競馬のレースに挑戦、前述の通り1999年のデイリー杯3歳ステークスを制したほか、朝日杯3歳ステークスでは1番人気に支持され2着となるなど活躍した。

レジェンドハンター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そして21世紀に入っては、ファストタテヤマ、メイショウボーラー、ペールギュント、マルカシェンクなど早くから活躍し、古馬にかけて息の長い現役生活を遂げた馬が勝っています。

平成後半~令和時代:牡牝問わず連勝馬が続々

平成年間の後半でいくと、2010年にこのレースを制した【レーヴディソール】がファンタジーSでなく牡馬混合のこのレースを勝ち、翌年のチューリップ賞までG1を含む無傷の4連勝を達成したのが非常にドラマチックでした。

開催日レースR勝ち馬馬齢タイム
2016年11月12日京都107.50ジューヌエコール牝21:34.6
2017年11月11日京都108.50ジャンダルム牡21:36.3
2018年11月10日京都106.50アドマイヤマーズ牡21:35.4
2019年11月9日京都107.00レッドベルジュール牡21:34.5
2020年11月14日阪神106.50レッドベルオーブ牡21:32.4
2021年11月13日阪神109.50セリフォス牡21:35.1

近年でも、ジャンダルム、アドマイヤマーズやセリフォスが連勝でこのレースを制し、次走のG1でも連対を遂げる活躍を見せています。レースレーティングでは、「2歳G2の目安:105ポンド」を常に超え続け、2021年には「G1の目安:110ポンド」にも迫る109.50ポンドを叩き出しています。

初回からクラシックホースを輩出してきた「デイリー杯2歳S」は、果たしてどの馬が関西から名乗りをあげるのか、楽しみにしましょう。

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