【はじめに】
この記事では、気象官署「小名浜(いわき市小名浜字船引場19:小名浜特別地域気象観測所)」で観測された過去の強烈な揺れをまとめていきます。
気象官署「小名浜」について
まずは、福島県浜通りに現在設置されている気象庁の震度観測点をご覧ください。一番上が今回取り上げる気象官署「小名浜」です。
福島県 浜通り | いわき市 小名浜 | いわき市小名浜字船引場19 (小名浜特別地域気象観測所) | 36 | 56.9 | 140 | 54.2 | 192307 |
福島県 浜通り | いわき市 三和町 | いわき市三和町合戸字内畑280 (水石山公園) | 37 | 6.3 | 140 | 47.9 | 200707021200 |
観測が始まったのは1923年(大正12年)7月だそうで、今年(2022年)で100周年ということになるみたいです。そして、観測が始まって1ヶ月あまり後に「関東大震災」が起きています。(小名浜でも強震を観測)
また、非常に広い「いわき市」では、市内には2007年に「三和町」(水石山公園)の観測点が設置されまして、2011年の「福島県浜通り」の大地震では夥しい数の地震を観測しました。
100年前と直近で強い揺れが頻発
「小名浜」は、福島県の南東部に位置していて、福島県内の津波観測の歴史も古い港町です。1920年代以降、10年刻みで「震度5以上」の揺れを観測した回数を、気象庁の「震度データベース検索」から一部加工して引用します。
期間 | 5弱 | 5強 | 6弱 | 合計 |
---|---|---|---|---|
1920年代 | 4 | 0 | 0 | 4 |
1930年代 | 6 | 0 | 0 | 6 |
1940年代 | 1 | 0 | 0 | 1 |
1950年代 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1960年代 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1970年代 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1980年代 | 2 | 0 | 0 | 2 |
1990年代 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2000年代 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2010年代 | 2 | 2 | 1 | 5 |
2020年代 | 3 | 0 | 0 | 3 |
合計 | 18 | 2 | 1 | 21 |
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 2022/06/30 23:59
・観測された震度 : いわき市小名浜 で 震度5弱以上 を観測
・地震回数の集計 : 年代別回数
東日本大震災があった2010年代以降に回数が多いのは分かりますが、1920~30年代にも集中した時期があったことが分かります。2022年5月時点で、震度5以上の地震は21回観測されています。
(↓)下表に全国のデータを纏めていますので、興味のある方はご参照ください。
それでは、年代別に見ていくことにしましょう。
大正・昭和時代:震度5(強震)13回
人間が体感で観測していた時代、すなわち平成初頭以前の70年あまりで、合計13回「震度5(強震)」を観測しています。下に示したのがその一覧となります。
地震の発生日時 | 震央地名 | 深さ | M | 最大震度 | 「小名浜」 |
---|---|---|---|---|---|
1923/09/01 11:58:31.6 | 神奈川県西部 | 23 km | 7.9 | 震度6 | 震度5 |
1924/01/15 06:05:20.7 | 千葉県東方沖 | 0 km | 6.0 | 震度5 | 震度5 |
1924/08/15 03:02:37.2 | 茨城県沖 | 0 km | 7.2 | 震度5 | 震度5 |
1927/10/11 10:12:59.7 | 茨城県沖 | 35 km | 5.9 | 震度5 | 震度5 |
1935/07/19 09:49:46.0 | 茨城県沖 | 30 km | 6.9 | 震度5 | 震度5 |
1936/11/03 05:45:57.1 | 宮城県沖 | 61 km | 7.4 | 震度5 | 震度5 |
1938/05/23 16:18:29.7 | 茨城県沖 | 0 km | 7.0 | 震度5 | 震度5 |
1938/11/05 17:43:18.4 | 福島県沖 | 43 km | 7.5 | 震度5 | 震度5 |
1938/11/05 19:50:14.9 | 福島県沖 | 30 km | 7.3 | 震度5 | 震度5 |
1938/11/06 17:53:51.9 | 福島県沖 | 10 km | 7.4 | 震度5 | 震度5 |
1942/09/09 01:07:33.3 | 茨城県沖 | 76 km | 6.2 | 震度5 | 震度5 |
1987/02/06 22:16:15.3 | 福島県沖 | 35 km | 6.7 | 震度5 | 震度5 |
1987/04/07 09:40:43.4 | 福島県沖 | 44 km | 6.6 | 震度5 | 震度5 |
・地震の発生日時 : 1919/01/01 00:00 ~ 1988/12/31 23:59
・観測された震度 : いわき市小名浜 で 震度5弱以上 を観測
