【はじめに】
この記事では、気象官署「尾鷲測候所(尾鷲市南陽町)」で観測された過去の強烈な揺れをまとめていきます。なお現在は「尾鷲特別地域気象観測所」ですが、以下、両者を区別せずに解説していきます。
震度1以上(有感地震)は10年平均で50回程度
気象庁の「気象庁震度観測点一覧表」によると、震度の観測開始時期は「不明」となっています。ただ同じく気象庁の「震度データベース検索」によれば、1920年代まで一部遡れそうなので、(1920年代は断片的なデータかも知れませんが)有感地震の回数を表にしてみましたので、ご覧ください。
期間 | 震度1 | 震度2 | 震度3 | 震度4 | 5弱 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1920年代 | 2 | 4 | 5 | 1 | 12 | |
1930年代 | 7 | 8 | 9 | 2 | 26 | |
1940年代 | 227 | 66 | 11 | 1 | 2 | 307 |
1950年代 | 76 | 26 | 2 | 2 | 106 | |
1960年代 | 52 | 10 | 5 | 0 | 67 | |
1970年代 | 37 | 7 | 2 | 46 | ||
1980年代 | 44 | 9 | 6 | 59 | ||
1990年代 | 35 | 11 | 4 | 1 | 51 | |
2000年代 | 28 | 5 | 1 | 2 | 36 | |
2010年代 | 30 | 8 | 3 | 41 | ||
合計 | 538 | 154 | 48 | 9 | 2 | 751 |
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 2019/12/31 23:59
・観測された震度 : 尾鷲市南陽町(旧) もしくは 尾鷲市南陽町 で 震度1以上 を観測
・地震回数の集計 : 年代別回数
1960年代以降は、10年間でおおよそ50回前後で推移しています。もちろん年によって増減はありますが、おおよそ年に数回、数ヶ月に1回程度しか有感地震がないという計算になります。
地震回数が特に多い1940年代からしばらくは、後述するとおり「昭和東南海・南海地震」の余震活動等によるところが大きいと思われますし、体感による観測の時代で観測網も粗かったことで「詳細不明」の地震が多かったことも影響していると思われます。ちなみに、M不明の地震を除くと、
期間 | 震度1 | 震度2 | 震度3 | 震度4 | 5弱 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1920年代 | 2 | 2 | 4 | 1 | 9 | |
1930年代 | 3 | 4 | 7 | 1 | 15 | |
1940年代 | 109 | 53 | 10 | 1 | 2 | 175 |
1950年代 | 46 | 24 | 2 | 2 | 74 | |
1960年代 | 41 | 9 | 5 | 55 | ||
1970年代 | 32 | 6 | 2 | 40 | ||
1980年代 | 37 | 9 | 6 | 52 |
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 1989/12/31 23:59
・地震の規模:M 0.1以上
・観測された震度 : 尾鷲市南陽町(旧) もしくは 尾鷲市南陽町 で 震度1以上 を観測
・地震回数の集計 : 年代別回数
1940年代は約半減の175回であり、1950年代もその後と近い74回にまで有感地震が減少することも、一応データとしてお示ししておこうと思います。
震度3(弱震):ここ十数年で5回のみ
後述しますが、ここ最近は震度4以上の揺れが殆どありません。直近例が2004年の「紀伊半島南東沖地震」であり、それから十数年の間に、震度3(弱震)が4回あっただけです。リストアップしました。
地震の発生日時 | 震央地名 | 深さ | M | 最大震度 | 「尾鷲」 |
---|---|---|---|---|---|
2004/09/05 23:57:16.8 | 三重県南東沖 | 44 km | 7.4 | 震度5弱 | 震度4 |
2011/07/24 23:32:12.4 | 三重県南部 | 42 km | 4.8 | 震度4 | 震度3 |
2016/11/19 11:48:01.4 | 和歌山県南部 | 51 km | 5.4 | 震度4 | 震度3 |
2018/06/18 07:58:34.1 | 大阪府北部 | 13 km | 6.1 | 震度6弱 | 震度3 |
2021/12/03 09:28:28.9 | 紀伊水道 | 18 km | 5.4 | 震度5弱 | 震度3 |
・観測された震度 : 尾鷲市南陽町(旧) もしくは 尾鷲市南陽町 で 震度3以上 を観測
紀伊半島付近の地震が中心ですが、2018年の大阪府北部の地震では、1995年の兵庫県南部地震以来に(紀伊半島から離れた地点での地震で)震度3を観測しました。
震度4(中震)以上:昭和・平成時代で11回
震度4以上に狭めると、昭和・平成時代で11回となります。ただ、下の表をみても分かるとおり、平成10年代の3回を除くと、その他は全て昭和20年代以前であり、観測された時期がかなり偏っています。
地震の発生日時 | 震央地名 | 深さ | M | 最大震度 | 「尾鷲」 |
---|---|---|---|---|---|
1928/06/11 13:15:56.0 | 三重県南部 | 65 km | 4.0 | 震度4 | 震度4 |
1938/01/12 00:11:59.6 | 和歌山県南方沖 | 47 km | 6.8 | 震度5 | 震度4 |
1944/12/07 13:35:40.0 | 三重県南東沖 | 40 km | 7.9 | 震度6 | 震度5 |
1946/12/21 04:19:04.1 | 和歌山県南方沖 | 24 km | 8.0 | 震度5 | 震度5 |
1948/06/15 20:44:43.8 | 紀伊水道 | 0 km | 6.7 | 震度4 | 震度4 |
1950/04/26 16:04:59.0 | 和歌山県南部 | 47 km | 6.5 | 震度4 | 震度4 |
1952/07/18 01:09:51.4 | 奈良県 | 61 km | 6.7 | 震度4 | 震度4 |
1999/08/21 05:33:11.3 | 和歌山県北部 | 66 km | 5.6 | 震度5弱 | 震度4 |
2000/10/31 01:42:52.9 | 三重県南部 | 39 km | 5.7 | 震度5弱 | 震度4 |
2004/09/05 23:57:16.8 | 三重県南東沖 | 44 km | 7.4 | 震度5弱 | 震度4 |
・地震の発生日時 : 1919/01/01 00:00 ~ 2022/06/18 23:59
・観測された震度 : 尾鷲市南陽町(旧) もしくは 尾鷲市南陽町 で 震度4以上 を観測
・検索結果地震数 : 11 地震 (「地震の発生日時の古い順」で検索)
1952年から1999年までの約半世紀、震度4以上が観測されなかったことになりますし、2004年からは先ほど見た通り、震度3までしか観測しておらず、その期間が20年近くに達しているのも特徴的です。
震度5(強震):東南海地震と南海地震の2例
上の表にもありますが、震度5(強震)は、直近でも1946年と戦後直後まで遡ります。その震度5を観測した地震2例というのが、言わずと知れた「昭和東南海地震」と「昭和南海地震」です。
1944/12/07「昭和東南海地震」では、震源(域)にかなり近かったものの、最大震度6(烈震)に達したのは気象官署では御前崎と津の2地点だけで、尾鷲では震度5でした。もちろん、震害もあったと思われますが、尾鷲では「津波」による被害が甚大だったと伝わります。
1946/12/21「昭和南海地震」では、岩盤の破壊の方向が逆であったにもかかわらず、今回も震度5(強震)を観測。津波に関しても、尾鷲の一つ南の賀田湾では最高潮位が3.59mに達したといいます。
尾鷲市が成立したのは1954年であり、当時は「北牟婁郡」や「南牟婁郡」に当たった訳ですが、津波による浸水被害を中心に大きな被害が再び出たことはあまり知られていないように感じます。
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