【はじめに】
この記事では、(一般参加者としての)「プレバト!!」俳句査定に最多出場していることでもお馴染みの、Kis-My-Ft2(キスマイ)の二階堂高嗣さんの作品を振り返っていきます。
Kis-My-Ft2(キスマイ)の他メンバーの投稿済みの記事はこちらからどうぞ(↓)
一般参加者時代
0句目(2016/03)『窓際に寂しさ残る桜草』
「プレバト!!」俳句査定への初挑戦は、2015年8月と、出場回数に差のある他のメンバーと比べても、そこまで早いということはありませんでした。むしろ、隔月というほどの頻度の高さで出場したことで出場回数を積み重ねていくことになった訳です。
二階堂さんのバラエティ番組に映えるお人柄もあったと思いますが、例えば、3句目に披露した作品『飛び立とう新たな世界let’s go』(5位20点)のような句柄も映えたのだと思います(^^
上の句が詠まれた翌月(2016年3月)、自身初の「才能アリ」(厳密に言えば初回から3回連続で才能ナシだったため、凡人以上が初)のビッグチャンスを迎えます。その時に詠んだ句がこちらでした。
『窓際に寂しさ残る桜草』
桜草というのは、江戸時代に武士の間で流行するなど俳句にも良く詠まれる晩春の植物で、文字面だけで上の句を鑑賞すれば、非常に良い句だと感じます。夏井先生の添削の様に『窓際に残る寂しさ桜草』と中七を逆にするだけでも更に高得点が狙える句……かと思っていたのですが!
『歳時記を詠んでいて見つけた』(← そのこと自体は殊勝な心掛け)と本人は仰るも、恐らくその歳時記には絵などがなかったのでしょう。二階堂さんが「窓の外にある桜の木」(←当然、桜の木とは別)と口走ってしまったことで夏井先生に呆れられてしまい、当初「才能アリ1位70点」だったものが5点減点され、「凡人2位65点」に降格させられてしまったのです!
余計(?)な一言(説明)によって、せっかくの高評価を取り逃す結果となり、初の「才能アリ」は幻と消えてしまいました。(それも二階堂さんらしいと言えばらしいのでしょうが^^)
1句目(2016/08)『盆踊り遠のいて行く兄の背か』
晴れて才能アリを獲得することとなったのは、初挑戦からちょうど1年(364日)後となる2016年8月の放送回。こちらは全く言葉に間違いや紛れのないストレートな17音でした。
『盆踊り遠のいて行く兄の背か』
我々が想像する以上に、古くから根付いており由緒ある風習として、そして季語としての「盆踊り」には深い意味が込められています。故に夏井先生は、「『兄』というのが既に亡くなった存在」だという風に深読みをしていて、作者とのギャップに驚かれたようですが、それだけ“深みのある俳句”を詠んだという事実は評価に値すると思いました。
2句目(2019/11)『竹林に華やぐ心神の旅』
初挑戦から1年で才能アリにたどり着いた二階堂さん。メンバーが特待生・名人に昇格していく中で、二階堂さんは年に5~6回と出場するも、7回連続凡人を含め、約3年間で14回挑戦し、凡人11回(才能ナシ3回)という厳しい時期が続きました。
そんな連敗にストップを決めたのが、2019年11月に3年3か月ぶりに決めた「才能アリ」のこちらの句です。冬の始めに披露したこの句は、2位ながら70点で手堅い作品だったと言えるでしょう。
『竹林に華やぐ心神の旅』
もはや俳句初心者の方は、どれが「季語」かも識別困難かと思います。竹林(竹やぶ)は季語っぽいですが季語ではありません。季語は下五の「神の旅」というものです。
皆さんは、日本の十月の異名に「神無月」というものがあるのをご存知でしょうか。そして、その神様が集う出雲大社では「神在月」ということまでご存知の方は少ないかも知れません。全国の神々が出雲に集う……その旅立つ頃を指す季語が「神の旅」なのだそうです。
この句でついに初めて「添削ナシ」の栄誉に浴することとなった二階堂さんは喜びが顔から溢れていましたし、夏井先生も正直驚いておられましたが、ラジオにも聴取者からの応援の声が寄せられる中での久々の才能アリに安堵しておられるようにも見えました。
