【はじめに】
この記事では、7月7日(七夕当日)に放送された「プレバト!!(俳句査定)」を『七夕回』と題し、過去の放送と披露された俳句を振り返っていきたいと思います。
2016年7月7日放送回
東京では、前日から10度ほど昼の気温が高まり、最高気温36.7度(猛暑日)を記録した2016年の七夕は、2ヶ月弱の長い梅雨のちょうど真ん中、曇るも雨の日は少ない中でした。
世界最速(日本よりも半月ほど)でアプリ「Pokémon GO」が全米などでリリースされたのがちょうどこの時期でした。時代はまだKis-my-ft2の横尾さんが特待生3級だったという頃です。
1位は渡辺えりさんの73点、最下位は元特待生
- 73点:亡き友よ星河渡れ我れジョバンニ/渡辺えり
- 55点:夏祭り風の匂いに恋しみる/佐藤アツヒロ
- 45点:夢いくつ七月七日祭孫五つ/三田佳子
- 42点:夢担ぎ派手な浴衣に負けぬ笹/秋山竜次
- 40点:七夕にあなたの想いもーいいかい/市川九團次
- 30点:短冊に聖夜のごとくねだる子ら/羽田圭介
兼題はまさに「七夕(笹)」で、半数は七夕という行事そのものを読み込んでいます。ただ七夕という行事は誰しも何かしらの経験を有してる反面、オリジナリティを出すのが難しいという壁があります。6組中4組が凡人で、40点台が3人いるところからも分かりますね。
この回でダントツ(73点)だったのが、プレバト!! における自由律女流俳人の急先鋒【渡辺えり】さんでした。『銀河鉄道の夜』を読み込んでいることは、多くの方にとって明らかでしょう。七夕の夜に、非常に力強い作品でした。
対して、最下位は2回で特待生に昇格した経験があった作家の【羽田圭介】さん。上の記事にも書きましたが、特待生剥奪から半年で、ついに「才能ナシ最下位」評価となってしまいます。
ベスト50入りも果たしたKis-my-ft2・横尾さんの優秀句
それに対し、特待生から名人に向けて着々と前進したのが、Kis-my-ft2の【横尾渉】さんでした。前述のとおり、当時はまだ特待生3級という地位でしたが、こちらの句を詠んで昇格を果たしています。
特待生3→2級:『許されて寺の笹切る星祭』/横尾渉
上の記事にも書きましたが、『許されて』で始まる上五の謎が、『星祭(≒七夕)』という下五の季語で種明かしされる「謎解き」の要素が極めてドラマチックでノスタルジックです。
この句は後(2020年6月)に、「プレバト!! 歴代俳句ベスト50」にランクインしています。特待生の頃の句であり、しかも比較的昔の句であるにも関わらず取り上げられたのは非常に印象的です。
☆プレバト!!歴代俳句ベスト50②【秋/冬】|Rxのnote
https://note.com/yequalrx/n/ne963847999a0
2022年7月7日放送回
短い梅雨が明け、観測史上最長の連続「猛暑日」が観測された2022年初夏の東京。初嵐が襲った後に再び真夏日となる中、「梅雨明け」後の七夕を楽しみつつ、6年ぶりの七夕当日放送となりました。
「水彩画」で2~3ランクアップが連発する特待生・名人一斉査定が行われた関係で、俳句査定でも、名人3名が選出され、「五色の短冊と七夕笹」という最もシンプルでオーソドックスな兼題写真が出題されました。
俳句を披露したのは、森口瑤子(名人初段)、中田喜子(名人6段)と、千原ジュニア(名人10段・☆1)の3名で、上述の平場(凡人)とは大きく異なり、自分の体験などを味方につけて「七夕」という季語に真っ向勝負を挑んでいました。
女流名人2人(森口、中田)は現状維持
最初に登場したのは名人初段の森口瑤子さん。破調でドキッとする強い句を作りましたが、査定は現状維持でした。披露した句とその添削例はこちらでした(↓)
『屑かごにある七夕竹の死骸』/森口瑤子 ↓ 『屑かごにある七夕かざり乾きをり』
原句では「屑かご」から「死骸」という大胆な比喩がインパクト十分な一方で、描写の説明力に課題があるというのが現状維持の主要因です。つまり、
- 『死骸』という比喩が大げさなため、句全体のスケール感に困惑する
- 『七夕竹』というから実物の「竹」のようなメートル単位のものと誤解する
- 『屑かご』が家庭の「ゴミ箱」なのか「粗大ごみ」用のものなのか読みが分かれる
こういった点で描写力に課題があるとしたのです。実際には子どもが持ってきた「七夕飾り」ぐらいのスケール(だからこその「屑かご」)なので、夏井先生はそこに合わせに行った添削を披露しました。
寧ろ、『屑かご』を言い換えて、粗大ごみとして『七夕竹の死骸』が捨てられているという句材にしたらまた違った面白さがあったかなとも感じました。
続いて、中田喜子名人6段も現状維持。披露した句がこちらでした。(↓)
『またござれ七夕さんの人の和よ』 /中田喜子 ↓ 『またござれ七夕さんのこの町へ』 『またござれ七夕さんのみちのくへ』
『仙台七夕まつり』などを呼んだ句ですが、確かに原句では下五の「人の和」という着地には私も違和感を覚えました。映像喚起力という観点では添削後の句、特に個人的には『仙台七夕まつり』だと明確に分かる『みちのくへ』という添削句が大好きです。
千原名人は2連続で「☆」を獲得!
名人昇格以降で快進撃が続いている千原ジュニアさん。前回に続き、名人10段として前進し、☆2つに進みましたが、その句がこちらでした(↓)
☆1→2『病室の七夕竹に一礼す』/千原ジュニア
夏井先生が結果発表前の一言で「上五『病室の』の是非」とポイントを触れておられましたが、確かに「病棟」や「病院」などと比べて「病室」の方が、入院している個人にフォーカスしていることが明確になります。
ややもすると無機質で季節感を失いやすい病室にあって、こうした俳句歳時記にもあるような季節感の強いイベント事を催してくれる病院側の心遣いにも温かい気持ちになりますし、下五の「一礼」という動詞の主体が誰であるかや何故「一礼」をするのかといったドラマの想像を膨らませる点で、名人10段の査定でも前進になる奥行きがあったという評価でした。
「七夕」や「七夕竹/七夕飾り」というと、月並みな連想をしてしまいがちですが、各々の生活、環境にあって七夕を愛でる、短冊に思い思いの願いを込めるドラマが世の中には満ちています。きっと貴方の周りにも句材(俳句のタネ)があると思いますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
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