最も古いのが1923年9月1日、前述した「関東大震災(大正関東地震)」です。気象官署の中で、最も北にある地点で強震を観測したのがこの「小名浜」でした。観測が始まって間もない頃です。
その後も、1938年までの15年間で計10回の「震度5(強震)」を観測しています。(1924年1月の地震は少し現代からすると上振れしていた可能性があるかも知れませんが)殆ど「現在でも震度5弱以上を観測していて不思議はない」大規模な地震ばかりです。
この時代だと、1938年は5月からの半年間で計4回の強震を観測しています。「塩屋崎沖地震」などとも呼ばれる群発的な地震活動です。(↑:詳細は上の記事からどうぞ)
また、1942年から1987年までの45年間は、一度も「震度5」を観測していません。ただ、1978年の「宮城県沖地震」などは発生していますので、「震度4以下」でもある程度の揺れには襲われてきたのだとは思います。むしろ、地震常襲地帯ですし、職員も判断に迷ったケースがあったのではないかと個人的には考えてしまいますね。(現行の震度観測手法ならば違った結果だったかも知れません。)
平成・令和時代:2022年5月までで5弱以上8回
気象庁の「震度データベース検索」によれば、「小名浜」で史上唯一の「震度6(烈震)」を観測したのが、2011年の「東北地方太平洋沖地震」でした。その後も、震度5強を2回、2013年以降は5弱を5回観測しています。
地震の発生日時 | 震央地名 | 深さ | M | 最大震度 | 「小名浜」 |
---|---|---|---|---|---|
2011/03/11 14:46:18.1 | 三陸沖 | 24 km | 9.0 | 震度7 | 震度6弱 |
2011/04/11 17:16:12.0 | 福島県浜通り | 6 km | 7.0 | 震度6弱 | 震度5強 |
2011/04/12 14:07:42.2 | 福島県中通り | 15 km | 6.4 | 震度6弱 | 震度5強 |
2013/09/20 02:25:08.3 | 福島県浜通り | 17 km | 5.9 | 震度5強 | 震度5弱 |
2016/11/22 05:59:46.8 | 福島県沖 | 25 km | 7.4 | 震度5弱 | 震度5弱 |
2021/02/13 23:07:50.5 | 福島県沖 | 55 km | 7.3 | 震度6強 | 震度5弱 |
2022/03/16 23:36:32.6 | 福島県沖 | 57 km | 7.4 | 震度6強 | 震度5弱 |
2022/05/22 12:24:11.3 | 茨城県沖 | 5 km | 6.0 | 震度5弱 | 震度5弱 |
・地震の発生日時 : 1989/01/01 00:00 ~ 2022/06/30 23:59
・観測された震度 : いわき市小名浜 で 震度5弱以上 を観測
以下、観測点一覧表でも示した「いわき市」内の2地点(小名浜、三和町)を比較していきます。
発生日 | 震央 | 小名浜 | 3成分合成 | 三和町 | 3成分合成 |
---|---|---|---|---|---|
11/03/11 | 三陸沖 | 6弱(5.5) | 266.2gal | 6弱(5.7) | 615.9gal |
11/04/11 | 浜通り | 5強(5.3) | 196.0gal | 5強(5.0) | 297.5gal |
11/04/12 | 中通り | 5強(5.3) | 189.5gal | 6弱(5.6) | 459.0gal |
13/09/20 | 浜通り | 5弱(4.5) | -.-gal | 5強(5.1) | -.-gal |
16/11/22 | 福島沖 | 5弱(4.8) | 140.5gal | - | -.-gal |
21/02/13 | 福島沖 | 5弱(4.5) | 159.0gal | 5強(5.1) | 314.8gal |
22/03/16 | 福島沖 | 5弱(4.6) | 130.1gal | 5強(5.1) | 321.8gal |
22/05/22 | 茨城沖 | 5弱(-.-) | 4 (-.-) |
小名浜で「5弱以上」となった8例のうち、「三和町」で観測データのある7例を比較すると、2022年5月の事例を除く全てで「三和町」の方が加速度(3成分合成)が大きな値となっています。20110412・2013・2021・2022年の地震では、震度階級が1階級分も異なっています。
2011年にMj7.0と内陸地震では非常に大規模だった「福島県浜通り地震」以降、約1年きわめて活発な地震活動が認められ、頻繁にテレビのテロップなどで「福島県浜通りで震度●を観測」などと見かけたかと思いますが、その殆どがこの「いわき市三和町」の観測点です。
設置環境等に問題がないことが気象庁によって確認されていますが、大正・昭和時代においても、もし仮に「三和町」に観測点があれば、震度5以上の強烈な揺れをもっと頻繁に観測していた可能性もあるかも知れません。
「いわき市」は、1966年当時で全国で最大の面積を誇るほどの広さ(現在は全国15位とのこと)ですから、一口に「いわき市」と言っても地域によって震度は大きく異なります。そのことを前提として、皆さんも地震情報に接する際はご注意頂ければと思います。
ちなみに直近例としては、2021・2022年と2年連続で「福島県沖」を震源とする地震が起きた際の、震度5弱があります。過去のデータと同列に扱うことは適切ではないかも知れませんが、震度5以上の地震が暫く起きなかった時期もあったことを思うと、引き続き活発な地震活動が起こっていることを再認識して頂きたいところです。どうぞお気をつけて。
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