3句目(2020/04)『小高の地心に刻む春日傘』
二階堂さんが、初めて2回連続の「才能アリ」を決めたのが、約半年ぶりの出演となった2020年4月の放送回です。非常に強い言葉を畳み掛けて、力で才能アリをもぎ取りました。
『小高の地心に刻む春日傘』
福島県南相馬市の小高区の地名(そもそも「地名」は季語に匹敵するぐらい強い分量)を上五に置いた上に「小高の地」と壮大に始まります。更に中七が「心に刻む」と壮大なために、本当に17音の器に盛るにはギリギリの分量だったかと思います。
梅沢永世名人の仰る通り、「心に刻む」という中七が掛かるのが「春日傘」か「小高の地」なのか意図が分かりづらかったため、夏井先生が2つ添削例を示していましたが、『季語とのバランス/強弱』が取れるようになったら『特待生』が狙えるとの言葉をいただいていました。
4句目(2022/02)『春の虹10周年の腕時計』
詠んでいるのが芸能活動をされている方だという前提に立てば、「◯◯活動10周年」という節目を記念するものだと想像するのが基本線でしょう。そして、キスマイ・二階堂さんの詠んだ句だという前提に立てば、間違いなく「キスマイ」としての10周年で間違いないはずです。
『春の虹10周年の腕時計』
一方で、例えば「会社の創業10周年」であるとか「結婚10周年」であるとか、『10周年の腕時計』がどんな歴史を紡いできた積み重ねなのかは想像の余地が結構広くあります。
『字余り』や『字足らず』、『破調』、『本意と全く違った季語の使用』、『お元気なのに「亡き父」にする』などの数々の凡人・才能ナシを重ねてきた二階堂さんですが、定型で作るとここまで手堅い句ができるのだと驚かされると共に、ファンにとって特に心に残る句ではないかと感じました。
5句目(2022/06)『梅雨曇早朝ロケのカップ麺』
2016年も達成できなかった「年2回」の才能アリを初めて決めることとなったのが2022年です。6月30日の段階で既に梅雨明けが発表されて、東京では連日猛暑日が続いていた時期でしたが、「梅雨」をテーマに句が披露されました。その句がこちらです。
『梅雨曇早朝ロケのカップ麺』
この回は平均点が70点オーバー、最下位が史上最高得点で、4人中3人が才能アリという記録的なハイレベル回でした。これが数年前ならば、上位3人が才能アリでも二階堂さんが最下位で凡人か才能ナシという定番の流れになっていたのですが……、元特待生の犬山さんと1位を争う発表順となりました。
結果的に犬山さんが75点という高得点で特待生復帰を決めたものの、2位ながら71点は高評価だったと言える結果。添削も『梅雨曇』を『梅雨冷や』とするハイレベルな季語と切れ字の使い方のみに留まり、好印象だったことが伝わりました。
直近10回を見ると、「ナシ→ナシ→ナシ→凡人→凡人→ナシ→ナシ→アリ→ナシ→アリ」という不安定な状況が続いていますが、ジャニーズの特待生の先輩達も必ずしもハイアベレージで昇格した訳ではなかったですから、今後の展開次第で悲願の特待生という可能性も……あるのかな? と微かに期待していきたいと思います。
6句目(2022/10)『夕月夜一人暮らしの光熱費』
34度目の挑戦となる2022年10月27日の回は、ハイレベルな出場者4人が「才能アリ」特待生を目指しての戦い。2位の「こがけん」さんも特待生に王手となる才能アリを獲得する中、例によって最後まで残された二階堂さん。1位と最下位(才能ナシ)を争ったのは、勝村政信さんでした。
『セルフうどん屋』に行ったことがないというジャニーズアーティストらしいエピソードを浜田さんからイジられ、不安げな表情を浮かべるも、結果的には勝村さんの倍以上となる71点でのハイレベルな1位となりました。しかしその得点にも納得の素晴らしい作品でした。
『夕月夜一人暮らしの光熱費』
あくまでも兼題写真は発想の出発点。自分に経験がないテーマから、自分の経験のあるところ(セルフ=ひとり=一人暮らし)に連想させ、そこの実体験を季語と取り合わせて17音に描く。
上五に季語を据えて、その他の12音で季語と関係ないフレーズをあわせるという「基本の型」をマスターして、こちらも特待生に王手をかけるような高評価(添削ナシ)となりました。一気に特待生を認めなかったのは、犬山さんのように“剥奪”を経験しないためにという夏井先生なりの配慮の模様です。
7句目(2022/11)『初霜やオーディション会場不安』
2回連続「才能アリ」から2ヶ月連続出場となった二階堂さん。この回も才能アリを獲得し、これで3回連続才能アリ(しかも2回連続1位)となり、特待生昇格を確信して満面の笑み。詠んだ俳句が、
『初霜やオーディション会場不安』
こちらは、5・9・3とも言える『不安』をストレートに表した韻律になっています。自然に詠んでも「不安」の前に一拍置かれ、オーディション会場を前にして深呼吸をするような効果が出ています。
ただ、3回連続才能アリを獲得するなど『基本の型をマスター』したことを高く評価した反面、『基本の型以外をマスターできないと特待生として通用しない』との親心から、今回での昇格は見送り、もう1回見たいと告げられると落胆の表情を隠せない様子でした。
2023年になって披露した句も、音数は五七五の定型を崩してはいますが、結局、「上五5音+その他12音」という基本の型の枠組みを脱せていません。具体例をみると、
凡人60点 『初虹レッスン場に向かうメモ見る』 ↓ 『初虹やレッスン場に向かうメモ』
原句は「4・7・3・4」で計18音。確かに五七五からは外れています。しかし、添削後の定型に直された句と比較しても意味は殆ど変わっていません。夏井先生が「基本の型」と言っているのは、上五で独立させ、その他の12音のフレーズと『取り合わせる』ような構図のものを指しているのです。
「初虹」という4音にしてみたところで、その後のフレーズ(ここでは14音ですが)と『取り合わせ』るような格好でくっつけているのですから、音数調整がなされていないだけで「五七五」の基本の型を逸脱していないのです。
と言っても、なかなか違いが理解できないのが一般的だと思うので、ここから敢えて「二階堂」さんが詠んだ過去の作品の中から、夏井先生が求めている方向性の(基本以外の)型の句を紹介しましょう。
- 10句目:凡人(7・5・5=17)『金剛峯寺に爽やかな顔ぶれか』
- 18句目:ナシ(9・5・3=17)『七福神詣で気分良く笑顔』
上の句はどちらも足して17音となる作品ではありますが、良く見ると「五七五」の定型とは少し違った形になっています。「金剛峯寺に」の句は定型が崩れた中でもオーソドックスな七五五のリズムで、東さんなど名人も良く使う型です。
そして「七福神詣で」という新年の季語を使った句の方は、たしかに音読する時は「七福神」と6音で一呼吸置くかも知れませんが、本来は「七福神詣で」というひとまとまりが意味の切れ目であり、そこから後の8音も「七五」のリズムを逸脱しています。
まず、二階堂さんは自身も作ったことのあるこうした「5+12」ではない型があることを正確に理解し、その上でその型を意識して作ることが出来るようにならなければ、特待生への道は開けません。
加えて、本当に特待生となるためには、『初虹レッスン場に向かうメモ見る』(4・7・3・4)の句が五七五の定型に添削しうるように、『五七五の定型でない方が良い内容か』を見極められる判断力が試されることとなります。慣れれば幾らでも定型を外した作品は作れます。立川志らくさんなんかは定型を外した句の方が多いほどです。しかし、それが『最良の判断』かは別問題で、五七五の方がしっくり来ることの方が多いのも事実。そこの見極めができるようにならなければ、特待生5級から降格してしまい、特待生が剥奪されることも想定されます。
まずは、五七五ではない「句またがり」などの基本以外の型をいつ二階堂さんが理解できるかに注目をしていきたく思います。
To Be Continued…
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